『人妻と僕のドライブ 🔞』
2026/01/15(木)十九歳の指(ゆび)にとって、手にしたばかりの運転免許証は単なるプラスチックのカードではありませんでした。それは、これまで自分を縛り付けてきた「子供」という境界線を踏み越えるための、たった一枚の通行許可証に見えました。
彼は大学に入ってからというもの、講義とバイトの往復を繰り返すだけの、色のない日々を過ごしていました。周囲がサークル活動や恋愛に興じる中、指はいつも一歩引いた場所から、何者にもなれない自分を冷めた目で眺めていました。そんな鬱屈とした日常を打ち破るために、彼は貯金を叩いてレンタカーを予約しました。
「今日、俺はどこまでも行ける」
ハンドルを握る指の先は、緊張で少し震えていました。初めて座る運転席のシートは想像以上に硬く、鼻をつく新車の匂いが、これから始まる非日常を強調しています。彼が求めていたのは、目的地のある旅ではありません。親の干渉も、大学の退屈な人間関係も届かない、時速六十キロメートルで流れる孤独な自由そのものでした。
国道に出れば、もう後戻りはできません。初心者の自分を追い抜いていく大型トラックの風圧に肝を冷やしながらも、アクセルを踏み込む足には、かつてないほどの確かな力がこもっていました。助手席に誰もいないことが、今の彼にはむしろ誇らしく感じられました。自分一人の意志で、この鉄の塊を操り、誰も知らない場所へ突き進んでいく。その高揚感は、まだ見ぬ世界への期待と、少しばかりの性急な焦りを孕んでいました。
今夜、この道の先で何かが起きる。いや、何かを起こさなければならない。そんな根拠のない予感に突き動かされ、指は初心者マークの貼られた車を、夜の帳が降り始めた国道へと滑り込ませました。
オレンジ色のナトリウム灯が点々と続く国道を、指はひたすらに走らせていました。スピードに乗るにつれて、車内の静寂はかえって鋭さを増し、エンジンの振動がシートを通じてダイレクトに彼の股間に伝わってきます。ふと、前方の路肩に、夜の闇にそぐわない奇妙なシルエットが浮かび上がりました。
街灯の光に照らし出されたのは、一本の細い腕でした。その指先が、流れる景色を止めるように力強く、かつ優雅に夜の空を指差しています。指は反射的にブレーキを踏みました。タイヤが路面を鳴らし、初心者らしいぎこちない停車と共に、助手席の窓の向こうにその女性が現れました。
彼女は、少し使い古したような革のジャケットを羽織り、短めのスカートから伸びる白い足に、夜露を含んだような艶を纏っていました。歳の頃は二十代の半ば、あるいは後半でしょうか。指が慌ててパワーウィンドウのスイッチを探し、窓を下げると、夜の冷たい空気と一緒に、甘く、少しだけ煙草の混じったような大人の女の匂いが車内に流れ込んできました。
「こんばんは。いい車に乗ってるね、お兄さん」
彼女は、窓枠に肘をついて車内を覗き込みました。その瞳は、指の緊張を見透かすように悪戯っぽく細められています。指は喉の奥がカラカラに乾くのを感じました。答えるべき言葉が見つからず、ただ「あ、はい」と間抜けな返事をするのが精一杯でした。彼女は指の視線が自分の胸元や、剥き出しの太ももを彷徨っていることに気づいているのか、いないのか、ふっと艶やかな唇を綻ばせました。
「この先、行けるところまででいいんだけど。乗せてってくれないかな?」
その声には、拒絶を許さないような不思議な響きがありました。十九歳の童貞大学生にとって、それは未知の世界からの招待状に他なりませんでした。指は、自分の心臓の音がエンジン音よりも大きく響いているのではないかと不安になりながら、震える手で助手席のドアロックを解除しました。ガチャリ、という硬い音が、日常との決別の合図のように夜の国道に響き渡りました。
助手席のドアが重々しい音を立てて閉まると、車内は再び密室へと変わりました。しかし、さっきまでの孤独な静けさとは質が違います。彼女の体温と、甘くけだるい香りが一瞬にして狭い空間を支配し、指は息をするタイミングさえ見失いそうになりました。ウィンカーを出し、震える足でアクセルを踏み込んで本線へ合流する間、彼女は何も言わず、ただ頬杖をついて流れる夜景を眺めていました。
タイヤの回転が安定し、巡航速度に乗った頃、ふいに彼女が口を開きました。
「ハンドル、握りすぎじゃない? そんなに力んでたら、肩凝っちゃうよ」
からかうような、それでいてどこか慈悲を含んだ声でした。指は慌ててグリップを緩めようとしましたが、手のひらはすでに冷や汗で湿っていました。視線を前方から外せないまま、彼は乾いた声で弁明しました。
「あ、すみません……実は、今日免許取ったばかりで。これが初めてのドライブなんです」
それを聞いた彼女は、少し驚いたように目を見開き、やがて喉の奥でくつくつと楽しそうに笑いました。その笑い声は、緊張で張り詰めていた車内の空気を優しく揺らしました。
「嘘、ほんとに? 記念すべき初ドライブってわけだ。じゃあ私、君の助手席に乗る初めての女の人になっちゃったね」
「初めての女」という言葉の響きに、指の心臓が大きく跳ねました。運転の話をしているだけだと分かっていても、十九歳の妄想は勝手にその言葉を別の意味へと変換してしまいます。彼女はシートの背もたれを少し倒し、リラックスした様子で天井を見上げました。
「で、どこ行くつもりだったの? 免許取り立ての男の子が、こんな時間に一人で」
「……特に、決めてないんです。ただ、どこか遠くへ行きたくて」
「ふうん。あてなしか。いいね、そういうの嫌いじゃないよ」
