公園のベンチに座り、ただ流れる雲を目で追っていた指の前に、その影は落ちました。

「ねえ、君。ちょっといいかしら」

顔を上げると、上品なブラウスに身を包んだ、穏やかな笑みを浮かべた女性が立っていました。彼女は近くで市民向けの絵画教室を開いている講師だと名乗り、今、新しい作品のインスピレーションを探しているのだと言いました。 「あなたのその、何にも染まっていないような佇まい……。一目見て、私のモデルになってほしいって思ったの。もちろん、ちゃんとしたアルバイトとしてお願いするわ」 十六歳の指にとって、それは未知の世界からの誘いでした。放課後の手持ち無沙汰な時間と、提示された思いがけない額の報酬。何より、大人の女性から必要とされた高揚感が、彼の背中を押しました。

初めて足を踏み入れた教室は、油絵具とキャンバスの匂いが充満していました。 「最初は緊張するでしょうから、その制服のままでいいわ。そこに座って、公園にいた時みたいにボケーっとしていて」 先生の言葉に従い、指はぎこちなく椅子に腰を下ろしました。十数人の生徒たちの視線が一斉に自分に向けられるのを感じて、指の指先は微かに震えます。しかし、鉛筆が紙を走る規則的な音を聞いているうちに、次第に意識は遠のき、いつもの無気力な平穏が戻ってきました。

「……うん、いいわ。でも、少し首筋のラインが隠れちゃっているわね」

ふいに音が止まり、先生が指のそばへ歩み寄ってきました。彼女は慣れた手つきで指のネクタイを緩め、ワイシャツの第一ボタン、第二ボタンと指をかけました。 「少しだけ、着崩してみましょうか。その方が、若々しい骨格の美しさが際立つから」 開かれた襟元から入り込む冷たい空気が、指の火照った肌を撫でます。自分より少し背の低い先生から漂う香水の匂いが鼻をくすぐり、指は息を止めました。童貞の彼にとって、これほどまで身近に女性の気配を感じることは初めての経験でした。

「次は、シャツを脱いでくれるかしら。肩の筋肉のつき方を確認したいの」

先生の要求は、止まることを知りません。一枚、また一枚と、身に纏っていた「日常」が剥ぎ取られていきます。生徒たちの視線は、もはや単なる観察ではなく、獲物を品定めするような熱を帯び始めていました。 「恥ずかしがらなくていいのよ。これは芸術なんだから」 その言葉は魔法のように指の抵抗感を奪っていきます。裸になった上半身を晒し、教室の真ん中で立ち尽くす十六歳の少年。彼は自分が、ただのモデル以上の「何か」として消費されていく予感に震えながらも、先生の優しい手つきに導かれるまま、さらに深い場所へと踏み出していくのでした。

教室の温度が数度上がったかのような、独特の熱気が室内に漂い始めました。上半身を剥き出しにした指は、自分の白い肌が蛍光灯の下で晒されている事実に、居心地の悪い痺れを指先に感じていました。

「さて、皆さん。ここからは光と影のコントラストをより強調していきましょう」

先生がパンパンと手を叩くと、生徒たちが一斉に身を乗り出しました。最前列に陣取っているのは、この教室の古株である松田さんという初老の男性です。普段は穏やかな隠居老人といった風情ですが、今は分厚い眼鏡の奥の目をギラつかせ、指の鎖骨のラインをなぞるようにスケッチブックを睨んでいます。その隣には、派手なスカーフを巻いた裕福そうなマダム、佐藤さんが座っていました。彼女は「まあ、なんて綺麗な肌かしら」と溜息を漏らしながら、指の胸元をじっと凝視し、手元のパレットで淡い桃色の絵具を熱心に混ぜています。さらに後ろには、美大志望だという物静かな女子大生の姿もありましたが、彼女もまた、獲物を観察する捕食者のような鋭い視線を指に突き立てていました。

「指くん、次は椅子の上に横たわってみて。そう、足を少し崩して……右手を頭の後ろに回してくれる?」

先生の指示は具体的で、抗いがたい力を持っていました。指は言われるがまま、冷たい木の椅子の感触を肌に感じながら体を横たえました。 「そう、そのままよ。服を脱ぐと、人間は急に無防備になる。その『戸惑い』こそが、今描きたいものなの」

