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中学3年生の冬、教室の空気は卒業を控えた浮き足立ちと、進路への不安が混ざり合って澱んでいる。

「……指、またぼーっとしてる」

友人の声で、**指(ゆび)**は現実に引き戻された。15歳。体つきはそれなりに大人に近づいてきたが、中身はまだ真っ白なままだ。いわゆる「童貞」というステータスが、まるで消えない呪印のように自分を縛り付けている気がしてならない。

予報外れの雨は、アスファルトの匂いを強烈に巻き上げながら、下校途中の指の肩を容赦なく濡らした。

駅前の古いアーケードの端、錆びついたシャッターが降りた店の軒下に逃げ込む。指は濡れた学ランの袖を払い、溜息をついた。あと数百メートル走ればマンションに着くが、この土砂降りではずぶ濡れ確定だ。15歳の、まだどこか頼りない体格を包む制服が、じっとりと肌に張り付く。

「……最悪だ」

独り言が雨音に消される。その時だった。

「本当、ひどい降りになっちゃったね」

聞き慣れた、けれどこの場所で聞くにはあまりに甘やかな声がした。心臓が跳ねる。隣を見ると、いつの間にか美咲さんが立っていた。仕事帰りなのだろう。タイトなベージュのスカートに、薄手のトレンチコートを羽織っている。

「美咲、さん……」

「指くんも雨宿り? 傘、持ってないんだ」

彼女は困ったように笑い、閉じたばかりの紺色の折りたたみ傘を振った。軒下は狭い。美咲さんが一歩寄ると、彼女の肩が指の腕に触れた。

狭い空間に、雨の冷たい匂いと、彼女の髪から漂う柔らかなシャンプーの香りが混ざり合う。指は、自分の心臓の音が雨音よりも大きく響いているのではないかと不安になった。15歳の童貞にとって、年上の女性の体温がこれほど近くにあるというのは、もはや暴力的なまでの刺激だった。

美咲さんの白い首筋に、雨の雫がひとつつうっと伝い、鎖骨のくぼみへと消えていく。指はその光景から目を逸らすことができず、喉の奥がひりついた。

「ねえ、指くん。私の傘、ちょっと小さいけど……一緒に入る?」

美咲さんが顔を覗き込んできた。彼女の瞳には、戸惑う少年を慈しむような、あるいは少しだけからかうような光が宿っている。

「でも、それじゃ美咲さんが濡れます。俺、走って帰るんで」

精一杯の強がりを言ってみる。けれど美咲さんは「だめだよ、風邪引いちゃう」と言って、迷いなく指の腕を自分の引き寄せた。

「ほら、もっとこっち来て。肩、出ちゃってるよ」

彼女の手が指の背中に回される。薄い制服越しに伝わる、大人の女性の指先の柔らかさと熱。指は息を止めた。一歩踏み出せば、雨のカーテンの中に二人きり。傘の下という小さな密室で、指は自分が子供であることを、そして同時に、ひとりの男として彼女を求めていることを、痛いほど自覚していた。

美咲(みさき)さんは、自宅のマンションの隣の部屋に住む 24歳 地元の図書館で働いている。

マンションの共用玄関に着き、美咲さんがパチンと傘を閉じた。一気に現実へと引き戻されたような静寂が二人を包む。指は冷えた指先を震わせながら、学ランのポケットに手を入れた。

右のポケットには、クシャクシャになった英単語のプリント。左のポケットには、小銭が数枚。

「……あれ?」

指の動きが止まる。心臓が嫌な跳ね方をした。もう一度、今度は裏地までひっくり返すようにして探る。カバンの中の教科書の隙間、筆箱の底、どこをどう探しても、あるはずの銀色の感触が指先に触れない。

「どうしたの、指くん?」

美咲さんが不思議そうに顔を覗き込んでくる。その至近距離の美しさに、一瞬だけ思考がフリーズした。

「鍵……鍵がないんです。たぶん、学校の下駄箱で履き替えた時に落としたか、教室に忘れてきたか……」

最悪だ。15歳の詰めの甘さが、この決定的な場面で露呈してしまった。親は共働きで、帰ってくるのは夜の8時を過ぎる。あと3時間は、この濡れた格好のまま、冷たい廊下で立ち尽くすしかないのか。