彼女はそう言うと、バッグから缶コーヒーを取り出し、プルタブをプシュッと開けました。一口飲んでから、サイドブレーキのあたりに無造作に置かれた指のスマホに視線をやります。
「名前、なんていうの?」
「指です。……身体の、指」
「変な名前。でも、覚えやすいね。私はレイコ。よろしくね、ユビくん」
レイコと名乗った彼女は、指の方へ身体を傾けると、彼の横顔を覗き込むようにして囁きました。
「ねえ、ユビくん。あてもないならさ、海まで行かない? 私、ちょっと夜風に当たりたい気分なんだ」
それは提案というより、断ることのできない甘い命令のように聞こえました。指は無言で頷き、震える手でナビの目的地を海沿いの公園へとセットしました。行き先が決まったことで、物語はいよいよ核心へと近づいていきます。
レイコは飲み干した缶コーヒーをドリンクホルダーに置くと、それまで隠すように膝の上で組んでいた指先を、わざとらしくダッシュボードの淡い明かりにかざしました。対向車のヘッドライトが一瞬だけ車内を薙ぎ払ったとき、彼女の左手の薬指で、プラチナのリングが冷ややかな光を放ちました。指(ゆび)はその煌めきを見た瞬間、ハンドルを握る手が強張るのを感じました。
「ねえ、これ見える? 私ね、実は新婚さんなの」
その告白は、指の胸の中に膨らみかけていた淡い期待風船を、無慈悲な針で突き刺すような威力を持っていました。驚きで言葉を失う彼を横目に、レイコは自嘲気味に鼻を鳴らし、リングをつけた手を光にかざしたまま、まるで他人の話をするように語り始めました。
「式を挙げたのは、ほんの先月。まだハネムーンの熱も冷めてないはずなんだけどね。さっき、夫と派手に喧嘩しちゃったの」
喧嘩の理由は、取るに足らない些細なことだったといいます。夕食の味付けがどうとか、脱ぎ捨てた靴下がどうとか、そんな日常の綻びが積み重なり、ふとした瞬間に爆発したのです。しかし、彼女が本当に許せなかったのは、言い争いの最中に夫が放った「誰のおかげで飯が食えてると思ってるんだ」という、ありふれた、しかし決定的な一言でした。
「その瞬間、なんか全部どうでもよくなっちゃってさ。財布も持たずに家を飛び出したの。スマホと、この体一つで。夫が追いかけてくるかなって少し期待したけど、あいつ、テレビのボリューム上げただけだった」
彼女の声は震えてはいませんでしたが、その奥には行き場のない怒りと、深い孤独が滲んでいました。
「だから、試してみたくなったの。私が道端に立ってたら、誰か拾ってくれるのかなって。夫以外の男の人は、私をどう扱うのかなって」
彼女はそこで言葉を切ると、意味ありげな視線を指に向けました。その瞳は、十九歳の彼には受け止めきれないほど深く、濡れていました。新婚でありながら、夫との衝突によって夜の国道に放り出された人妻。その事実は、彼女を単なる「年上の女性」から、触れてはいけない「禁断の存在」へと変貌させました。
「こんなおばさんの愚痴、退屈だよね」
そう言って彼女は寂しそうに微笑みましたが、指の頭の中は混乱と興奮でぐちゃぐちゃでした。人の妻であるという背徳感が、かえって彼女の存在を強烈に意識させ、初心者マークの車内は、先ほどまでとは比べものにならないほど濃密な緊張感に満たされていきました。
ハンドルを握る緊張と、隣にいる人妻という非日常的な存在に神経をすり減らしていたせいか、時間の感覚は驚くほど曖昧になっていました。会話が途切れたり、また始まったりを繰り返すうちに、気がつけばダッシュボードの時計は夜の八時を回っています。
ふと、指(ゆび)の腹の虫が、間の抜けた音を立てて鳴りました。静まり返った車内に「グゥ〜」という音が響き渡り、彼は羞恥心で耳まで真っ赤になりました。
「あはは、可愛い音。そういえば、お腹空いたね」
レイコは楽しそうに笑いましたが、すぐに「あ」と小さく声を漏らし、申し訳なさそうに眉を寄せました。
「ごめんね、私、財布も持たずに飛び出してきちゃったんだった。……ご飯、どうしよっか」
「あ、大丈夫です。僕が……その、出しますから。そんな高いところには行けませんけど」
指は精一杯の見栄を張ってそう言いました。大学生の財布事情は厳しいですが、このシチュエーションで彼女にひもじい思いをさせるわけにはいきません。彼は国道沿いに見えた、大きな看板のコンビニエンスストアにハンドルを切りました。
駐車場に車を停め、二人分の弁当とお茶、そしてレジ横のホットスナック(からあげクン的なもの)を買い込みました。店内の明るい蛍光灯の下では、彼女の結婚指輪がいっそう生々しく光り、指はレジでお会計をする際、まるで悪いことをしているような奇妙な背徳感を覚えました。
車に戻ると、二人はエンジンをかけたままの暖かい車内で、プラスチックの容器を広げました。温められた弁当の匂いが、レイコの香水の香りと混ざり合い、生活感があるような、ないような不思議な空気が漂います。
「いただきまーす。……ん、美味しい! なんか、こういうの久しぶりかも」
レイコは助手席であぐらをかくように座り、箸を動かしました。家を飛び出してきた人妻と、童貞大学生が、コンビニ弁当をつついている。側から見れば奇妙な光景ですが、指にとっては、これまでの人生で食べたどんなディナーよりも特別でした。
「ねえ、ユビくん。これあげる」
彼女は唐揚げを一つ箸でつまむと、指の口元に差し出しました。「あーん」とは言いませんでしたが、その仕草は明らかにそれを求めています。指は心臓が破裂しそうになりながら、恐る恐る口を開け、彼女の箸から直接唐揚げを受け取りました。