先生が指の腰のあたりに手を添え、さらにズボンのベルトに指をかけました。カチリ、と金属の触れ合う乾いた音が静かな教室に響きます。指は心臓が跳ね上がるのを感じ、思わず先生の手首を掴もうとしましたが、彼女の冷徹なまでに澄んだ瞳に射すくめられました。

「動かないで。今、君はただの少年じゃない。私たちのための『素材』なのよ」

ベルトが外され、ジッパーがゆっくりと下ろされていく感触。指はたまらず目を閉じました。瞼の裏では、生徒たちが一斉に鉛筆を走らせる、シュッシュッという激しい音が鳴り響いています。自分が十六歳の男子高校生であることを忘れ、名前の通り、ただの指先や肌の質感として解体され、キャンバスの中に吸い込まれていくような、恐ろしいまでの快感と恐怖。

「次は、もう少し足を広げてみましょうか。その方が、股関節のラインが綺麗に見えるから」

先生の容赦ない声が、静寂を切り裂きました。指はもはや、自分がどこまで脱がされ、どのような姿で晒されているのか、その境界線すら分からなくなっていました。

教室を支配していたシャカシャカという鉛筆の音さえ、その瞬間、ぴたりと止まったかのように感じられました。

「最後の一枚も、脱いでちょうだい。中途半端な隠し事は、絵を濁らせるだけだわ」

先生のその声は、もはや公園で出会ったときのような優しいおばさんのものではなく、冷徹な芸術家の命令でした。指は震える手で、自らのアイデンティティを最後の一線で守っていた布地に指をかけました。十六歳の彼にとって、それは自尊心を全て投げ出すに等しい行為でしたが、教室全体を包み込む「期待」という名の重圧に、抗う術はありませんでした。

ゆっくりと、足元に布が落ちたとき、指はあまりの羞恥に顔を覆いたくなりました。しかし、先生の「手は顔から離して」という冷たい指示がそれを許しません。

「見て、この純粋な生命の形を。嘘偽りのない、十六歳の真実よ」

先生の感嘆の声に応えるように、生徒たちの視線はさらに残酷なほど細部へと向けられました。最前列の松田さんは、身を乗り出すようにして指の股関節のラインを食い入るように見つめ、鼻息を荒くしながらキャンバスに太い線を叩きつけています。マダムの佐藤さんは、顔を赤らめながらも、扇子で口元を隠しながら指の未熟な膨らみをじっと観察し、時折、隣の生徒とひそひそと何かを囁き合っては、悦に浸ったような笑みを浮かべていました。

指は逃げ場のない視線の嵐の中で、一糸纏わぬ姿で立ち尽くしていました。童貞である彼にとって、自分の最も秘められた部分が、見知らぬ大人たちの好奇と芸術という名の大義名分の下に晒されるのは、耐え難い屈辱であるはずでした。しかし、不思議なことに、全身を舐めるような熱い視線を浴び続けるうちに、脳の奥が痺れるような、妙な感覚が芽生え始めていました。

「そう、その絶望と羞恥が入り混じった表情……最高だわ、指くん」

先生が指の足元に跪き、筋肉の緊張を確かめるように、その冷たい指先で太ももの内側をなぞりました。指の体はびくんと大きく跳ね、肌には鳥肌が立ちました。教室中の人間が、少年の剥き出しの反応を一つも見逃すまいと、瞬きも忘れて注視しています。

彼はもはや、ただの高校生ではありませんでした。この奇妙な空間において、崇拝されると同時に蹂躙される、物言わぬ「神聖な供物」へと変貌してしまったのです。

静寂が支配する教室に、指の心臓の鼓動だけが早鐘のように響いていました。

一糸纏わぬ姿で晒された羞恥心は、限界を超えたところで奇妙な熱狂へと変質していきました。何十もの「見る」という欲望の視線が、物理的な圧力となって指の全身を愛撫します。逃げ場のない極限の緊張と、大人の女性である先生に触れられた刺激が、十六歳の未熟な体に決定的な反応を引き起こしました。

指の意思とは無関係に、血液が一点へと猛烈な勢いで集まっていきます。 それは震える太ももの間で、見る間に誇張されたようにその形を昂ぶらせ、力強く天を仰ぎました。ドクンドクンと規則正しく、しかし激しく脈打つその様は、白く華奢な少年の体躯において、あまりにも生々しく、暴力的なまでの生命力を主張していました。

