午後一時過ぎの快速急行。窓から差し込む陽光は暖かく、車内は適度に空いていて、独特のけだるい空気が漂っていた。  大学二年生の指(ゆび)は、いつも通り車両のドア横に立ち、スマートフォンの画面を眺めていた。これから向かえば二限目の講義にはちょうど間に合う。五十分という長い通学時間は、彼にとって「無」になるための時間だった。

 ふと、目の前に立つ女性に目が留まった。  四十代半ばくらいだろうか。小綺麗に整えられたボブカットに、控えめなパールのイヤリング。落ち着いたネイビーのブラウスからは、清潔感のある柔軟剤の香りが淡く漂ってくる。年相応の落ち着きがありながら、どこか艶っぽさを感じさせる、いわゆる「綺麗な人」だった。

 その時だった。

 キィィィィィィィィ……ッ!

 鼓膜を刺すような金属音が響き、激しい衝撃が体を襲った。 「おっと……!」  指は咄嗟に手すりを掴んで踏ん張ったが、慣性に抗いきれず体が大きく前へ投げ出される。目の前の女性もよろめき、彼の胸元に飛び込むような形になった。

『――急停車します、ご注意ください』

 無機質なアナウンスが流れ、電車が完全に沈黙する。  人身事故だという。運転再開の目処は立たない。密室となった車内に、奇妙な静寂が降りてきた。

「……あ、すみません」  指は慌てて距離を置こうとした。しかし、狭いスペースで密着した体はすぐには離れない。それどころか、彼女がバランスを立て直そうとカバンを握り直した瞬間、その**「手」**が、指の股間にすっぽりと収まるような形で押し当てられた。

(えっ……)

 指の思考がフリーズした。  キャンバス地のカバンの感触。その向こう側にある、女性の手の甲の確かな硬さと、指先の柔らかい弾力。  彼女は片手でつり革を掴んでいるが、もう片方のカバンを持つ手は、なぜかそこから動こうとしない。むしろ、揺れる車体に合わせて、わずかに、本当にわずかに、押し付けられる力が強まった気がした。

 ジーンズ越しに伝わってくる、見知らぬ大人の女性の体温。  指の股間は、自分でも制御できない速度で、熱を帯び始めていた。

指(ゆび)の鼓動は、もはや制御不能だった。  ドクンドクンと波打つ自身の熱が、ズボンの生地を押し上げ、彼女の手に直接ぶつかっている。

(どうしよう……。離れなきゃ、でも、もしこれがわざとじゃなかったら?)

 彼は恐怖と期待が入り混じったパニックの中で、おそるおそる視線を落とした。  そこには、彼女の細い指先があった。カバンの持ち手を握っているはずのその指が、ふわりと解かれ、まるで探るように、彼の膨らみの輪郭をなぞり始めたのだ。

「……っ」

 指は声にならない悲鳴を飲み込んだ。  彼女は顔を上げたまま、平然と窓の外の景色――止まったままの退屈な風景――を眺めている。しかし、その手だけは雄弁だった。    彼女は大きなカバンを二人の間に挟み込み、周囲からの死角を完璧に作り出した。その「盾」の向こう側で、彼女の手のひらが、今度は確信犯的に、ぐいっと熱を押し潰すように包み込む。

「あ……」

 指の口から、情けないほどか細い吐息が漏れた。  その瞬間、彼女の唇がわずかに弧を描いた。窓ガラスに映る彼女の瞳が、じっと指を射抜く。  彼女は一歩、さらに踏み込んだ。ヒールの音が小さく響き、二人の爪先が触れ合う。    彼女は自由な方の手を伸ばすと、指のシャツの裾を軽く引っ張り、耳元に顔を寄せた。

「……随分、正直なのね。大学生さん?」

 四十歳の大人の女性が放つ、熟した果実のような甘い声。  その囁きと同時に、カバンの陰に隠れた彼女の指が、ジーンズのジッパーの金具にカチリと触れた。

「電車、なかなか動きそうにないわよ。……どうしたい?」

 指はもう、自分の名前すら思い出せないほどに、その指先がもたらす未知の快感に支配されようとしていた。 

……っ、ぁ……っ」

 指は全身の血が顔に集まったのではないかと思うほど、激しく上気した。  耳たぶまで真っ赤になり、額にはじわりと汗が浮かぶ。二十年間、一度も経験したことのない「異性の体温」という暴力的な刺激に、彼の理性は木っ端微塵に砕け散っていた。

 何か言わなければ。やめてくださいと言うべきか、それとも謝るべきか。  しかし、喉がカラカラに張り付いて、情けない喘ぎ声以外は何も出てこない。

「……ふふ。顔、真っ赤」

 至近距離から注がれる、面白がるような視線。  彼女は、指がどれほど動揺しているかを完全に楽しんでいた。カバンの陰で動く彼女の指先が、ジッパーの金具をゆっくりと、弄ぶように上下に揺らす。

(やばい……これ、誰かに見られたら……。いや、それよりも……っ!)