「……どう? 美味しい?」
「は、はい。すごく」
咀嚼する音さえ聞かれるのが恥ずかしくて、指は慌ててお茶で流し込みました。お腹が満たされるにつれて、車内の空気はより親密で、まったりとしたものに変わっていきます。
レイコの手から直接差し出された唐揚げを飲み込んだ瞬間、指(ゆび)の口の中には脂の旨味と一緒に、彼女という存在が強烈に流れ込んできました。箸の先に彼女の唇が触れていたかもしれない。そんな想像が頭をかすめただけで、指の指先は軽く痺れ、ハンドルを握る力さえうまく入りません。
「なんだか、本当のカップルみたいだね」
レイコは食べ終えた弁当の空き殻をまとめながら、わざとらしく小首を傾げて指を覗き込みました。彼女の体温が、わずかに狭まった距離を超えて伝わってきます。指は赤くなった顔を隠すように、残りのペットボトルのお茶を乱暴に煽りました。
「……僕なんかと、そんな。レイコさんは、旦那さんといつもこうして……」
「あいつの話は、もういいよ。今は、君とここにいるんだから」
レイコはそう言って、細い指先で指の耳たぶを軽く弾きました。不意を突かれた刺激に、指の肩が跳ねます。彼女の瞳は先ほどよりもさらに艶を帯び、車内の結露した窓ガラスが外の世界を遮断して、二人だけの濃密な空間を作り出していました。
彼女はそのまま、助手席のシートをさらに深く倒しました。リクライニングが軋む音が、静まり返った駐車場にやけに大きく響きます。彼女の身体が水平に近くなり、革ジャケットの隙間から覗く首筋の白さが、指の視線を吸い寄せました。
「ねえ、ユビくん。お腹がいっぱいになったら、なんだか眠くなってきちゃった。……少しだけ、ここで休んでいかない?」
そう言うと、彼女は指に向かって手を伸ばし、彼のジャケットの裾をそっと掴みました。
「エンジン、切って。外の音が聞こえないくらい、静かなところで、君のことがもっと知りたいな」
レイコの誘い文句は、もはやヒッチハイカーのそれではありませんでした。指は、自分が引いた「レンタカーを借りてドライブする」という最初の一手が、とんでもない局面を招き寄せたことを自覚しました。彼は震える手でキーを回し、エンジンを止めました。
唸りを上げていた機械音が消えると、車内には二人の呼吸音だけが残りました。指は暗闇の中で、隣で横たわる彼女の鼓動さえ聞こえてきそうなほど、全神経が研ぎ澄まされるのを感じていました。
エンジンが止まった車内は、途端に深海のような静寂に包まれました。冷え始めた空気を追い払うように、レイコは「寒いね」と小さく呟き、自分の体を抱くように腕を組みました。しかし、その視線はずっと、硬直したままの指(ゆび)の横顔に固定されています。
「こっち、おいでよ。そんなところに一人で固まってないで」
彼女の声は、夜の闇に溶け出す蜂蜜のように甘く、抗いがたい力を持っていました。指は促されるまま、運転席と助手席を隔てるコンソールボックスをまたぐようにして、彼女の隣へと体を滑らせました。狭い空間で二人の肩が触れ合い、彼女の肌の熱が服越しに伝わってきます。
レイコはふふっと笑うと、指の強張った右手を、自分の両手でそっと包み込みました。彼女の手は驚くほど柔らかく、そして温かかった。
「指、っていう名前。なんだか不思議だと思っていたけど……綺麗な手をしてるんだね。白くて、少し長くて。女の子に触れたこと、あんまりないでしょ?」
図星を突かれた指は、心臓の鼓動が耳の奥で鐘のように鳴り響くのを感じました。「あ、いや、その……」と口ごもる彼の言葉を遮るように、レイコはその「指」を一本ずつ、自分の唇の方へと手繰り寄せました。
彼女は、指のひとさし指の先を、まるで甘い菓子でも味わうように唇でそっと挟みました。熱く湿った感触が指先から脳へと突き抜け、指の背筋に激しい震えが走ります。
「旦那さんはね、こんなに優しく触れてくれないの。いつも自分のことばっかり。……ねえ、ユビくん。君のその『指』で、私のこと、もっと確かめてみてくれない?」
彼女はそう言うと、指の手を自分の首筋から、鎖骨のラインへと滑らせていきました。革ジャケットの下で脈打つ彼女の鼓動が、指の指先を通じて彼自身の体へと同期していきます。レイコの吐息が彼の耳元にかかり、鼻先が触れ合うほどの距離で、彼女は濡れた瞳をじっと見つめてきました。
「十九歳の初めてを、私にちょうだい。代わりに、君が一生忘れられない夜を教えてあげる」
差し出された誘惑は、あまりに重く、そして甘美でした。指はもはや、自分が免許を取り立ての大学生であることも、ここが国道沿いの駐車場であることも、すべてを忘れ去ろうとしていました。彼の視界には、目の前で赤く色づく彼女の唇と、わずかに乱れた襟元しか映っていませんでした。
レイコは指(ゆび)の手を自分の胸元に押し当てたまま、堰を切ったように言葉を漏らし始めました。その告白は、先ほどまでの甘い誘惑とは裏腹に、生々しい飢えと、深い失望が混じり合ったものでした。
「私ね、自分でも持て余すくらい、本当は性欲が強いの。結婚する前はね、夢を見てたんだよ。結婚したら、夜な夜な壊れるまで抱き合って、ああしたりこうしたり、毎日飽きるほど愛されるものだって信じてた。それが普通だと思ってた」
彼女の指先が、指の掌をなぞる力が強まります。その力強さは、彼女がこれまでどれほどの欲求を押し殺してきたかを物語っているようでした。
「でも、あいつは……旦那は、ただのおっさんだった。性に対しても淡泊で、義務みたいにこなすだけ。自分が射精してスッキリしたら、それで終わり。私の体がまだ熱くて、もっと触れてほしいって叫んでいるのに、あいつは背中を向けてさっさとイビキをかき始めるのよ」