「ええっ、それは大変。……お家の人に連絡はつく?」

「スマホ、学校に置いてきちゃって。……すみません、俺、ほんとバカで」

情けなくて、惨めで、消えてしまいたかった。憧れの女性の前で、自分がいかに子供であるかを突きつけられた気がした。雨に濡れた髪から滴が垂れ、鼻先をかすめる。

美咲さんは少しの間、何かを考えるように指を唇に当てていたが、やがて困ったような、でもどこか優しい微笑みを浮かべた。

「……しょうがないね。外は寒いし、風邪引いちゃうから」

彼女は自分のカバンからキーホルダーのついた鍵を取り出し、隣のドアに差し込んだ。カチャリ、という軽い金属音が、指の耳には運命の扉が開く音のように聞こえた。

「お父さんかお母さんが帰ってくるまで、私の部屋で待ってなよ。タオルも貸してあげるから」

「え、でも、そんな。悪いですよ……」

口では遠慮しながらも、指の体は期待で熱くなっていた。

「いいの。ほら、入って」

美咲さんの部屋。廊下から漂ってくるのは、先ほどよりもずっと濃密な、彼女自身の生活の匂いだった。15歳の、まだ何も知らない少年が足を踏み入れていい場所ではないような気がして、指は震える足でその境界線を越えた。


玄関のタイルは、二人の足元から滴り落ちる雨水ですぐに鏡のように光りだした。美咲さんのトレンチコートは重く水を吸い、指の制服のズボンは、泥の混じった水で膝から下が肌に張り付いている。

「……ひどい。二人とも、これじゃあ池に落ちたみたい」

美咲さんが自嘲気味に笑いながら、先に自分のコートを脱いで壁のフックにかけた。その下の白いブラウスは、肩から胸元にかけて雨が染み、肌の色と下着のラインが痛々しいほど鮮明に浮き出ている。

指は、目のやり場に困って視線を落とした。自分のズボンからも、ひっきりなしに雫が床へ落ちている。

「指くん、ここで全部脱いじゃって。ズボンも、シャツも。……そこに置いておいたら、私が後で洗濯機に入れるから」

「え……でも、ここで?」

「いいから。風邪引く方が大変。……ちょっと待ってて、着替え持ってくる」

美咲さんは急ぎ足でリビングの奥へ消え、すぐに畳まれた服を持って戻ってきた。

「これ……弟がうちに泊まった時に忘れていったスウェット。少し大きいかもしれないけど、今はこれに着替えて。私は脱衣所で着替えてくるから」

彼女は指にグレーの綿のスウェットを押し付けると、自分もまた「冷た……」と呟きながら、足早に脱衣所へと消えた。ドアの向こうで、濡れた衣類が床に落ちるベチャリという重い音や、肌を擦る微かな音が聞こえる。

指は一人、玄関に取り残された。

(美咲さんも……あそこで脱いでるんだ)

想像が頭をよぎり、指は喉の奥が焦げ付くように熱くなった。彼は震える手でベルトを外し、重たいズボンを脱ぎ捨てた。続いてカッターシャツのボタンを外す。雨に濡れて透けたシャツが肌に吸い付いて離れず、剥がすたびに15歳の白い肌が冷気にさらされる。

その時、タイミング悪く美咲さんが脱衣所のドアを細く開けた。

「あ、指くん、タオル忘れて――」

「わっ!?」

指は上半身が裸、下半身も下着一枚という無防備な姿で固まった。美咲さんもまた、着替えの途中のようで、首元の開いた部屋着のカットソーから、まだ拭ききれていない鎖骨の雨の滴が光っている。

二人の視線がぶつかる。美咲さんの瞳が、指の細いけれど若々しい熱を帯びた身体を、なめるように動いた。

「……ごめん。でも、指くん。意外と、いい体してるんだね」

彼女の声は、湿り気を帯びて低く響いた。指は顔を真っ赤にして、ひったくるようにスウェットを被った。

リビングに入り、指は彼女に指示された通りの場所に座った。美咲さんは背後のソファに腰を下ろす。

「……拭くよ」

彼女がバスタオルを指の頭に被せた。 視界が遮られ、シトラスの香りと彼女の体温だけが迫ってくる。彼女の手がタオルの上から髪を拭くたび、指の背中には激しい痺れが走り、15歳の理性は今にも弾けそうだった。