 指は必死に周囲を確認しようとした。だが、彼女の体から漂う甘い香水の匂いと、股間を刺激し続ける指先のせいで、視界がぐにゃりと歪む。  恥ずかしくて死にそうなのに、彼女の手から逃げる勇気も出ない。むしろ、その柔らかな感触をもっと欲している自分に気づき、さらに自己嫌悪と羞恥が加速する。

「そんなに震えて……。もしかして、こういうの初めて?」

 彼女の指が、布越しに先端をキュッと摘まんだ。   「ひ、あっ……!」

 指は思わず声を上げそうになり、自分の手で口を覆った。  涙目で彼女を見つめると、彼女はいたずらっぽく小首をかしげ、さらに大胆に、今度は手のひら全体で熱を包み込み、ゆっくりと圧をかけてきた。

「大丈夫よ。誰にも見えてないから。……ねえ、もっと楽にして?」

 その言葉は、絶望的なほど優しく、二十歳の童貞にとって抗いようのない「毒」だった。

「や、めて……誰か、に……」

 指は蚊の鳴くような声で、必死に抵抗を試みた。しかし、その言葉とは裏腹に、腰は彼女の手のひらに吸い寄せられるように、わずかに前へと突き出されてしまう。

「誰かに、何? 見られちゃうって?」

 彼女はクスクスと喉を鳴らして笑った。その笑い声に合わせて、彼女の胸元が指の腕に柔らかく押し当てられる。  彼女は空いた方の手で、指が口元を覆っていた手を、優しく、けれど拒絶を許さない力強さで引き剥がした。

「そんなに強く口を閉じちゃダメ。……可愛い声、もっと聞かせて?」

 そう囁きながら、彼女の指先がジーンズのボタンに掛かった。  パチン、と小さな金属音が、静まり返った車内に場違いなほど大きく響く。指の背中に、冷たい戦慄と、それを上回る熱い衝撃が駆け抜けた。

「あ、ぁ……っ! だ、だめ……っ」

 ボタンが外され、ジッパーがゆっくりと、一段階ずつ慎重に下ろされていく。  布の障壁が消え、下着越しに伝わる彼女の指の「生々しい熱」が、指の脳を直接かき乱した。  目の前には、他の乗客たちが平然と座っている。すぐ隣のドア付近には、スマートフォンの画面を無表情に眺めているサラリーマンもいる。

 そのすぐ数センチ横で、自分は今、正体も知らない年上の女性に、ズボンを割られている。

(恥ずかしい……死にたい……。でも、気持ちいい……っ)

 矛盾する感情に引き裂かれ、指の目尻にじわりと涙が浮かんだ。  彼女はそれを見逃さず、今度は下着のゴムの隙間に、冷えた指先を滑り込ませた。

「……あら。ここ、もうこんなに熱くなってるわよ?」

 彼女の手が、ついに「直接」彼に触れた。  指はビクンと大きく体を跳ね上げ、耐えきれずに彼女の肩に額を預けてしまった。

「ひぅ、あ……っ! んんっ……!」

 彼女の肩越しに、窓の外に見える日常の風景が流れていく。  自分だけが、この満員一歩手前の密室で、真っ白な快楽の渦に突き落とされていた。

フラフラと足をもつれさせながら、指(ゆび)はようやく大学の最寄り駅のホームに降り立った。  股間のあたりには、先ほどの「恵子」という女性の感触と、わずかな湿り気が残っている。頭はまだ真っ白で、夢を見ているような心地だった。

(早く、トイレに行かないと……。それに、今のことを整理しなきゃ……)

 人混みに紛れて改札へ向かおうとした、その時だった。

「……随分と、楽しそうだったわね。大学生さん」

 背後からかけられた低く、冷ややかな声。  指の心臓が、今日何度目か分からない跳ね方をした。振り返ると、そこには先ほどの恵子とは対照的な、派手なボルドーのスーツに身を包んだ、キリッとした顔立ちの女性が立っていた。年齢は同じく四十前後だろうか。

「え……あ、あの……」 「とぼけても無駄よ。私、あんたたちの真後ろに座ってたんだから。カバンの下で、あのおばさんに何されてたか……全部、この目で見てたわ」

 彼女は冷徹な笑みを浮かべ、指の視線を射抜く。  指は全身の血の気が引くのを感じた。

「警察に言ってもいいのよ? 公然わいせつ……それとも、大学に通報された方が困るかしら。あんな情けない顔してイッてたなんて知られたら、もうここには通えないわよね」

「……っ、そんな……やめてください」 「だったら、私の言うことを聞きなさい。……来なさい」

 有無を言わさない力強さで、彼女は指の腕を掴んだ。  二十歳の男が、四十歳の女性の力に抗えないはずがない。しかし、弱みを握られ、先ほどの絶頂の余韻で意志が希薄になっている指は、操り人形のように彼女に引きずられていく。