「あら……」

誰かが小さく、息を呑む音が聞こえました。 マダムの佐藤さんは、持っていた筆を止めたまま、潤んだ瞳で釘付けになっています。彼女の顔は朱に染まり、隠しきれない興奮がその吐息を荒くさせていました。老人の松田さんに至っては、眼鏡を指で押し上げ、まるで新種の宝石でも発見したかのように、その脈打つ一点を凝視しています。

教室内の空気が、一瞬で濃密なものへと変わりました。それは「芸術」という建前が、剥き出しの「性」の前に屈した瞬間でもありました。

「……素晴らしいわ、指くん。これこそが、命の躍動そのものね」

先生は驚く様子も見せず、むしろ陶酔したような表情でその光景を見つめていました。彼女は再び指に歩み寄ると、熱を帯び、今にも弾けそうに脈打つそこへ、自身の細い指先をゆっくりと近づけていきました。

「恥じることはないわ。君の体は、今、この場所で誰よりも正直で、美しい表現者になっているのよ」

先生の指先が、限界まで張り詰めた先端を掠めるように触れました。その瞬間、指の視界は白く弾け、全身に電流が走ったような衝撃が突き抜けました。生徒たちの鉛筆の音が、再び猛烈な勢いで再開されます。今度は、先ほどまでとは違う、どこか熱病に浮かされたような、激しく、乱れたストロークの音でした。

「はい、そこまで。一度筆を置きましょう」

先生の凛とした声が響き、熱病に浮かされたような教室の空気がわずかに震えました。しかし、生徒たちの視線は依然として、天を突き脈打ち続ける指のそこから離れることはありません。彼らのスケッチブックには、羞恥に悶える少年の姿が、どろりとした執着とともに描き殴られていました。

指がようやく解放されると安堵したのも束の間、先生は彼のそばに膝をつき、耳元で熱い吐息を漏らしました。

「指くん、素晴らしい反応だったわ。でもね、私たちの創作意欲はまだ満たされていないの。……あなたの『命』が、最高潮に達して弾けるその瞬間を、私たちは描き残さなければならないのよ」

指は、その言葉の意味を理解しようとして、あまりの衝撃に目を見開きました。 「そ、それって……ここで、やれってことですか……?」 「そうよ。自分自身の手で、私たちに見せてちょうだい。君が一番気持ちいい場所を、どんな風に愛でているのかをね」

先生の合図とともに、生徒たちが一斉に椅子を動かし、指を取り囲むようにさらに距離を詰めました。最前列の松田さんは、新しいページを捲る手さえ震わせ、マダムの佐藤さんは上気した顔で、指が自らに手を伸ばす瞬間を、瞬きも忘れて待ち構えています。

「さあ、始めて」

逃げ場はありません。指は、何十もの飢えた視線に晒されながら、震える右手をゆっくりと、自身の昂ぶりへと伸ばしました。 指先が熱を持った肌に触れた瞬間、びくんと全身が跳ねます。普段、自室の暗闇でひっそりと行う行為とは何もかもが違いました。明るい蛍光灯の下、大勢の大人たちに一挙手一一投足を観察され、その摩擦の音や、指の動き一つ一つが誰かの鉛筆によって記録されていく。

「あ……っ、ん……」

耐えきれず指の口から小さな声が漏れると、生徒たちの鉛筆の音が、狂ったような速度で再開されました。 「そう、いいわよ。もっと自分の体を感じて。どこを触られたら、そんなに脈打つの?」 先生の執拗な観察と、生徒たちの貪欲な視線。指は羞恥に身を焼き尽くされそうになりながらも、皮肉にもその「見られている」という異常な状況が、十六歳の未熟な肉体をかつてないほど鋭敏にさせていきました。

次第に指の動きは早まり、視界は涙で潤み始めます。彼はもう、自分が何をしているのか、誰に見られているのかさえ定かではなくなり、ただ快楽と羞恥の濁流の中で、自身の手の感触に溺れていくのでした。

指の右手は、すでに自分の意思を離れたかのように激しく動いていました。しかし、限界まで張り詰め、ドクドクと脈打つそれは、いよいよ絶頂の淵にまで達していながら、最後の一線を超えることができません。