指は、自分の頭を拭いている彼女の両手を、タオルの上から強く掴んで、その動きを止めた。

「……美咲さん。いつまで、子供扱いするんですか」

指はそのまま、ゆっくりと後ろを振り返った。ソファに座り、身を乗り出していた美咲さんの顔が、すぐそこにあった。至近距離で見つめ合う二人の間に、外の雨音さえ聞こえなくなるような濃密な沈黙が流れた。

指が振り返り、彼女の両手を掴んだまま見上げると、美咲さんは逃げようとはしなかった。

ソファに浅く腰掛けた彼女の膝が、指の肩に触れている。着替えたばかりの彼女の部屋着からは、石鹸の匂いと、微かに残る雨の匂いがした。

「……子供扱いなんて、してないよ」

美咲さんが、指の手に力を込めて握り返した。彼女の指先はまだ少し冷たく、それが余計に、生身の女性としての実感を指に与える。

「本当にそう思ってるなら……あんな風に、見ないでください」

指の声は、自分でも驚くほど低く、震えていた。 「あんな風」とは、玄関で着替えていた自分に向けられた、あの熱を帯びた視線のことだ。美咲さんの瞳が揺れ、長い睫毛が瞬く。

「指くんが……あんなに男の子らしい体をしてるなんて、知らなかったから。……驚いただけ」

「……驚いただけ、じゃないでしょう」

指は掴んでいた彼女の右手を、自分の胸元へと引き寄せた。スウェット越しでもはっきりとわかる、早鐘を打つような心臓の鼓動。

「俺、美咲さんが思ってるより、ずっと前から……苦しいんです」

15歳の、まだ何も知らないはずの少年が吐き出した、切実な拒絶と執着。 美咲さんは、指の胸に押し当てられた自分の掌から伝わる動悸に、息を呑んだ。彼女は自由な方の左手を伸ばし、指の頬にそっと触れる。

「……指くん。それ以上言ったら、私、もう『隣のお姉さん』ではいられなくなるよ?」

彼女の顔が、ゆっくりと降りてくる。 触れそうな距離。美咲さんの瞳に映る自分は、見たこともないほど必死で、そして男の顔をしていた。


二人の視線が、至近距離で絡み合ったまま動かない。 外では、激しい雨音が世界を塗りつぶし、この部屋だけが切り離された箱舟のように静まり返っている。

指が自分の胸に押し当てた美咲さんの掌。そこから伝わる彼の激しい鼓動を、彼女は避けることなく、指の腹でトクトクと刻まれるリズムを確かめるように受け止めていた。

「……ねえ、指くん」

美咲さんが、小さく吐息をつくように名前を呼んだ。 彼女の左手が、指の頬から耳の裏、そしてうなじへとゆっくりと滑り込む。指は、そのあまりの柔らかさと熱に、全身の筋肉が強張るのを感じた。

「さっき、玄関で……あんな風に見ないでって言ったよね」

美咲さんは自嘲気味に、少しだけ瞳を細めた。

「……本当はね、指くんが来るずっと前から、私、こうなるのが怖かったの」

「え……?」

「最初は、ただの可愛い隣の弟くんだと思ってた。でも、会うたびに背が伸びて、声が低くなって……。図書館に私を訪ねてくる時の君の視線が、どんどん真っ直ぐになっていくのが分かって……。それを見て見ぬふりをするのが、最近、すごく苦しかったんだよ」

美咲さんの瞳に、うっすらと涙のような膜が張る。それは悲しみではなく、抑えていた感情が溢れ出した時の熱のようなものだった。

「15歳の君を、こんな風に揺さぶっちゃいけないって、ずっと思ってた。でもね、さっき……。雨の中で君を傘に入れた時、触れた肩が思っていたよりずっとがっしりしていて……。玄関で濡れた体を隠そうとしていた君を見て、もう、自分に嘘がつけなくなっちゃった」