 駅前にある、古びた、けれど人目に付きにくい路地裏のビジネスホテル。  フロントで無造作に鍵を受け取る彼女の横顔を、指は絶望に打ちひしがれながら見つめるしかなかった。

 エレベーターの扉が閉まった瞬間、彼女は指を壁に押し付けた。

「……あのおばさんは優しかったみたいだけど、私はあんなに甘くないわよ?」

 チーン、という非情な音と共に、最上階のフロアに到着した。  逃げ道は、もうどこにもなかった。

ホテルの部屋に入るなり、女は指(ゆび)をベッドへ突き飛ばした。  さっきまでの余韻に浸る余裕など、微塵も残っていない。女の瞳には、獲物を徹底的に蹂躙しようとする冷酷な愉悦が宿っていた。

「さあ、全部脱ぎなさい。……一秒遅れるごとに、大学への通報ダイヤルを一桁ずつ押してあげるわ」

 指は震える手で、屈辱にまみれながら服を脱ぎ捨てた。全裸で立ち尽くす彼の体には、先ほどの恵子との情事の跡が、乾いた汚れとなってこびりついている。

「……ふん、汚らしい。あんな女に可愛がられて、悦んでたのね。ねえ、本当はもっと、ぐちゃぐちゃにされたかったんでしょ?」

 女はそう言うと、持っていた大きなカバンから、およそ日常では目にすることのない凶器を取り出した。  黒い革製のベルト――ペニスバンドだ。

「な、……それは……っ!」 「動かないで。逃げたら、あんたの人生、今ここで終わりよ?」

 女は手慣れた手つきでベルトを自分の腰に装着し、太く猛々しい「偽物」を突き出した。指は恐怖で歯の根が合わない。女性に犯されるという、概念すら知らなかった事態に脳が焼き切られそうになる。

「まずは、ここを解してあげないとね……」

 女は指をうつ伏せに押さえつけると、潤滑剤の冷たい感触とともに、躊躇なく彼のアナルに指を突き立てた。

「ひ、あぁぁぁっ! や、だ、そこは……っ!」 「いい声。電車の中では必死に殺してたみたいだけど、ここでは存分に鳴いていいのよ?」

 未開の地を抉るような指の動きに、指は情けなく腰を震わせる。童貞の彼にとって、それは快感というよりは、自身の尊厳が内側から壊されていくような、暴力的な刺激だった。    指が二本、三本と増え、強引に中を広げられていく。屈辱で涙が溢れ、枕を濡らした。

「準備ができたみたいね。……さあ、本番よ」

 女は指の腰を掴んで強引に突き出した。  そして、先ほど装着したばかりの硬い突起を、抵抗する彼の秘部へと、一気に、容赦なく捻じ込んだ。

「ぎ、あああああぁぁぁっ……!!」

 内側を裂くような、圧倒的な異物感。  女は容赦なく腰を振り、指の体をベッドの上で跳ねさせる。   「あはは! 凄いわ、大学生さんのここ、こんなに締め付けてくる! 電車のおばさんには、こんなことしてもらえなかったわよねぇ!」

 女の嘲笑と、肉がぶつかり合う卑俗な音が部屋に響き渡る。  指は、自分が男であることも、二十歳の大学生であることも忘れ、ただ背後から執拗に突き上げてくる女の暴力的な快楽に、翻弄されるしかなかった。

「あ、が……っ、ん、あぁぁっ……!」

 激しい往復運動の中で、指のペニスは、本人の意志とは無関係に、絶望的なまでに昂り、狂ったように熱い飛沫を何度も何度も撒き散らしていた。

「あ、あぁ……っ! もう、出ない……何も、出ないです……っ!」

指(ゆび)は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、震える声で命乞いをした。 すでに何度も激しく射精し、彼の「竿」はヒリヒリと痛むほどに使い果たされている。しかし、背後の女に慈悲などなかった。

「出ない? 嘘おっしゃい。あんたの身体は、まだこんなに熱くて、ビクビク欲しがってるじゃない」

女はペニスバンドの硬い衝撃で指の奥を執拗に突き上げながら、同時に、空いた手で指の限界を迎えた竿を、容赦なく根元からしごきあげた。

「ひ、ぎぃっ……ぁぁぁあ!!」

激痛に近い刺激。だが、アナルを貫かれ、前を執拗に責め立てられる二重の責め苦に、指の脳はついに「快感」と「苦痛」の境界線を失った。 二十歳の今日まで、大切に守ってきたはずの童貞。 女性の「中」を知るという、夢に見た筆おろしさえ許されず、彼はただ、大人の女の玩具として、裏側から蹂鳴され続けている。

「……ほら、くるわよ。あんたの知らない、男の本当の姿が」

女がさらに腰のピッチを上げ、指の奥の「一番敏感な場所」をペニスバンドの先端でゴリリと抉った。

「あ、が……あ、あああぁぁぁぁっ!!!」

その瞬間、指の全身が弓なりに反り返った。 精液はもう残っていないはずだった。しかし、彼の先端からは、精液とは明らかに違う、さらさらとした透明な液体が、噴水のように勢いよく噴き出したのだ。