レイコは自嘲気味に笑い、指の目を真っ直ぐに見つめました。その瞳の奥には、燃えるような情動が渦巻いています。
「ねえ、想像できる? 隣に愛しているはずの人がいるのに、指一本触れてもらえない夜の孤独。砂漠で喉がカラカラなのに、目の前で水を捨てられるような絶望感。私はただの置物じゃない、血の通った女なのに」
彼女は指の手をさらに奥へと引き込みました。服の布地越しに、彼女の熱い体温と、高鳴る鼓動がダイレクトに伝わってきます。
「ユビくん、君は若い。まだ何にも染まっていないし、きっと体中がエネルギーで溢れてるんでしょ? あいつみたいな枯れた男じゃなくて、君みたいな真っ直ぐな子に、私の全部をぐちゃぐちゃにしてほしいの。今夜は、私が満足するまで、絶対に離さないから」
その言葉は、十九歳の彼にはあまりに重く、そして狂おしいほど刺激的でした。レイコの渇きを知ってしまったことで、指の心の中にあった「恐怖」は消え去り、代わりに「彼女を救いたい」という歪んだ正義感と、それ以上に強烈な、男としての剥き出しの欲求が立ち上がりました。
指はもう、自分を抑えることができませんでした。彼は自由になった左手で、レイコの熱い頬を包み込みました。
レイコの声は、これまでの冗談めかした調子を完全に失っていました。指(ゆび)のジャケットを掴む彼女の手は小さく震えていて、それは単なる性的な興奮からではなく、日常を完全に踏み外そうとする女の切実な覚悟のようにも見えました。
「ねえ、ユビくん。お金は必ず返すから……お願い、ラブホテルに行かない?」
その言葉に、指は一瞬、息が止まるかと思いました。コンビニ弁当を食べていた車内という、どこか「放課後の延長」のような空気は一変しました。彼女は本気だ。この十九歳の、免許を取ったばかりの頼りない自分を「男」として選び、夜の深淵へ連れて行こうとしている。
「あ、でも、お金なんて……僕、少しは持ってますし。返さなくていいです。それに……」
指がそこまで言いかけると、レイコは彼の唇を人差し指でそっと塞ぎました。
「いいの。これは私のわがままだから。あいつの家でも、あいつに買ってもらったこの車でもない、誰にも邪魔されない場所で……君と二人きりになりたいの」
指は、彼女の瞳の中に映る、期待と不安が入り混じった自分の顔を見つめました。これまで童貞であることに引け目を感じ、女性から選ばれることなんて一生ないと思い込んでいた彼にとって、レイコの願いはあまりにも残酷で、そして何よりも美しい誘惑でした。
指は震える手でキーを回しました。再びエンジンが目覚め、低い唸り声を上げます。先ほどまで恐怖の対象でしかなかった夜の国道が、今は彼らを祝う滑走路のように見えました。
「……わかりました。行きましょう」
指はギアをドライブに入れ、駐車場を滑り出しました。サイドミラーに映る、自分たちがさっきまでいた場所は、あっという間に闇に消えていきました。
国道沿いには、派手なネオンが並ぶ一角があるのを、さっき走ってきた時に見ていました。指はハンドルを握る手に力を込め、アクセルを踏み込みました。隣でシートを深く倒したレイコは、窓の外を流れるネオンの光を浴びながら、どこか遠くを見つめていました。その横顔は、悲しいほどに綺麗でした。
国道沿いに、ひときわ派手なピンクや紫のネオンを放つ建物が見えてきました。指(ゆび)はその光を目にした瞬間、喉の奥がせり上がるような強烈な動揺に襲われました。心臓の鼓動はもはやリズムを失い、激しく胸の壁を叩いています。彼はウインカーを出す指先が震え、カチカチという作動音が、自分の罪深さを告発する鐘の音のように聞こえてなりませんでした。
入口の遮光幕を車で潜り抜けるとき、指は思わずハンドルを強く握りしめました。そこは、これまでの十九年の人生で一度も足を踏み入れたことのない、大人の入り口でした。駐車場には数台の車が停まっており、そのどれもが自分たちと同じように、誰にも言えない秘密を抱えているように見えます。指は、慣れないバック駐車に何度も切り返しを必要としました。レイコはその様子を黙って見守っていましたが、彼がようやくエンジンを切ったとき、彼女はそっと指の膝に手を置き、優しく微笑みました。
「大丈夫。落ち着いて」
その一言が、指のわずかな理性の堤防を崩しました。車を降り、二人はパネルに部屋の写真が並ぶ入り口へと向かいました。どのボタンを押せばいいのか、システムすら分からない指の代わりに、レイコが迷いのない手つきで、一番奥の落ち着いた内装の部屋を選びました。
エレベーターの中、鏡に映った自分たちの姿。疲れ切った顔の美しい人妻と、顔を真っ赤にして視線を泳がせる初心者の大学生。その対比があまりに滑稽で、同時にどうしようもなくエロティックでした。
部屋のドアを開けた瞬間、独特の芳香剤と空調の乾いた匂いが鼻を突きました。自動でロックがかかる「ガチャン」という重い音が、現実世界との繋がりを完全に断ち切った合図でした。
広すぎるベッド、落とされた照明、そして壁一面の大きな鏡。指は部屋の中央に立ち尽くしたまま、鞄のストラップを握りしめていました。決心はしたはずなのに、いざその時が迫ると、自分がひどく無力で幼い存在に感じられて仕方がありません。
「ユビくん、そんなに固まらないで。こっちに来て?」
レイコは革ジャケットを脱ぎ、ベッドの端に腰を下ろしました。薄暗い照明の下で、彼女の肩のラインが露わになり、新婚の証である指輪が、枕元のライトを反射して妖しく光っています。