彼女の手が、指の後頭部をやさしく引き寄せる。

「指くん……私、君のことが、ただの『お姉さん』としてじゃなく、好きだよ。……君が思っている以上に、ずっと前から」

美咲さんの告白は、雨音を切り裂いて指の心の最深部に突き刺さった。憧れ続けた女性が、自分と同じ熱量で自分を求めている。その事実は、15歳の彼にとって、世界の理(ことわり)がひっくり返るほどの衝撃だった。

「美咲、さん……」

指は、掴んでいた彼女の右手に、さらに力を込めた。もはや敬語を使うことさえ忘れていた。

「俺……もう、我慢しなくて、いいですか」

美咲さんは答えなかった。ただ、潤んだ瞳で彼の唇を見つめ、ゆっくりと、自分からその距離を埋めるように顔を傾けた。

指の問いかけに、美咲さんは答えなかった。ただ、柔らかな微笑みが一瞬だけ口元に浮かび、次の瞬間、吸い寄せられるように彼女の顔が近づいた。

唇に、熱い何かが触れる。 それは15歳の指が、これまで頭の中で何度もシミュレーションしてきたどんな空想よりも、ずっと柔らかく、そしてずっと重みのある現実だった。

最初は、羽が触れるような軽い接触。指は驚きで目を見開いたまま、思考が真っ白に染まった。けれど、美咲さんの吐息が鼻先をかすめ、彼女の腕が自分の首に回された瞬間、指の全身を突き抜けるような衝動が走った。

「……ん」

指は、掴んでいた彼女の右手を離し、自分から美咲さんの細い肩を抱き寄せた。スウェット越しに伝わる彼女の震え。憧れだったお姉さんは、今、自分の腕の中で一人の脆い女性として存在している。

指は目を閉じ、不器用ながらも必死にその熱に応えた。シトラスの香りと、雨上がりの湿った空気、そして美咲さんの甘い味が、混ざり合って脳を痺れさせる。15年という短い人生の中で守り続けてきた「子供」という殻が、この一瞬で木っ端微塵に砕け散る。

どれくらいの時間が経っただろうか。 唇が離れると、二人の間に銀色の糸が微かに光り、すぐに消えた。美咲さんは頬を林檎のように赤く染め、少し潤んだ瞳で指を見つめた。

「……指くん、上手だね」

「……練習なんて、してないです。美咲さんのことしか、考えてなかったから」

指の声は、もう少年のものではなかった。 彼は美咲さんの両手をしっかりと握り、彼女の瞳を真っ直ぐに射抜いた。

「美咲さん。俺、あと半年で中学を卒業します。高校に入ったら……バイトもして、もっと背も伸ばして、必ず美咲さんに相応しい男になります」

それは、15歳の彼ができる、最大限に重い誓いだった。

「だから……卒業するまで、俺のこと、他の誰にも渡さないでください。ちゃんと、俺だけを見ててください」

「……卒業まで、待っててほしい」

指がそう口にしたとき、美咲さんはわずかに唇を震わせ、困ったような、でも酷く艶っぽい笑みを浮かべた。

「指くん……本当に、半年も待てると思ってるの?」

彼女の声は、先ほどよりもさらに低く、熱を帯びていた。美咲さんは指の首筋に回していた腕に力を込め、自分の方へとさらに引き寄せる。

「私は、今、目の前にいる指くんが欲しいのに。……『未来の男の子』を待つほど、お姉さんは物分かり良くないんだよ?」

彼女の指先が、スウェットの襟元から入り込み、指の鎖骨をゆっくりとなぞる。玄関で見た、あの剥き出しの肌の感触を確かめるような、挑発的な指使い。

「美咲、さん……」

指の理性が、激しい音を立てて崩壊していく。15歳の少年が抱く「半年後の約束」という綺麗事は、目の前の女性の吐息一つであっけなく吹き飛んだ。

指は、彼女の腰に回した手に力を込め、ソファの背もたれに彼女を押し付けるようにして、再び深く、今度は貪るような口づけを落とした。

「……んっ、指……」

美咲さんの口から、初めて「くん」を外した彼の名前が漏れる。

指は、借りたスウェットの袖を捲り上げ、美咲さんの細い腰を直接引き寄せた。15歳の真っ直ぐな衝動は、もはや制御不能だった。彼女の柔らかい身体が、自分の未熟な、けれど確かな熱を帯びた身体と重なり合う。