「あ、あああああぁぁぁ……っ!!」

止まらない。自分の意思とは無関係に、身体の奥底に溜まっていた水分が、痙攣と共に何度も空を舞う。「男の潮吹き」――。 未経験の大学生には到底耐えきれないほどの、脳が焼けるような過剰な快楽の濁流に、指は白目を剥いてガクガクと激しく震え続けた。


「あはは! 凄い、床までびしょびしょじゃない! いいわよ大学生さん、最高に無様で、最高にエロいわ」

女の勝ち誇った笑い声が遠くで響く。 指は、自分が何者なのかも分からなくなるほどの絶頂の果てに、ただただ、熱い液体を撒き散らしながら、深い意識の闇へと沈んでいった。

意識の混濁した闇の底から、指(ゆび)はようやく這い出した。 頭が割れるように重い。全身の筋肉が悲鳴を上げ、特に後ろの違和感は、先ほどまで行われていた惨劇が現実であったことを無慈悲に突きつけていた。

(僕は……どうなったんだ……)

おそるおそる目を開けると、ホテルの薄暗い照明の中に、誰かのシルエットが見えた。 あのボルドーのスーツの女かと思い、恐怖に体を強張らせる。しかし、視界がはっきりしてくるにつれ、鼻腔をくすぐったのは、あの清潔感のある、淡い柔軟剤の香りだった。

「……気がついた? 指くん」

枕元に立っていたのは、恵子だった。 昼下がりの電車内で、指を優しく、かつ妖艶に弄んだ、あの四十歳の女性。

「け、恵子……さん……? どうして……」

指は震える声で問いかけた。隣には、先ほどまで彼を蹂躙していたボルドーの女が、タバコをくゆらせながらソファに深々と腰掛けている。

「ごめんなさいね。私の『友達』が、少しやりすぎちゃったみたいで」

恵子は困ったような、それでいて艶やかな笑みを浮かべ、ベッドの端に腰を下ろした。彼女の冷たい指先が、指の汗ばんだ額を優しくなでる。その手つきは、先ほどの暴力的な支配とは正反対の、母親のような慈愛に満ちていた。

「この子、私があんたを可愛がってるのを見て、我慢できなくなっちゃったのよ。ねえ、理恵(りえ)?」

ソファの女――理恵が、フンと鼻を鳴らした。 「だって、恵子がいつまでもネチネチ焦らすから。私が仕上げをしてあげたのよ。感謝してほしいくらいだわ」

指は戦慄した。この二人は、最初から繋がっていたのだ。 電車の中での接触も、その後の「目撃」と「脅迫」も。すべては、未通の大学生である自分を、二人で美味しくいただくための筋書きだった。

「……っ、そんな……ひどい……」

「あら、ひどいかしら? 気持ちよかったのは、本当のことでしょ?」

恵子の顔が、指の耳元に近づく。 彼女の手が、シーツの下で指の太ももをそっと這い、理恵に乱されたばかりの「そこ」に触れた。

「次は、二人で可愛がってあげる。……指くん、もう逃げられないわよ。私たちが、あんたの本当の『大人』を教えてあげるから」

恵子が指の唇に指を当て、理恵がベッドに歩み寄ってくる。 二人の熟した大人の女性に挟まれ、指は再び、逃げ場のない快楽の泥沼へと引きずり込まれていった。

「あら……あんなに絞られたのに、またこんなに元気になって。指くん、やっぱり才能あるわね」

 恵子は目を細め、感心したような、それでいて深い欲望を湛えた吐息を漏らした。  理恵が与えたのは、内側を蹂躙し、力ずくで屈服させる「暴力的な快感」だった。対して、今、恵子の指先が指の肌に描くのは、神経の一本一本を丁寧に震わせるような「慈しみの快感」だ。

「っ、はぁ……っ、ぁ、……もう、出ない、はず、なのに……」

 指は力なく首を振り、シーツを固く握りしめた。  理恵に犯され、すべてを出し切り、心身ともに空っぽになったはずの体。それなのに、恵子の柔らかな手のひらが、硬くなった熱を優しく包み込み、指先で先端を小さく円を描くように撫でると、脊髄を突き抜けるような甘い痺れが走る。

 理恵が背後から指の耳を甘噛みし、冷たい指で彼の胸を弄る。 「私の時はあんなに苦しそうだったのに、恵子に触られた途端にこれ? ……本当に正直な子ね」

 理恵の意地悪な言葉が、指の羞恥心をさらに煽る。  二人の大人の女性に全身をくまなく愛撫され、指の頭は再び真っ白になった。恵子の手の中で、彼のそれは先ほどよりもさらに熱く、硬く、血管を浮き上がらせて脈打っている。