何十人もの大人たちに囲まれ、息遣いさえ聞こえるほどの至近距離で、そのすべてを「記録」されているという異常な状況。羞恥心が防波堤となり、快楽の奔流を寸前のところで堰き止めてしまっているのです。指の背中には脂汗が浮かび、喉の奥からは「く、……っ、……あ」と、言葉にならない呻きが漏れ出します。

「……あら、苦しそうね」

その様子を冷徹なまでの美しさで観察していた先生が、ふいに筆を置き、指のそばに跪きました。 「十六歳の君には、この視線の重圧は少し強すぎたかしら?……いいわ、私が少しだけ『手助け』をしてあげる」

先生の白く細い手が、指の震える右手に重なりました。 「ひっ……!」 指の体が大きく跳ねます。自分の手とは違う、大人の女性の柔らかく、しかしどこか冷ややかな手のひらが、彼自身の熱を包み込みました。先生は指の手の上から、力強く、そして巧みなリズムで導き始めました。

「力を抜いて、私に預けて。君はただ、その『瞬間』を私たちに見せてくれればいいのよ」

先生の手が加わったことで、刺激の質が劇的に変わりました。指の頭の中は真っ白になり、これまで経験したことのないような熱い衝撃が下腹部から突き上げてきます。

その様子を間近で見ていた生徒たちの間から、獣のような低い吐息が漏れました。マダムの佐藤さんは、もはや絵を描くことも忘れ、指の顔に浮かぶ絶頂直前の苦悶の表情を、恍惚とした目で見つめています。女子大生は、先生の手と指の肌が擦れ合うその一点を、狂ったようにキャンバスに叩きつけていました。

「あ、あ……っ! もう、だめ、先生……!」

指の腰がガクガクと震え、天を仰ぐ彼の喉仏が大きく上下します。先生の手の動きはさらに速度を上げ、指を逃がさないように強く、激しく、その最奥を刺激し続けました。

「いいわ、全部出し切って。私たちが、それを残さず描き留めてあげるから……!」

その言葉が引き金となりました。指の視界が完全に白濁し、世界から音が消え去ります。

先生の手によって最後の一線を越えた瞬間、指の体は弓なりに弾け、喉の奥から言葉にならない絶叫が漏れました。白い飛沫が少年の未熟な体と、先生の白い指先、そして冷たい床を汚していきます。しかし、すべてを出し切ったはずの指のそれは、賢者タイムの訪れを拒絶するかのように、依然として猛々しく脈打ち、熱を帯びたまま天を向いていました。

十六歳の瑞々しい生命力は、一度の解放では枯れ果てることを知らなかったのです。

「……ふう、すごい生命力だわ。一回では描ききれないほどの熱量ね」

先生が満足げに自分の指先を眺め、ハンカチでゆっくりと汚れを拭っていると、最前列からガタリと椅子を引く音が響きました。

「先生、次は私の番だ。この少年の『真の生命力』を、もっと近くで感じ、引き出さねば、本物の画は完成せん」

名乗り出たのは、分厚い眼鏡の奥に病的なまでの情熱を宿した初老の男性、松田さんでした。彼は震える手でスケッチブックを脇に置くと、獲物を狙う鷹のような足取りで指に近づいてきました。

「ま、松田さん……?」 指はまだ絶頂の余韻で意識が朦朧としていましたが、迫りくる老人の放つ異様な威圧感に、本能的な恐怖を感じて腰を引きました。しかし、松田さんの枯れ枝のような、それでいて力強い手が、指の細い足首をがしりと掴みました。

「逃げることはない。わしはな、この道何十年のベテランだ。君のような『最高の素材』をどう扱えば、もっとも美しい色が引き出せるか、熟知しておる」

松田さんは指の股の間に入り込むと、脂ぎった顔を指の昂ぶりにまで近づけました。老人の荒い鼻息が、敏感になった肌に直接吹きかかり、指は鳥肌が立つのを感じました。

「ほう、近くで見るとさらに見事な。この脈動、この張り……。よしよし、わしがたっぷりと可愛がってやろう。君の本当の叫びを、わしのキャンバスに刻み込んでやるからな」

松田さんの、節くれだった大きな手のひらが、指の熱を包み込みました。先生の柔らかい手とは対照的な、ゴツゴツとした、それでいて執拗なまでの感触。指はあまりの刺激の強さに、再び「あ……あぁっ!」とのけぞりました。