「俺……もう、隣の子供に戻るなんて無理です。……美咲さんが、俺をこうさせたんだ」

「……分かってる。指のせいじゃない。……私のせいだよ」

美咲さんは、指の背中に爪を立てるようにして抱きつき、その耳元で熱い吐息を吐き出した。

「今日、鍵を忘れてくれて……よかった」

外の雨は、止むどころか再び勢いを増し、窓を激しく叩いている。まるで、世界が二人だけになるのを祝福しているかのように。

美咲さんの「今、目の前にいる指くんが欲しい」という言葉が、導火線に火をつけた。

指は、膝をついていたラグから這い上がるようにして、ソファに座る彼女を押し倒した。背もたれに体を預けた美咲さんの、驚いたような、けれどどこか潤んだ瞳が、至近距離で指を射抜く。

「……指、くん」

名前を呼ぶ彼女の唇を、指は再び塞いだ。今度はさっきよりも深く、逃がさないように。 彼女の口内からは甘い熱が溢れ、指の思考を麻痺させる。

指の震える手が、美咲さんの部屋着の裾へと伸びた。 「いい、ですか……」 掠れた声で問いかけると、美咲さんは答えの代わりに、指の首筋に腕を回して強く引き寄せた。

スウェットの生地越しではない、彼女の肌の本当の熱。 指が部屋着を押し上げると、そこには玄関の薄暗い灯りで見たよりもずっと白く、柔らかな曲線が広がっていた。15歳の少年が、夢にまで見た「綺麗なお姉さん」の、剥き出しの真実。

指の指先が、彼女の脇腹から背中へと滑り込む。 「あ……っ」 美咲さんが短く声を漏らし、指の背中に爪を立てた。その痛みが、かえって指に、これが夢ではないことを教える。

「美咲さん、俺……初めてだから……」 「……私も。こんなに胸が苦しいのは、初めてだよ」

美咲さんは指の顔を両手で包み込み、優しく、でも抗えない力で自分の方へと導く。 二人の衣服が、一枚、また一枚と、雨の音に紛れて床に落ちていく。

リビングの淡い間接照明が、重なり合う二人のシルエットを壁に映し出す。 指の、まだ少年の名残があるしなやかな身体が、美咲さんの大人の女性としての豊かな熱に包まれていく。

指は、彼女の肌に触れるたび、その柔らかさに目眩を覚えた。同時に、自分の中に眠っていた「男」としての本能が、激しく疼く。 彼女の首筋に顔を埋めると、そこには香水ではない、美咲さんという一人の女性が放つ、抗いようのない甘い匂いが充満していた。

「指……いいよ、全部、君にあげる」

美咲さんの部屋着を完全に脱ぎ捨てたとき、指の視界に飛び込んできたのは、想像を絶するほど白く、豊潤な、大人の女性の肉体だった。

玄関の薄暗い灯りで見たのとはわけが違う。至近距離で、重力に従ってわずかに形を変える胸の膨らみ、細く引き締まったくびれ、そしてその下に広がる、少年の聖域を侵食するような濃密な影。

「指、くん……。そんなに、見ないで……」

美咲さんが腕で胸を隠そうとするが、指はその細い手首を掴み、ソファに押し付けた。15歳の腕力は、既に彼女を制圧するのに十分なほど強く、男としての力に満ちていた。

「見ますよ。ずっと、こうしたかったんだから」

指の声は、獣のように低く響いた。 彼は彼女の首筋に顔を埋め、柔らかな肌に歯を立てるようにして吸い付いた。 「あ……っ!」 美咲さんが背中を反らせ、指の髪を強く掻き乱す。大人の女性が、自分の行為によって声を漏らし、悶える。その事実に、指の中のどす黒いほどの征服欲が跳ね上がった。

指が震える身体を彼女に重ね、その先端が美咲さんの最も熱い場所に触れたとき、彼は自分の心臓が喉まで競り上がってくるのを感じた。

「美咲さん……っ」

意を決して腰を押し付ける。だが、そこは指が想像していたような「柔らかい受け皿」ではなかった。 硬く、閉ざされた門のように、彼の侵入を拒んだ。

「っ、あ……っ……いたい、指くん」

美咲さんが顔を歪め、指の肩を強く押し返す。 指は焦った。15歳の頭では、何が起きているのか理解できない。ただ、自分の昂ぶりが彼女の肌を無遠慮に擦り、摩擦の痛みだけが鋭く走る。