「いいのよ、指くん。恥ずかしがらないで。……今度は、私がもっと気持ちよくしてあげる。理恵が乱暴にしたところも、全部私が癒してあげるから」

 恵子はそう囁くと、指の熱を自分の唇へと導こうと、ゆっくりと顔を下げた。  上から見下ろす理恵の冷徹な視線と、下から迫る恵子の甘美な抱擁。

 指は、自分がもう一人の男としてではなく、二人の成熟した女性たちの「嗜好品」として作り替えられていくのを、抗いようのない快楽とともに受け入れていた。

「ん、ぁ……っ、恵子、さん……っ!」

 再び訪れる絶頂の予感に、指の腰が勝手に跳ねる。  止まった電車から始まったこの数時間は、彼にとって永遠に続く、甘く残酷な迷宮の入り口に過ぎなかった。

「……さあ、指くん。本当の『大人』の入り口を見せてあげる」

恵子の優しくも抗いがたい手が、指の腰を引き寄せた。 理恵は背後から彼の首筋に腕を回し、まるで逃げ道を塞ぐように抱きかかえている。二十歳の童貞という純潔な獲物を前に、二人の女性の欲望は最高潮に達していた。

「あ、ぁ……っ。恵子、さん……っ!」

恵子がゆっくりと腰を下ろし、指のすべてを受け入れ始めた。 理恵の蹂躙によって解されていたそこは、驚くほど滑らかに、そして絶望的なほど濃密に恵子の内側へと沈み込んでいく。

ジーンズ越しに感じたあの体温とは比較にならない、湿った、生き物のような熱。 指はあまりの快感に視線を彷徨わせ、助けを求めるように背後の理恵を見上げた。しかし、理恵は冷たく、それでいて濡れたような瞳で彼の耳元に囁く。

「しっかり見なさい。あんたが今、誰に、どうされているか……その目に焼き付けるのよ」

恵子の腰が、規則正しく、かつ容赦なく上下に揺れ始める。 一突きごとに、指の理性が削り取られていく。恵子の熟した肉体の弾力が、彼の未熟な熱を容赦なく絞り上げ、奥の奥まで絡みついてくる。

「っ、んんっ……! ぁ、あぁぁっ……!」

初めて知る、本物の女性の胎内。 それは、彼が妄想していたどんな世界よりも深く、重く、そして甘美な地獄だった。 理恵が指の胸を強く揉み上げ、絶頂を急かすように彼の動きを拘束する。恵子は指の顔を両手で包み込み、とろけそうな微笑みを浮かべながら、激しく腰を叩きつけた。

「いいわ……指くん、そのまま。全部、私の中にぶつけて……っ!」

「あ、が……あぁぁぁぁっ!!」

視界が真っ白に弾けた。 指の腰が激しく痙攣し、二十年間守り続けてきたすべてが、恵子の内側へと激しく、何度も、脈打つたびに注ぎ込まれていく。 理恵が彼の首筋に歯を立て、恵子が歓喜の声を上げて彼を強く抱きしめる。

静まり返ったホテルの部屋に、三人の荒い吐息だけが重なり合った。

指は、恵子の肩に顔を埋めたまま、涙を流していた。 それは悲しみではなく、あまりに巨大すぎる快楽に脳が屈服した証だった。 もう、あの電車に乗る前の、何も知らなかった「大学生の指」には二度と戻れない。

「おめでとう。……これで、あんたも私たちの『仲間入り』ね」

理恵が満足そうに彼の髪を撫で、恵子が愛おしそうに彼の頬にキスをした。



 あの日から、指(ゆび)の日常は音を立てて崩れ去っていました。大学の講義中も、食堂での話し声も、すべてが遠い世界の出来事のように感じられます。

 大学の広い階段教室。教授の単調な講義が耳を通り過ぎていく。  指はノートを取るふりをしながら、無意識に左のポケットを触っていた。そこには、あの日恵子から渡された紙切れと、理恵に無理やり登録させられた連絡先が入ったスマートフォンがある。

(僕は……なんてことをしてしまったんだ……)

 股間のあたりには、いまだにあのホテルの濃密な空気と、二人の女性の指先が残した感覚がこびりついている。  アナルに残った異物感への恐怖と、初めて女性を知った際のとろけるような絶頂。相反する記憶がフラッシュバックするたび、指の顔は羞恥で赤く染まり、同時に下半身がじわりと熱を帯びる。

 ふと、教室の入り口に目をやった。  四十代くらいの、スーツを着た女性が歩いているだけで、心臓が口から飛び出しそうになる。  理恵が言った「大学に通報する」という言葉が、呪いのように彼を縛り付けていた。

『指くん、今日の五時。いつもの駅の、三両目のドアの前。遅れたら……わかってるわね?』

 昼休みに届いた理恵からの短いメッセージが、スマートフォンの画面で冷たく光っている。  それは紛れもない脅迫だった。行かなければ、自分の人生は終わる。  しかし、指は気づいていた。恐怖で震えながらも、心のどこかで、あの二人に再び組み敷かれ、蹂躙される時間を「待ち焦がれている」自分に。