「怖い?……それとも、楽しみ?」
彼女は指を招き寄せるように、潤んだ瞳で彼を見上げました。指は唾を飲み込み、一歩、また一歩と、ふかふかの絨毯を踏みしめて彼女の方へと歩き出しました。頭の中は真っ白でしたが、指先だけは、これから触れるであろう彼女の熱を求めて、脈打つように震えていました。
レイコは「先にお風呂、入っちゃおうか」と、まるで長年連れ添った恋人に接するような自然な口調で言い、バスルームへ向かいました。扉の向こうから、激しくお湯が注がれる音が響き始め、部屋の静寂をかき消していきます。その音が、指(ゆび)にとっては処刑台へ向かうカウントダウンのようでもあり、同時に理性を溶かす心地よいノイズのようでもありました。
お湯がたまるまでの数分間、彼女は再び指の目の前に立ちました。
「ねえ、こっち向いて」
そう囁くと、彼女は指の首筋に両手を回し、自分の方へと引き寄せました。指が驚いて目を見開いた瞬間、ふわりと柔らかい感触が唇に触れました。それは、鳥の羽が触れるような、淡くて短いキスでした。しかし、次の瞬間には、彼女の舌が指の唇をなぞり、深く、絡みつくようなキスへと変わっていきました。鼻先をくすぐる彼女の香りと、口内に広がる大人の女性の味。指はあまりの刺激に、膝の力が抜けそうになるのを必死に堪えました。
レイコの手が、指の着ている安物のジャケットのファスナーに伸びました。
「これ、脱がせていい?」
彼女の問いに、指は声が出せず、ただ小さく頷くことしかできません。彼女は慣れた手つきでジッパーを下ろし、肩から滑り落ちるように上着を脱がせました。続いてシャツのボタンが一つ、また一つと外されていくたび、指は自分の内面まで曝け出されていくような、言いようのない高揚と恐怖を覚えました。
指の肌が冷たい空気に触れると、彼は小さく身震いしました。そんな彼の反応を愛おしむように、レイコは指の胸元に自分の頬を寄せました。
「ユビくんの心臓、壊れちゃいそうなくらい速いね」
彼女はそう言いながら、今度は自分の革ジャケットを肩から落とし、スカートのフックに手をかけました。衣服が床に落ちる乾いた音だけが、部屋に響きます。鏡越しに映る彼女の肢体は、十九歳の指がこれまで画面の中でしか見たことのないものとは比較にならないほど、生々しく、圧倒的な説得力を持ってそこに存在していました。
新婚の夫には向けられなかったはずの、激しくも切ない渇望を瞳に宿し、彼女は下着だけになった姿で指を抱きしめました。
「お湯、たまったみたいだよ」
蒸気で白く霞み始めたバスルームへと誘う彼女の指先は、指の震える手をしっかりと握りしめていました。
湯気の立ち込めるバスルームは、湿った熱気と石鹸の香りで満たされていました。大きなバスタブに溢れんばかりに張られたお湯に、二人は身を寄せ合うようにして浸かりました。お湯の熱さが、指(ゆび)の強張った筋肉をゆっくりと解きほぐしていく一方で、水面下で触れ合う彼女の太ももの滑らかさが、彼の理性を限界まで追い詰めていきます。
「ね、洗ってあげる」
レイコは泡立てたタオルを手に取ると、指の背中に回りました。温かい泡の感触と、彼女の柔らかな指先が肌の上を滑るたび、指は声にならない吐息を漏らしました。十九年間、誰にも触れられたことのない自分の体が、熟練した彼女の手によって「男」へと作り替えられていくような、不思議な感覚に陥ります。
「次は、君の番だよ。……優しくしてね」
レイコが前を向いて座り、指にタオルを託しました。目の前には、お湯に濡れて真珠のような光沢を放つ彼女の背中と、うなじにかかる濡れた髪。指は震える手でタオルを動かしました。肩から背筋、そして腰のくびれへ。新婚の夫が粗末に扱ってきたというその肌を慈しむように、彼は夢中で手を動かしました。
「……あ。ユビくん、上手……」
レイコの小さな喘ぎが、タイルの壁に反響して耳元に届きます。その声に煽られるように、指の欲望は制御不能なほどに膨れ上がっていきました。彼はいつの間にかタオルを離し、石鹸の泡がついたままの自分の手で、直接彼女の肩に触れました。
お湯の中で、彼女がゆっくりと振り返ります。濡れた睫毛に縁取られた瞳が、指をじっと見つめていました。彼女は指の首に腕を絡め、耳元で熱く、湿った吐息を吐き出しました。
「もう、我慢しなくていいんだよ。君の初めてを、全部私にぶつけて」
浮力によって、彼女の柔らかな身体が指の胸板にぴたりと吸い付きました。肌と肌が密着し、お湯の熱さか、それとも互いの情熱か、もはや区別のつかない熱が二人を包み込みます。
指は、もう自分が「童貞の大学生」であることを忘れていました。彼はレイコの腰を力強く引き寄せ、湯船の中で彼女の唇を奪いました。先ほどよりも深く、貪るようなキス。それは、これから始まる本番への、激しい序曲でした。
湯船から上がった後、部屋のエアコンが肌を冷やし、指(ゆび)の現実は一気に引き戻されました。脱衣所の大きな鏡に映る自分たちの姿を見て、彼は思わず視線を落とし、腕で自分の体を隠すように抱きしめてしまいました。
十九年間、誰にも見せたことのない、未熟な自分。筋肉質でもなければ、洗練されてもいない。その真っさらな裸体を、大人の、しかも他人の妻であるレイコの前に晒すことが、耐えがたいほどの羞恥心となって彼を襲ったのです。
「……ユビくん、そんなに隠さないで」
レイコは濡れた髪を拭いもせず、バスタオル一枚を巻いた姿で指に歩み寄りました。彼女は指の震える腕を優しく、しかし拒絶を許さない力で解いていきます。