周囲の生徒たちは、この新たな展開にさらに興奮を高め、狂ったように鉛筆を走らせ始めます。先生はそれを止めるどころか、満足げに腕を組み、指が新たな「蹂躙」に染まっていく様子を、特等席で見守っていました。

松田さんの手は、長年筆を握り続けてきた職人特有の、硬く乾いた質感を持っていました。その節くれだった指が、指の敏感すぎる場所を容赦なく締め付け、こすり上げます。先ほど絶頂を迎えたばかりの体には、その粗野な刺激はあまりに強烈で、指の腰は震え、意識は再び熱い渦の中へと飲み込まれていきました。

「……いい、いいぞ。この若々しい肌の弾力、最高だ」

松田さんは恍惚とした表情で呟くと、さらに一歩、指の聖域へと踏み込みました。 彼は指の細い両足を強引に押し広げると、自身の顔を股間の奥深くへと埋めました。指が驚愕で息を止める暇もなく、湿り気を帯びた熱い何かが、固く閉じていたはずの肛門の窄まりに触れました。

松田さんの舌でした。

「ひ、あ、……っ!? なに、を……っ!」

生まれて初めて経験する異質な感触に、指の背筋に電流のような戦慄が走りました。老人の執拗な舌先が、少年の最も秘められた柔らかな粘膜をなぞり、抉るように這い回ります。恥辱と快楽が脳内で混濁し、指の視界はチカチカと火花が散ったように明滅しました。

周囲で見ていた生徒たちは、そのあまりに倒錯した光景に息を呑み、そして次の瞬間、取り憑かれたようにスケッチブックを更新し始めました。マダムの佐藤さんは、もはや隠そうともせずに自身の身体を震わせ、指が老人に蹂躙されていく様を、焼き付けるように見つめています。

「さて……次は、本物の『深み』を教えてやろう」

松田さんは低く濁った声でそう告げると、自身のズボンを脱ぎ捨てました。現れたのは、老いてなお醜悪なまでに勃り上がった、赤黒い凶器のような自身のものでした。

「ま、待って、おじいさん……そこは、だめ……!」

指の弱々しい拒絶など、狂気じみた芸術の情念の前では無力でした。松田さんは指の腰を両手でがっしりと固定し、自身の熱を帯びた先端を、少年の窄まりへと力任せに押し当てました。

ミリ、と肉が裂けるような圧迫感とともに、未知の巨大な存在が指の体内へと侵入を始めます。指は苦痛と、それを上回る圧倒的な「征服感」に、声を失ったまま天を仰ぎ、涙を溢れさせました。

松田さんの腰が唸りを上げて動き出した瞬間、指の口からは、もはや声ともつかない悲鳴が漏れました。老人の枯れ枝のような外見からは想像もつかないほど、その動きは力強く、そして残酷なまでに正確でした。

「ぐ、あ……っ! あ、あ、……っ!」

激しいピストンが繰り返されるたび、指の華奢な身体は木の椅子の上で激しく上下に跳ね、脳震盪を起こしたかのように視界が揺れ動きます。体内の奥深く、今まで誰も触れたことのなかった聖域が、松田さんの醜悪な熱によって無残に蹂躙されていく。指は、自分の内側が無理やり作り替えられていくような恐怖と、逃げ場のない快楽の連鎖に、ただ涙を流してのけぞることしかできませんでした。

その地獄のような、それでいてあまりにも官能的な光景を、先生は指の目の前、わずか数十センチの距離から見つめていました。彼女の手元では、鉛筆が冷徹なまでに正確な音を立てて、少年の崩壊していく様を描き出しています。

「指くん、もっとしっかり目を開けて。自分の体がどうなっているか、ちゃんと見なさい」

先生の氷のように冷たい声が、指の意識を強制的に現実に引き戻しました。

「見て。君が、あんなに汚らしい老人のものを受け入れて、こんなに激しく腰を振っている。……これが君の本性なのよ。純朴な高校生なんていう仮面の下に隠れていた、剥き出しの『性』。最高に醜くて、最高に美しいわ」