「指、今日この後どうする? 飲みに行かないか?」  隣の席の友人が気安く声をかけてくる。 「……あ、ごめん。今日は、ちょっと用事があって」

 乾いた声で嘘をつく。  自分はもう、この友人たちのような「普通の大学生」ではない。  五時になれば、あの冷徹な理恵に引きずり回され、優しい恵子に甘く溶かされる。    指は大きく息を吐き、重い足取りで教室を出た。  向かう先は、あの止まった電車から始まった、背徳の駅。  五分前の駅のホームに立ち、三両目のドアが開くのを待つ間、指の心臓は今日一番の激しさで、期待と絶望のビートを刻んでいた。

約束の五時。三両目のドアが開くと、そこには理恵が一人で立っていた。  彼女は怯える指を一瞥すると、冷たい笑みを浮かべて彼の腕を取り、無言で別の駅へと連れ出した。

 連れて行かれたのは、前回のホテルとは違う、場外馬券場の裏手にあるような、湿った空気の漂う古いビルの一室だった。

「……理恵さん、恵子さんは?」 「恵子は今日、別の用事よ。……それより指くん、今日は特別な『お客様』を呼んであるの」

 理恵が扉を開けると、そこには安物のタバコの匂いを漂わせた、ガッシリとした体格の五十過ぎの中年男が座っていた。汚れた作業着に、脂ぎった顔。指が最も苦手とする、粗野な大人の男の圧がそこにあった。

「……こいつか? 恵子が言ってた、いい身体してる大学生っていうのは」

 男の濁った視線が、指の全身をなめ回すように動く。

「な、……何を……」 「あんた、女二人に可愛がられて随分いい気になってたみたいだけど。……男に犯される恐怖、まだ教えてなかったわよね?」

 理恵の言葉に、指の背筋に氷を突きつけられたような戦慄が走った。 「やめてください! そんなの、無理です……っ!」

「無理じゃないわよ。あんたには拒否権なんてないの」  理恵が指を男の前に突き飛ばす。男は太い腕で指の髪を掴み、強引に床に跪かせた。

「ひっ、……あ、が……っ!」 「いいか、坊主。恵子さんや理恵さんに恥をかかせるような真似はするなよ。……さあ、まずは俺の機嫌を取れ」

 男はズボンのベルトを荒々しく外すと、特有の獣のような臭いを放つ自身のモノを指の目の前に突き出した。理恵はその様子を、スマホのカメラを構えながら冷酷に眺めている。

「……ほら、早くしなさい。それとも、この動画を大学の掲示板に流してほしい?」

 指は涙を流しながら、震える唇を男の汚れた欲望へと近づけていった。  女たちの「玩具」から、今や見知らぬ男の「排泄口」へと。  二十歳の大学生・指のプライドは、この汚濁に満ちた部屋で、完全に粉々に打ち砕かれようとしていた。

「……っ、う、あぁ……っ!!」

 男の荒々しい往復運動が、指の体を容赦なく揺さぶる。女性たちの愛撫とは全く違う、ただ欲望を叩きつけられるだけの暴力的な重み。男の脂ぎった汗が指の背中に滴り、安タバコの臭いが混じった吐息が首元に吹きかかる。

「あはは! 見てよ指くん、あんたの顔。最高に惨めね!」

 理恵がスマートフォンのレンズを至近距離まで近づけ、フラッシュを浴びせる。カシャカシャという無機質なシャッター音が、指の絶望を一枚ずつ記録していく。

「もっと大きな声で鳴きなさいよ。この動画、明日には大学のグループチャットに流れるかもしれないんだから」

「や、めて……っ、あ、あぁぁぁっ!」

 その時、部屋の扉が静かに開いた。  指は縋るような思いで視線を向けた。そこにいたのは、あの優しい香りを纏った恵子だった。

「……っ、が、あぁぁぁっ……!!」

 指(ゆび)の悲鳴が、古いビルの薄い壁を震わせた。  男の硬く節くれ立った指が、潤滑剤もなしに指のアヌスを無理やり抉り広げる。先日 理恵にペニスバンドで犯された時とは比較にならない、生々しい肉体的な痛みが、脳天を突き抜けた。

「ほうら、大学生。女に遊ばれてた時とはワケが違うだろ?」

 男は下卑た笑い声を上げながら、指の細い腰をガシッと掴んで固定した。  指は床に這いつくばり、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、救いを求めて恵子を見上げた。ちょうどその時、恵子が優雅な足取りで入室してきたのだ。

「恵子、さん……っ、助け……あ、ぁぁぁっ!」

 助けを求める言葉は、凄まじい衝撃にかき消された。  男が指の広げられた秘部へ、自身の猛々しい本物を一気に、根元まで叩き込んだのだ。

「ひ、ぎぃぃぃぃっ……!!」

 内側を熱鉄で焼き切られるような激痛。アヌスが物理的に裂けるのではないかという恐怖に、指は白目を剥いてのけぞった。しかし、恵子は駆け寄るどころか、その光景をうっとりと眺め、指の目の前に膝をついた。