「……ごめん。でも、俺……」

指は、彼女の細い太ももをさらに高く持ち上げ、無理やり場所をこじ開けようとした。 美咲さんは「んぅ……っ」と声を漏らして目を閉じ、指を拒むように腰を引く。 入らない。 先端がわずかに沈み込もうとするたびに、彼女の身体が拒絶するように強張る。指の額からは、雨とは違う脂汗が滴り落ちた。

指は、指先で彼女のそこを無理やり広げようとした。 外の雨のように濡れているはずなのに、中の密度はあまりに高く、指一本を通すのさえ容易ではない。

「美咲さん……お願い、力を抜いて……っ」

指は、彼女の唇を貪るように塞ぎ、彼女の意識を逸らそうと必死に舌を絡ませた。 キスをしながら、何度も、何度も、角度を変えて押し当てる。 ヌルリとした生々しい音と、肌が擦れる不快なほどの熱。

「あ……っ、指くん、待って、まだ……っ」

美咲さんが痛みに身を捩り、指の腰を押し返そうとする。 狭く、硬い、未開の場所。指はそこをこじ開けようと必死だったが、初めて知る女性の体内の「締め付け」は、15歳の少年の想像を絶するほどに苛烈だった。

指は、自分の先端が熱い粘膜に飲み込まれていく、そのミリ単位の感触にさえ、全身の血が沸騰するような快感を覚えていた。

「美咲さん、俺……っ、これ以上……っ!」

「だめ、まだっ、動いちゃ……っ」

美咲さんが指の肩を強く掴み、指先が食い込む。 その痛みさえもが、指にとっては強烈な刺激となった。 入らない焦りと、密着した肌から伝わる美咲さんの甘い吐息。そして、結合部から伝わってくる、暴力的なまでの熱。

指は、本能的に腰を一度だけ、強く突き出した。 「っ、あぁぁぁぁっ!!」 美咲さんが短く悲鳴を上げ、彼女の身体が異物を排除するように激しく波打った。

その、一瞬の、強烈な締め付け。 指の頭は真っ白に弾け、腰の奥から制御不能な熱い塊が、一気にせり上がってきた。

「あ、……っ!?」

指の喉が引き攣る。 まだ半分も入っていない、その入り口のところで。 15歳の未熟な衝動は、美咲さんの処女を貫くよりも先に、限界を迎えてしまった。

「……あ、っ……ぁぁ……!」

指の身体がガクガクと震え、彼の精髄が美咲さんの入り口に、そして重なり合った二人の腹の間に、無様に、けれど熱く溢れ出した。

静寂が、一瞬で部屋を支配した。 聞こえるのは、指の荒い、情けない呼吸の音だけ。

「……っ、…………あ」

指は、美咲さんの上に重なったまま、絶望に打ちひしがれて固まった。 やってしまった。 憧れの美咲さんを相手に、あんなに格好をつけておきながら、自分は何もできないまま、ただ無様に果ててしまった。