「い、いや……っ、ちが、あ、あぁ……っ!」

指が必死に首を振ると、それを見た松田さんは、さらに深く、激しく腰を叩きつけました。 「否定するな! 君の体は、こんなにもわしのものを欲しがっておるではないか!」 老人の濁った汗が指の胸元に滴り落ち、混じり合う。そのあまりの生々しさに、指の正気は音を立てて崩れていきました。

「そうよ、指くん。そのまま壊れてしまいなさい。君が壊れれば壊れるほど、私の絵は完成に近づくの。君の苦痛も、羞恥も、すべて私のための『色』なのよ」

先生の微笑みは、もはや悪魔のそれでした。 生徒たちの間からは、この極限のデッサンを前にして、すすり泣くような興奮の声と、狂ったように紙を削る音が止むことなく響き続けています。指は、自分という存在が「絵のモデル」という名目で、魂の底まで搾り取られていく絶望の中に、抗いがたい悦びを見出し始めていました。

松田さんの動きは、いよいよ理性をかなぐり捨てた獣のような荒々しさに達しました。老人の枯れた肌が、指の瑞々しい太ももと激しく打ち付けられる湿った音が、静かな教室に執拗に響き渡ります。

「ああ、くる……くるぞ! わしの、わしのすべてを貴様に叩き込んでやる!」

松田さんが最後の一突きを深く見舞った瞬間、彼の全身が激しく硬直しました。それと同時に、指の体内へと熱い奔流が溢れ出し、指の意識は真っ白な閃光に包まれました。 「ひ、あぁぁぁああっ!!」 指もまた、極限まで張り詰めていた自身のそれを、触れられることもなく空へと弾けさせました。二度目の絶頂は、一度目とは比較にならないほどの衝撃となって少年の身体を貫き、彼は白目を剥いてガクガクと痙攣しました。

しかし、その究極の「作品」が完成した瞬間、教室の均衡はついに崩壊しました。

「……もう、見ていられないわ!」

最初に動いたのは、マダムの佐藤さんでした。彼女はスケッチブックを床に投げ捨てると、上気した顔で指の元へと駆け寄りました。 「先生、ずるいわ! 松田さんだけなんて! この子のこの肌、この震え……私も直接触れて描きたい、いいえ、感じたいのよ!」

それを合図に、他の生徒たちも一斉に席を立ちました。 「そうだ! モデルは全員のものだろう!」 「君のその涙を、私の指で拭わせてくれ!」 美大志望の女子大生までもが、瞳に異様な光を宿して指の足元に縋り付きました。十数人の大人たちが、一糸纏わぬ姿で力なく横たわる少年に向かって、津波のように押し寄せます。

指は、松田さんの重みに押し潰されたまま、自分に向かって伸びてくる無数の手を見つめることしかできませんでした。頬を撫でる手、胸を愛撫する指、足首を掴む掌。

「あらあら、みんな我慢の限界ね」

先生は、その狂乱の光景をキャンバス越しに眺め、満足げに筆を走らせ続けました。 「いいわよ、みんな。好きになさい。指くんは今日、私たちのための共有財産なんだから。……さあ、指くん。本当の地獄……いえ、本当の『芸術』は、ここから始まるのよ」

指の視界は、押し寄せる大人たちの影に覆われ、次第に暗くなっていきました。聞こえるのは、狂ったように走り続ける鉛筆の音と、自分を貪ろうとする大人たちの荒い吐息、そして、遠のいていく自分の意識の断片だけでした。

押し寄せる大人たちの熱気と、肌に絡みつく無数の手の感触。指は、自分が人間ではなく、粘土細工のようにこねくり回される「物体」になったような感覚に陥っていました。

ある者は彼の柔らかな耳元で卑猥な言葉を囁き、ある者はその白い腹部に荒い舌を這わせ、またある者は指の震える指先を一本ずつ熱心に観察しながら、恍惚とした表情で自身のキャンバスを汚していく。松田さんの重厚な一撃によって開かれた少年の身体は、今や教室中の欲望を受け入れるための、底なしの器と化していました。