「可哀想に、指くん。……でも、凄いわ。こんなに太いものまで、ちゃんと飲み込んで……」

 恵子はそう囁きながら、指の髪を掴んで無理やり顔を上げさせた。  背後では男が「ぐ、うぅっ!」と唸り声を上げ、無慈悲に腰を突き上げている。そのたびに、指の体はベッドの上で無様に跳ね、アヌスの奥深くを容赦なく蹂躙された。

「恵子が言った通り、いい締まりだぜ、この坊主!」

 男が指の尻をピシャリと叩き、さらに速度を上げる。理恵は至近距離でその結合部をスマートフォンで動画撮影し、フラッシュの光が、指の汚された場所を鮮明に照らし出した。

「ほら、指くん。恵子さんの顔を見て、ちゃんと喜びなさい?」

 恵子は自身の指を指の口にねじ込み、彼が悲鳴を上げるのさえ許さない。  男の荒々しいピストン運動が続く中、指は信頼していた恵子の手によって、最も辱められたい場所を徹底的に暴かれ、男の欲望をすべてその身に受け入れさせられていた。

「あ、ん、ぐ……ぅ、うぅぅ……っ!!」

 アヌスの奥を突かれるたびに、指の意志は砕け、混濁していく。  救い主だと思っていた恵子が、男の腰の動きに合わせて指の体を押し戻し、より深く犯されるように手助けをしているという事実に、彼は絶望のどん底で、初めての「男による絶頂」へと強制的に連れて行かれようとしていた。

「あ、が……っ、あああああぁぁぁ……っ!!」

 アヌスの最奥、もっとも敏感な一点を、男の硬い先端が猛烈な勢いで抉り続ける。  指はもはや、自分が男であるかどうかも、ここがどこであるかも分からなくなっていた。視界は涙で歪み、ただ恵子の冷たくも美しい微笑みだけが、地獄の中で光る唯一の道標のように見えていた。

「いいわ、指くん。もうすぐよ……。全部壊して、私たちの色に染まりなさい」

 恵子は指の髪を掴み、強制的に自分の顔を見つめさせながら、片手で彼の昂りを乱暴に扱き上げた。背後の男は獣のような唸り声を上げ、最後の力を振り絞るように、指の腰を砕かんばかりに叩きつける。

「出すぞ……! 坊主、全部飲み込めッ!!」

 その瞬間、指の体内、アヌスの奥深くに、焼け付くような男の熱い精髄が、ドクドクと、何度も波打って注ぎ込まれた。

「ひ、ぎぃぃぃっ、あ、あぁぁぁぁぁ……っ!!!」

 内側から異物で満たされる耐え難い屈辱。同時に、恵子の手のひらが極限まで膨れ上がった指の先端を強く握りつぶす。    極限の苦痛と、脳を焼き切るような強制的な快楽。  指の口から、人間とは思えないような、か細く、高く、そして狂ったような喘ぎ声が漏れた。彼のモノからは、力なく、けれど絶え間なく、最後の一滴まで精液が噴き出し、床と恵子の手を白く汚していく。

 理恵のスマートフォンが、そのすべてを至近距離で、鮮明に捉えていた。 「……撮れたわ。最高に無様な、大学生の終わりの瞬間」

 男が体を離すと、指は糸の切れた人形のように床に崩れ落ちた。  アヌスからは男の残滓がドロリと溢れ出し、二十歳の彼の尊厳は、その汚濁とともに完全に流れ去った。

 指の瞳からは、光が消えていた。  ただ、ぼんやりと開いた口から、よだれが垂れるのも構わず、空虚な天井を見つめている。

「……あ、あは……。あはは……っ」

 壊れたおもちゃのように、指の口から乾いた笑いが漏れる。  恵子はその様子を見て、満足そうに彼の頬を撫でた。

「そうよ、指くん。それでいいの。もう、難しいことは何も考えなくていいわ」

 恵子は理恵からスマートフォンを受け取り、そこに映る、男に犯され、白目を剥いて絶頂する指の動画を彼に見せつけた。

「これは、あなたの新しい『教科書』。明日からも、たっぷり復習しましょうね?」

 指はその動画を、まるで愛しい恋人を見るような、うつろで熱い眼差しで見つめ返した。  彼の心は、この日、この薄暗い一室で、完全に死に絶えた。  残されたのは、二人の熟女の欲望に従順に応えるだけの、美しく、空っぽな「肉人形」としての彼だけだった。

「……ふふ、指くん。まだ終わったなんて思ってないわよね?」

恵子が、床に力なく横たわる指の顔をヒールで軽く小突いた。指のうつろな瞳には、アヌスから溢れる男の残滓と、涙で汚れた自分の無様な姿が映っているはずだったが、彼はもう、その屈辱に反応する気力すら残っていなかった。

理恵が壁際の重いカーテンを開くと、そこには隠し扉のような別の入り口があった。

「さあ、お入りなさい。皆、待ちくたびれているわよ」

理恵の合図と共に、部屋の中にドカドカと土足の音が響き渡る。 入ってきたのは、先ほどの男と同じような、脂ぎった中年男たちがさらに三人。工事現場帰りなのか、酒臭い息を吐きながら、獲物を見つけた獣のような目で指を取り囲んだ。