「恥ずかしいのは、君がそれだけ純粋だからだよね。でも、今の君はすごく綺麗だよ」
彼女の熱い指先が、指の胸元から下腹部へとゆっくりと滑り降りました。指は思わず声を漏らし、体を強張らせました。女性の指が、自分の最も秘められた場所に触れようとしている。その恐怖と期待が混ざり合った感情で、指の心臓は破裂しそうなほど脈打ちました。
やがて、彼女の手が、熱く脈打つ彼の「核心」に触れました。
「……っ!」
指の体は電流が走ったように跳ね上がりました。軽く指先で転がされ、包み込まれるような柔らかな愛撫。ただそれだけの刺激が、童貞の彼にとっては未体験の爆発的な快楽でした。彼のあそこは、本人の意思とは裏腹に、はち切れんばかりの硬さでビンビンに勃起し、レイコの手の中で誇らしげに、そして無防備にその存在を主張しました。
「あは、正直だね。こんなに熱くなって……」
レイコは膝をつき、彼の顔を見上げるようにして悪戯っぽく微笑みました。自分のすべてが彼女の手のひらの中にあり、完全にコントロールされている。その圧倒的な支配感に、指は屈辱と、それ以上の、脳が溶けるような歓喜を覚えました。
指の動揺を見透かすように、彼女はそのまま愛撫を続けました。指はもはや、自分が裸であることも、人妻と不倫まがいのことをしていることも、すべてがどうでもよくなっていました。視界が白く霞み、ただ彼女の指先がもたらす熱狂の中に、自分という存在が飲み込まれていくのを感じていました。
ベッドの端に腰を下ろした指は、自分の膝がカチカチと震えているのに気づきました。レイコはそんな彼の隣に座り、まだ少し湿り気を帯びた彼の手を優しく取ります。その瞬間、彼女の細い指が、彼の脚の付け根へと這うように伸びてきました。
「お風呂でもあんなに熱くなってたのに、まだ震えてるのね」
彼女がその手のひらで、はち切れんばかりに勃起した彼の「核心」を、下から掬い上げるように優しく包み込みました。 熱い。指は喉の奥でひきつったような声を上げました。浴室での愛撫とは違い、静まり返った部屋の中で、自分の肉体が脈打つ音まで聞こえてきそうなほどの緊張感。彼女の指先が、先端の敏感な部分を軽く、本当に羽が触れるような力加減でなぞります。
「ひ……っ」
ただそれだけの、呼吸を整える間もないほどの愛撫。それだけで、指の頭の中には火花が散りました。十九年間、自分の手でしか知らなかった刺激とは、次元が違いすぎるのです。レイコの手のひらから伝わる適度な湿り気と、女性特有の柔らかな皮膚の質感が、彼の「そこ」を執拗に攻め立てます。
「ねえ、ユビくん。こんなにビンビンになって……。君のここ、私のこと、すごく欲しがってるみたい」
レイコは顔を近づけ、耳元で熱い吐息を吹きかけました。指はもはや、恥ずかしさで目を逸らすことさえできません。彼女の手の中で、自分の意思とは無関係に反り繰り返る肉体が、自分を大人へと無理やり引きずり込んでいく。
「……レイコさん、もう……僕……」
「いいよ、全部出しちゃって。君の初めてを、私の手の中で、それとも……」
彼女はそう言いながら、指を仰向けに倒しました。シーツの上に投げ出された指の体は、期待と刺激で弓なりに反り、彼女の次の一手を、狂おしいほどに待ち望んでいました。
指(ゆび)の頭は、一瞬で真っ白になりました。視界の端で、レイコがシーツに膝をつき、ゆっくりと腰を落としていくのが見えました。彼女の濡れた髪が彼の太ももに触れ、その冷たさに反比例するように、股間の熱は爆発寸前まで膨れ上がります。
「一度、出してみようか。その方が、次はもっと長く楽しめるでしょ?」
彼女が顔を近づけると、甘い吐息が直接、張り詰めた先端に吹きかけられました。指が「あ、待って……」と声を漏らす暇もありませんでした。次の瞬間、熱く湿った未知の感触が、彼のすべてを包み込みました。
「っ……!!」
指は、シーツを指がちぎれんばかりに掴み、背中を大きく反らせました。自分の手でさえ触れたことのないような繊細な粘膜の熱、そして彼女の舌が複雑に絡みつく動き。それは十九歳の童貞大学生が耐えられる刺激を、遥かに超えていました。
レイコの口内は、お風呂の熱を閉じ込めたように温かく、吸い上げられるような圧迫感が指の脳髄を直接揺さぶります。彼女は時折、上目遣いで指の悶える顔を確認し、わざと喉を鳴らして深く飲み込むような仕草を見せました。
「レイコさん、レイコさん……! ダメだ、それ……すごすぎ、て……!」
指の喉からは、自分でも聞いたことのないような情けない、けれど剥き出しの歓喜の声が漏れました。彼女の指先が、根元の弱点を執拗に刺激しながら、口内での愛撫はさらに激しさを増していきます。
極限まで張り詰めた神経が、ついに決壊の時を迎えました。指の腰がガクガクと震え、下腹部から熱い塊がせり上がってきます。
「あ、出る、出ちゃう……っ!」
彼がそう叫んだのと同時に、レイコはさらに強く吸い込みました。指の意識は閃光の中に弾け、十九年間守り続けてきた精髄が、彼女の喉の奥へと一気に解き放たれました。
激しい拍動が収まるまで、レイコはそのまま彼を離しませんでした。嵐のような絶頂が過ぎ去り、静まり返った部屋の中で、指は荒い呼吸を繰り返しながら、天井の照明をぼんやりと見つめていました。
「……すごかったよ、ユビくん」
レイコがゆっくりと顔を上げ、口元を手の甲で拭いながら微笑みました。その妖艶な姿を見た瞬間、指は自分が本当に「一線を越えてしまった」ことを、魂の奥底で実感していました。