「あ、あぁ……、もう、……やめて……」

弱々しい抵抗は、かえって大人たちのサディスティックな創作意欲を刺激するだけでした。 「動かないで、指くん。今、君の腰のラインが最高に歪んでいて、素晴らしい『絶望』を描けているんだから」 誰かが冷たく笑いながら、彼の腰をさらに強く床に押し付けました。

どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。 教室に響いていた荒い吐息と、狂ったような鉛筆の音、そして指の断続的な喘ぎ声は、潮が引くように次第に静まっていきました。

「……はい、そこまで。皆さん、素晴らしい作品が描けたようね」

先生の凛とした声が、狂乱の終わりを告げました。 指が重い瞼を開けると、そこには満足げな表情で自分の作品を見つめる生徒たちの姿がありました。つい数分前まで自分を貪っていた人々は、何事もなかったかのように筆を洗い、パレットを片付けています。その豹変ぶりに、指はひどい眩暈を覚えました。

指は、冷たい床の上に一糸纏わぬ姿で、無残に投げ出されていました。全身は大人たちの汗と、自分のもの、そして松田さんのもので汚れ、ひどい脱力感で指一本動かすこともできません。 「お疲れ様、指くん。はい、これが今日の『特別手当』よ」

先生が歩み寄り、横たわったままの指の胸元に、数枚の壱万円札をひらひらと落としました。お札の冷たさが、火照った肌にひどく残酷に感じられました。

「明日もまた、同じ時間に来てくれるかしら? 皆、あなたの続きを描きたがっているの」

先生は、まるで天気のいい日の散歩にでも誘うような気軽さで微笑み、指の頬を優しく撫でました。その手は、公園で出会った時と同じ「優しいおばさん」の温度に戻っていましたが、指にはそれが何よりも恐ろしく感じられました。

生徒たちが一人、また一人と「さようなら、モデルさん」「また明日ね」と声をかけて去っていき、夕闇の迫る教室には、汚れ果てた少年と、完成したばかりの「彼」をモデルにした数々の歪な絵画だけが残されました。

指は、散らばった札束を震える手でかき集めました。 十六歳の少年にとって、それはあまりに高額すぎる報酬であり、同時に、自分の魂を切り売りした代償でもありました。彼はよろよろと立ち上がり、服を着直しながら、自分の内側に消えない「印」を刻まれてしまったことを確信していました。

公園のベンチでボケーとしていたあの「指」には、もう二度と戻れない。 彼は重い足取りで、夕闇に溶けゆく街へと踏み出していきました。

昨夜の出来事は、すべて悪い夢だったのではないか。 指は、重い体を引きずるようにして、再び公園の近くにある古びた雑居ビルの前に立っていました。

体中の節々が痛み、昨夜大人たちに触れられた場所が、いまだに熱を持っているような錯覚に陥ります。ポケットの中には、昨日渡された数枚の壱万円札が、卑屈な重みを持って収まっていました。一度その味を知ってしまった体は、恐怖を感じながらも、抗いがたい期待に震えていました。

ギィ、と重い鉄の扉を開けると、そこには昨日と同じ、油絵具の匂いと静寂がありました。

「あら、いらっしゃい。来るのを信じていたわ」

イーゼルの前に立っていた先生が、振り返って微笑みました。その隣には、すでに来ていた松田さんが、昨日と同じ分厚い眼鏡の奥で、粘りつくような視線を指に突き立てています。

「さあ、指くん。準備はいいかしら? 今日は昨日よりも、もっと深い『赤』をキャンバスに落としたいの。だから……」

先生は指の元へ歩み寄ると、震える彼の制服の肩に手を置きました。

「今日は、最初からすべて脱いでちょうだい。その椅子に横たわって、私たちが望むままのポーズを……ね?」

指は何も言わず、ただ人形のように頷きました。 彼は自らネクタイに手をかけ、一歩ずつ、日常を脱ぎ捨てていきます。 昨日の羞恥は、今や奇妙な恍惚へと変わり始めていました。見つめられ、暴かれ、記録されること。それが今の彼にとって唯一の、自分が生きている証のように感じられたのです。

窓の外では夕闇が迫り、教室の蛍光灯がチカチカと音を立てて灯りました。 「いいわ……完璧よ、指くん」

先生の合図とともに、一斉に鉛筆が紙を走る音が鳴り響きました。 それは、少年の魂を削り取る、終わりのないデッサン会の始まりでした。

                      完