「ひ……あ……」

指の喉から、掠れた悲鳴が漏れる。 男たちは、恵子と理恵に札束を渡すと、競い合うようにズボンのベルトを解き始めた。

「ほら、指くん。この人たち、さっきの動画を見てわざわざ集まってくれたのよ。あんたのその『壊れた姿』を、生で見たいんですって」

恵子が指の腕を掴み、四つん這いの姿勢に無理やり固定した。理恵はビデオカメラを三脚に据え、逃げ場のない角度から指の秘部をアップで映し出す。

「嫌だ……もう、入らない……っ! 助けて……恵子、さん……っ!」

「いいえ、入るわよ。あんたのここは、もう私たちの『貯金箱』なんだから」

理恵の冷酷な言葉を合図に、一人目の中年男が、指のまだ塞がりきっていないアヌスへと、準備もなしにその太い欲望を突き立てた。

「ぎ、あああああぁぁぁぁぁっ!!!」

さらに、二人目の男が指の髪を掴み、無理やり口を開けさせて自分のモノを喉の奥まで叩き込む。三人目の男は、指の背中に跨り、恵子と一緒に彼の身体を弄り回した。

「ははっ! 最高の玩具だぜ、これ!」 「見てよ、理恵。この子、口と後ろ、両方塞がれて……なんて淫らな顔してるのかしら」

前後、そして口。すべての穴を粗野な男たちに占拠され、指の身体は激しい往復運動の衝撃で、ボロ雑巾のように揺さぶられる。 恵子は指の耳元で、最も残酷な言葉を囁き続けた。

「ねえ、指くん。明日からは大学の帰り、毎日ここに来るのよ? 私たちが、あんたを一番高く買ってくれる人に売ってあげるから」

多人数による暴力的な射精が、指の体内と顔面に何度も繰り返される。 指の意識は、白濁した快楽と激痛の渦の中で、ついに「自分」という存在を完全に手放した。

「あ、は……あ、はぁぁ……っ」

もはや言葉にならない。 ただ、男たちの欲望を受け入れるためだけに存在する「肉の器」。 指は、恵子と理恵が笑いながら自分を「出荷」していく様子を、魂の抜けた瞳で見つめながら、暗い悦びさえ感じ始めていた。

あの日から数か月。  大学に通うことも、家族と食卓を囲むこともなくなった「指」の瞳には、かつての瑞々しさは微塵も残っていなかった。今の彼にあるのは、恵子と理恵に調教され尽くした肉体と、彼女たちの欲望を叶えることだけに特化した、歪んだ忠誠心だけだ。

 舞台は再び、あの昼下がりの電車内。  指は、二人の女性の指示通り、一人のターゲットを追い詰めていた。

 目の前に立つのは、どこか幼さの残る、初々しい制服姿の高校生の少年。  かつての指と同じように、無防備にスマートフォンを眺めている。

(……ああ、この子も。僕と同じように、壊されるんだ)

 指の口元に、形容しがたい妖艶な笑みが浮かぶ。  彼は迷いなく、少年の背後へ密着した。かつて自分が恵子にされたように、ゆっくりと、しかし確実に、その「手」を少年の股間へと滑り込ませる。

「……っ!? な、なに……っ」

 少年の体がビクンと跳ねる。驚きと恐怖に満ちた瞳が指を見上げる。  指はその少年の耳元に顔を寄せ、かつての自分を壊した恵子と全く同じ、甘く冷たい声で囁いた。

「静かにして。……声を上げたら、みんなにバレちゃうよ?」

 少年のズボンの上で、指の手が執拗に動き始める。  指は知っていた。数メートル先で、恵子と理恵が、この様子を満足げに眺めていることを。彼女たちは、指が自分たちと同じ側へと堕ち、新たな「二代目」を狩る瞬間を、極上の娯楽として楽しんでいるのだ。

「……ふふ、いいわよ指くん。その調子」

 恵子が、震える少年の隣にそっと歩み寄る。  理恵はスマートフォンのカメラを起動し、指が少年を辱める決定的な瞬間を、死角から捉えようとしていた。

「助け……て……っ」  少年の細い腕を、指が強く掴む。 「助けないよ。……これから、もっと楽しいところに連れて行ってあげる」

 電車のブレーキ音が響き、駅が近づく。  指に痴漢され、腰を抜かしそうになっている少年を、三人は取り囲むようにしてホームへと連れ出した。  行き先は、あの汚濁と絶頂が支配するビルの一室。

 かつての指が「指」という名前すら失った場所へ、今度は彼自身が、次の獲物を引きずり込んでいく。  終わることのない背徳の連鎖。  指の頬には、自分を地獄へ叩き落とした二人の主への、狂気じみた愛の微笑みが張り付いていた。
                  
                      完