一度すべてを吐き出し、空っぽになったはずでした。十九年分の蓄積が彼女の喉の奥へと消えていき、指(ゆび)は激しい脱力感と共に、これで終わったのだと、どこか遠い意識の中で思っていました。
しかし、現実は違いました。
レイコがゆっくりと唇を離した瞬間、冷たい空気に触れたそこは、萎えるどころか、むしろ先ほどよりも熱く、暴力的なまでの硬さを取り戻していったのです。吸い尽くされたはずの刺激が、逆に全身の血流を一点に呼び戻し、さらに巨大な膨張となって指の股間で脈打ち始めました。
「あら……。一度じゃ足りなかったみたいだね」
レイコは驚いたように目を見開き、それからすぐに、征服欲に満ちた艶やかな笑みを浮かべました。彼女の指先が、再び熱を帯びて反りくり返る「それ」をなぞります。一度解放されたことで、指の感度は異常なまでに高まっていました。少し触れられるだけで、背筋が粟立つような快感が脳を直撃します。
「ねえ、見て。さっきよりもずっと、猛々しくなってるよ」
彼女が囁きながら、自分の唇を指の耳元に寄せました。 指は、自分の体が自分の制御を離れてしまったような恐怖を覚えました。賢者タイムが訪れる暇さえ与えず、二度目の、そして本当の意味での「本番」へのカウントダウンが始まっていました。
一度放出したことで、恐怖心よりも「彼女をもっと知りたい」という動物的な本能が上回っていました。指は震える手で、目の前にいるレイコの細い腰を引き寄せました。お風呂上がりの彼女の肌はまだしっとりと濡れていて、吸い付くような質感が、彼の指先をさらに狂わせます。
「レイコさん……僕、もう……我慢できません」
「いいよ。今度は、君の好きなようにして」
彼女はそう言うと、自分からベッドの上に横たわり、指を受け入れるように両足をゆっくりと開きました。新婚の指輪が、照明を反射して最後の警告のように光りましたが、今の指には、その輝きさえも二人を燃え上がらせるための薪にしか見えませんでした。
十九歳の童貞大学生。免許取り立ての夜。あてもないドライブの果てに、彼はついに、本当の意味で「大人」の扉を抉り開けようとしていました。
指の脳内で、何かが音を立てて弾けました。一度すべてを放出したことで、それまで彼を縛り付けていた「自信のなさ」や「羞恥心」という枷が、熱い奔流となって溶け去っていったのです。
彼は、促されるままに受け身でいた「童貞大学生」であることをやめました。本能が、そして指という名を持つ彼自身の指先と舌が、彼女という未知の領土を完全に支配したいと叫んでいました。
「ユビくん……っ?」
驚いたようなレイコの声が、寝室の静寂を揺らしました。指は彼女の白い太ももを力強く掴むと、迷うことなくその顔を彼女の下腹部へと埋めました。
お風呂上がりの石鹸の香りと、彼女自身の内側から溢れ出す濃密な雌の匂い。指は、導かれるように舌を伸ばしました。まずは蕾のような前の穴へ。熱く濡れたそこを、彼は貪るように、そして繊細に舐め上げました。レイコの身体がベッドの上で大きく跳ね、シーツを掴む指先に力がこもります。
しかし、指の覚醒はそこでは止まりませんでした。
彼はさらに深く、未知の領域へと舌を滑らせていきました。指の腹で彼女の秘部を押し広げ、露わになった後ろの穴へと、熱い舌先を這わせたのです。
「ああぁっ……! そこ、は……だめ、ユビくん、そんな……っ!」
レイコは喉をのけぞらせ、狂おしい悲鳴を上げました。新婚の夫でさえ、そんな場所を愛撫してくれたことはなかったのでしょう。後ろの穴という、最も秘められた場所を優しく、かつ執拗に攻め立てられる禁断の快楽に、彼女の腰は激しく打ち震えました。
指は、彼女の反応を確かめるように、さらに深く、丁寧に舌を動かしました。自分の中の「指」という名前が、単なる記号ではなく、女性を悦ばせるための天賦の才能であるかのように、彼の舌は自在に動きます。
「ユビくん……すごい、そんなの……私、おかしくなっちゃう……!」
レイコの理性は、十九歳の青年の大胆な反乱によって、完全に打ち砕かれました。彼女はもはや「リードする大人の女性」ではなく、ただひたすらに快楽を貪り、指の愛撫を乞い願う一人の女へと堕ちていきました。
指は、彼女が絶頂の間際で震えるのを感じながら、顔を上げました。彼の瞳には、先ほどまでの怯えはなく、一人の男としての確かな光が宿っていました。彼はそのまま、最高潮に達した彼女の身体を自分のものにするべく、腰をゆっくりと沈めていきました。
指の覚醒は、一度や二度の絶頂では収まりませんでした。免許を取り立ての彼が、初めてハンドルを握って国道の先を目指したときのような猛烈な加速感が、ベッドの上でも彼を突き動かしていました。
指は、仰向けに震えるレイコを力強く翻転させ、四つん這いにさせました。先ほど自分の舌で解きほぐしたばかりの、窄まった後ろの穴。そこは熱を持ち、指の再三にわたる侵攻を待っているかのように微かに波打っていました。
「ユビくん、そこは……そんな、壊れちゃう……っ!」
レイコが顔を枕に埋めて、掠れた声で懇願します。しかし、指はその声さえも最高の昂奮剤に変えていました。彼は自分の熱り立つ先端を、その禁断の入り口へと容赦なく押し当てました。一瞬の抵抗、そして吸い込まれるような異次元の締め付け。前の穴とは比べものにならないほどの密着感と熱気が、指の理性を粉々に砕きました。
「っ……あ、熱い……レイコさん、すごいよ、ここ……!」
指は本能のままに腰を叩きつけました。初めてとは思えないほど、彼の動きは鋭く、正確に彼女の最奥を突き上げます。新婚の夫との淡泊な交わりでは決して得られなかったであろう暴力的なまでの快楽に、レイコは声を枯らして鳴き続け、腰を狂ったように振り乱しました。