美咲さんの白い肌に、指の未熟な痕跡が白く汚して広がる。 指は顔を上げることができなかった。恥ずかしさと、申し訳なさと、情けなさで、涙が溢れそうになる。

「……ごめんなさい。俺……俺……」

消え入るような声で謝る指。 その時、指の頭を、優しく撫でる手があった。

美咲さんは、痛みに涙を浮かべたまま、けれど慈しむような、包み込むような微笑みを浮かべていた。

「……ふふ。指くん、ほんとに……可愛いね」

彼女は、情けなさに震える指の顔を両手で持ち上げ、その額にそっとキスをした。

「びっくりした。指くんの、あんなに熱いんだもん。……私のせいだね、ごめんね」

「……違います。俺が、俺がガキなせいで……っ」

「いいよ。……まだ、夜は長いんだから。次は、もっとゆっくり……ね?」

美咲さんはそう言うと、指の腰を自分の足で絡めとり、今度は自分から、赤く汚れた指の唇を優しく塞いだ。

一度、無様に果ててしまった後の沈黙。 指の腹と美咲さんの太ももの間に残る、白く熱い未熟な痕跡が、皮肉にも指を「子供」から「共犯者」へと変えていました。

美咲さんは、ラグに横たわったまま、情けなさで顔を覆う指の手を優しく退けました。

「ねえ、指くん。……もう一度、最初からしよ?」

彼女の声は、先ほどまでの「お姉さん」の余裕ではなく、一人の女性として指を求めている、震えるような響きがありました。

美咲さんは、ラグの上に置かれたバスタオルを手に取り、二人の間に残った失敗の跡を丁寧に、慈しむように拭い去りました。その仕草一つ一つが、指にとっては耐えがたいほどの羞恥と、それを上回る猛烈な独占欲を呼び覚まします。

「……次は、絶対、ちゃんとしますから」

指は、リセットされた彼女の白い肌を、今度は飢えた獣のような目で見つめました。一度放出したことで、頭の芯にあった過剰なパニックが消え、代わりにどっしりとした、底知れない欲望が腰の奥に溜まっていきます。

指は、美咲さんの脚の間に再び膝をつき、今度は焦らずに彼女のすべてを指先で愛撫し始めました。

「っ……あ……指くん、そこ……っ」

美咲さんの身体が、先ほどよりもずっと素直に、そして淫らに反応します。初めて知る女性の身体の、蜜のような甘い香りと、指を吸い寄せるような湿り気。

指は、彼女の唇を深く、奪い取るように塞ぎながら、再びその「門」へと自分の昂ぶりを押し当てました。今度は先ほどよりもずっと熱く、ずっと硬い。

「美咲さん、今度こそ……」

「……いいよ、指。全部……君の好きにして」

指は、彼女の腰を両手でしっかりと固定し、体重を乗せてゆっくりと、一ミリずつ、確かな感触を確かめるように沈み込んでいきました。

グ、という鈍い抵抗。美咲さんが息を呑み、目を見開く。 先ほど突き破れなかった、彼女の人生の最後の一線。そこが、指の熱い塊によって、音を立てて広げられていく。

「痛……っ、いたい……指、待って……っ」

「……離しません。絶対、離さない」

指は、彼女の耳元でそう言い切り、逃げようとする彼女の腰をさらに強く引き寄せました。 そして、ついに。 抵抗が消え、指のすべてが、美咲さんの内側の最も深い、最も熱い場所へと到達しました。

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

美咲さんの叫び声が、嵐の夜の闇を切り裂いた。 二人の初めてが、本当の意味で、今、一つに溶け合いました。 狭く、締め付けるような彼女の肉壁。そこは、一度失敗した指にとって、もはや恐怖ではなく、自分が支配すべき愛おしい領土でした。

指は、痛みに涙を流す彼女の顔を何度も舐め上げ、不器用ながらも力強く、腰を振り始めました。 ドプ、ドプという、肌と肌、肉と肉がぶつかり合う、この世で最も生々しい音。 美咲さんもまた、痛みの先にある、自分でも信じられないような熱い疼きに腰を浮かせ、指の背中に腕を回して強く、強く、しがみついてきました。

「指……すごい、っ、あ……っ! さっきより、ずっと……大きい……っ!」

「美咲さん、俺……もう一生、美咲さん以外の女なんて見ない……っ」

指は、彼女の胸の膨らみを潰すように抱きしめ、15歳の全存在を賭けて、彼女の最深部を突き上げ続けました。 ラグの上で重なり合う二人の身体は、汗と、涙と、そして彼女の純潔の証である鮮血で、ぐちゃぐちゃに汚れていました。けれど、その汚れこそが、二人が永遠に繋がったという、何よりも美しい真実でした。

何度も、何度も、限界に近い悦びを分かち合い、最後はどちらからともなく、長い、長い絶叫を上げながら、二人は深い、深い、深い愛欲の底へと、心中するように沈んでいきました。


嵐が去った後の、明け方のリビング。 ラグの上で、借りたスウェットを毛布代わりにして、二人は抱き合ったまま眠りについていました。

指は、腕の中で眠る美咲さんの温もりを感じながら、昨夜、自分が奪ったものの重さと、手に入れたものの大きさを噛み締めていました。

カレンダーの上では、半年後に卒業。 けれど、二人の「本当の夜」は、ここから一生、続いていくのです。

                     完