内壁が指のそれを執拗に締め上げるたび、下腹部から熱い火花が吹き上がります。指は彼女の腰を折れんばかりに掴み、限界まで引き寄せると、後ろの穴の奥深く、彼女の腸壁が最も熱く蠢く場所に、二度目の、そして先ほどよりも濃厚な精髄を叩き込みました。
「あああああぁぁっ!」
二人の絶叫が重なり、部屋の空気が震えます。しかし、それは長い夜の、ほんの序章に過ぎませんでした。
一度果てるたびに、指の身体は不思議と活力を取り戻しました。十九歳の若さと、レイコという女性の「飢え」が、彼を怪物に変えていました。正常位で彼女の瞳を見つめながら、横臥位で互いの肌を擦り合わせながら、そして再び後ろの穴を蹂悟するように……。
気がつけば、灰色の夜の帳が、窓の隙間から差し込む薄明るい光に溶け始めていました。
「……ユビくん、もう……私、中が熱くて、とろけちゃいそう……」
レイコは指の胸に顔を埋め、幸福な疲労感の中で吐息を漏らしました。指が朝までに何度、彼女の中に自分を刻み込んだのか、もう数えることさえできません。五回か、六回か。射精するたびに、彼は「童貞」という殻を脱ぎ捨て、一人の男として、そして彼女の孤独を埋める唯一の存在として完成されていきました。
サイドテーブルの上の時計は、朝の六時を指そうとしています。レンタカーの返却時間も、彼女の「日常」へ戻る時間も近づいていましたが、今の二人には、まだ熱を帯びた互いの肌の感触だけが、この世のすべてでした。
カーテンの隙間から差し込む薄い青色の光が、乱れたシーツと、その上で重なり合う二人の肌を静かに照らし出していました。
あれから何度、互いの熱を確かめ合ったでしょうか。指(ゆび)の体には、昨夜の激闘の証である心地よい倦怠感がずっしりと居座り、一晩で数年分もの時間を駆け抜けたような不思議な感覚に包まれていました。隣で眠るレイコの肩は、規則正しい呼吸に合わせて小さく上下しています。彼女の薬指で光るプラチナのリングが、現実へと引き戻す冷たい光を放っていましたが、今の指には、それが遠い異国の出来事のようにさえ感じられました。
ふと、レイコが長い睫毛を震わせ、ゆっくりと目を開けました。鏡越しに目が合うと、彼女は少し照れたように、でも隠すことなく幸せそうに微笑みました。
「……おはよう、ユビくん。すごい夜だったね」
彼女の声は、昨夜の情熱を帯びた喘ぎとは打って変わって、穏やかで澄んでいました。指は言葉が見つからず、ただ彼女の髪をそっと撫でました。昨日まで、ハンドルを握るだけで手が震えていた自分が、今は一人の女性の、それも誰かの妻である人の孤独を、一晩中癒し続けていた。その事実が、彼を「大学生」という殻から、確かな一人の「男」へと変質させていました。
朝の青白い光が部屋の隅々を照らし、チェックアウトの時間が刻一刻と迫っていることは分かっていました。レイコが服を手に取り、現実に帰るための準備を始めようとしたその時、指(ゆび)は背後から彼女の細い腰を強く抱き寄せました。
「……ユビくん?」
驚いて振り返るレイコの瞳に、指は真っ直ぐな、そして飢えた視線をぶつけました。一度放出したことで落ち着くどころか、覚醒した彼の本能は、別れの間際になってさらに激しく燃え上がっていたのです。
「最後にもう一回だけ……いいですか」
それは昨夜のような「お願い」ではなく、一人の男としての、抗いがたい要求でした。レイコは一瞬呆気にとられたような顔をしましたが、指の瞳に宿る、自分を支配しようとする強い光を見て、艶やかに唇を綻ばせました。
「……本当に、底なしなんだね」
彼女は手に持っていたブラウスを床に落とし、自分からベッドへと倒れ込みました。
今度の指は、最初から獣のようでした。昨夜の経験で得た知識と、覚醒した感覚をすべて動員し、彼女の肌を貪ります。レイコの喉からは、朝の静寂を切り裂くような、深くて甘い悲鳴が漏れました。新婚の夫との淡泊な生活では決して味わえなかった、身体の芯まで焼き尽くされるような熱い衝撃。
指は、彼女のすべてを自分の記憶に刻みつけるように、力強く、そして執拗に突き上げました。レイコもまた、彼の若さと情熱に応えるように、その背中に爪を立て、脚を高く上げて彼をさらに奥へと導きます。
「ユビくん、すごい……あぁ、もう、逃げられない……っ!」
二人の汗が混じり合い、激しい肉体の衝突音が朝の部屋に響き渡りました。それは、別れを惜しむ儀式というよりは、互いの存在を永遠に刻印するための戦いのようでもありました。
最高潮が訪れた瞬間、指は彼女の首筋に顔を埋め、全身の力を振り絞って、最後の一滴までを彼女の内側に注ぎ込みました。レイコもまた、大きくのけぞりながら、彼を壊さんばかりの力で抱きしめ返しました。
嵐が過ぎ去った後、二人はしばらくの間、繋がったまま荒い息を整えていました。
「……これで、本当に、忘れられなくなっちゃったじゃない」
レイコは、指の頬を愛おしそうに撫でながら、少しだけ泣きそうな、それでいて最高に満足した顔で笑いました。
今度こそ本当に、二人は服を着ました。ホテルのロビーを出て、まぶしい朝日の下、指は彼女を駅まで送り届けました。車を降りる際、彼女は一度も振り返りませんでしたが、その背中は、確かに一人の男によって満たされた女の、凛とした美しさに満ちていました。
指は、一人になった車内で、自分の指先に残る彼女の感触を確かめました。十九歳の彼にとって、この一晩の出来事は、一生消えることのない「青い傷跡」であり、同時に「男としての誇り」となったのです。
完