『箱に残された十個の約束 🔞』
2026/01/16(金)
18歳の春、卒業記念の自転車旅の途中で訪れた「混浴」での出来事。
一日中ペダルを漕ぎ続け、パンパンに張った太もも。潮風と砂埃でベタついた肌。 ようやく見つけた山あいの公共浴場は、古びた木造の脱衣所があるだけの、無人のような場所だった。 「生き返る……」 彼は大きな岩の陰、湯気が立ち込める隅っこに身を沈める。4月の夜風はまだ冷たく、お湯の熱さが骨の髄まで染み渡っていく。この時までは、そこが自分だけの天国だと思っていた。
脱衣所の方から、カラカラと戸が開く音が聞こえる。 てっきり同じような旅の男か、地元の老人だと思っていた。しかし、聞こえてきたのは、弾むような高い声と、軽い足音。
「わあ、貸し切りかな?」 「熱いかな、どうかな」
湯気の向こう側、岩の反対側に、複数の「気配」が降りてくる。 水面が揺れ、波紋が彼の胸元を叩く。石鹸の香りが微かに混じり、彼は自分がとんでもない場所にいることに気づく。
指は岩にしがみつくようにして、体を縮める。 女性の肌に触れたこともない。それどころか、異性の生の声、お湯をかく音をこれほど近くで聞くのも初めてだった。 自分の指先を見る。ハンドルを握りしめていたせいで少し赤くなった、無骨で不器用な指。その指が、今は岩の苔を必死に掴んでいる。
「もし今、ここから出たら?」 「いや、隠れている方が変質者だと思われるんじゃ……?」 思考はループし、お湯の熱さとは違う、体の内側からの熱で頭がぼーっとしてくる。
湯気に包まれた岩風呂の奥、僕はただの石ころになろうとしていた。
脱衣所の方から聞こえてきたのは、僕と同じか、少し年上……大学生くらいだろうか、三人の弾んだ声だった。彼女たちはそこが混浴だということも、そして僕という先客がいることも、微塵も疑っていないようだった。 「あー、最高! 貸し切りじゃん!」 そんな無邪気な声とともに、彼女たちは隠そうともせず、白く、柔らかな肢体を湯の中に沈めていく。
岩の隙間から漏れ聞こえるお湯の跳ねる音、そして視界の端をかすめる、今まで画面越しでしか見たことのなかった「本物の女性」の色彩。 僕は呼吸を忘れた。心臓が耳のすぐ横で、太鼓のように鳴り響く。あまりの衝撃に、指先が小さく震える。
逃げ出さなきゃいけない。でも、動けば見つかる。 パニックと、逃れようのない本能が僕の体の中で激しく衝突した。 股間はすでに、痛いほどの熱を帯びて硬く反り上がっていた。 僕は自分でも無意識のうちに、岩にしがみついていた手を下ろし、それを握りしめていた。 ハンドルの感触よりもずっと熱く、生き物のように拍動する自分の一部。 一度動かし始めると、もう止まらなかった。三人の嬌声を聞きながら、僕は泥沼に沈んでいくような、罪悪感と快楽の入り混じったトランス状態に陥っていた。
「……何してるの?」
耳元で囁かれたわけではない。 けれど、その声は僕の脳髄を直接貫いた。 弾かれたように顔を上げると、僕が隠れていた岩陰の、さらに死角になるような暗がりに、一人の女性がいた。 彼女は僕と同じくらいの年齢に見えた。 いつからそこにいたのか、彼女は一言も発さず、僕の醜い自慰を、その一部始終をじっと見つめていたのだ。
三人の賑やかな声はまだ続いている。 しかし、僕と彼女の間だけは、重苦しいほどに静まり返っていた。 握りしめたままの僕の指、晒されたままの熱。 彼女の瞳は蔑んでいるようでも、驚いているようでもなく、ただ底知れない静寂を湛えて、僕のすべてを射抜いていた。
その言葉は、冷たい氷の刃のように僕の背筋を撫でました。
「何してるの? こっちに来なさい。言うことを聞かないと、あの三人を呼ぶわよ」
彼女の視線は、僕がまだ握りしめている「それ」から、僕の怯えきった瞳へとゆっくり移動しました。冗談を言っているような色はありません。彼女がひと声上げれば、僕の人生はここで終わる。警察、大学の入学取り消し、親の顔……。最悪のシチュエーションが走馬灯のように頭を駆け巡り、視界がチカチカと点滅します。
僕は、這うようにしてお湯の中を移動しました。岩に擦れた膝の痛みも感じないほど、全身の感覚が麻痺しています。すぐ数メートル先では、三人の賑やかな笑い声が絶え間なく響いています。彼女たちの無防備な肩や背中が湯気越しに見えるたび、僕は心臓を直接握りつぶされるような恐怖と、逃れられない興奮に引き裂かれそうになりました。
一歩、また一歩。お湯の抵抗がひどく重く、まるで泥の中を歩いているようです。 彼女の目の前までたどり着いたとき、僕は水面の下で力なく膝をつきました。彼女は岩に背を預け、長い髪を片側に流して、獲物を観察するような冷徹な、それでいてどこか熱を帯びた瞳で僕を見下ろしていました。
「もっと近くに。……そこに座って」
抗う術など、最初からありませんでした。僕は言われるがまま、彼女のすぐ隣、お湯の中に腰を下ろしました。 僕の指は、まだ小刻みに震えています。さっきまで自分の浅ましい欲望をぶつけていたその指が、今は情けなく水面に浮いていました。
彼女はゆっくりと、自分の手を水中に沈めました。そして、僕の震える指先に、彼女の指がそっと触れました。 「旅の人……? 自転車、外に止まってたよね」 彼女の問いかけに、僕は声も出せずに、ただ小さく頷くことしかできませんでした。
「あっちの三人は、私が呼べばすぐに来るわよ。……ねえ、どうしてほしい?」 彼女の指が、僕の指を絡めとるようにして握りしめました。それは、僕が人生で初めて触れた、あまりにも柔らかくて、残酷なほどに熱い、女性の体温でした。
「……さっきの続きを、私の前でやりなさい」
耳元で、甘く、けれど拒絶を許さない声が響きました。 その言葉の意味を理解した瞬間、僕の全身の血が逆流するような感覚に襲われました。
三人の女性たちがすぐそこにいる。彼女たちが少し泳いだり、岩のこちら側に回り込んだりするだけで、僕の人生は終わる。それなのに、この女性は僕に、その「終わりの瞬間」を自分から演じろと言っている。
「できない? だったら、あの子たちに聞いてみようか。『ここに面白い男の子がいるよ』って」
彼女の指が、僕の喉元をなぞるように動きました。僕は小さく悲鳴を上げそうになり、慌てて口を塞ぎました。頭の中はもう真っ白で、心臓の音だけがドラムのように全身を叩いています。従うしかない。他に選択肢なんて、最初からなかった。
僕は、お湯に浸かったまま、震える手で再び自分を握りました。 さっきとは違う。さっきは、誰も見ていないという解放感の中で、ただ本能に身を任せていた。でも今は、この氷のように冷たくて熱い瞳に見つめられながら、そしていつ発覚してもおかしくない極限の恐怖の中で、無理やり快楽を絞り出さなければならない。
水面が、僕の不規則な手の動きに合わせて小さく波打ちました。 チャプ、チャプという、静かな、けれど僕にとっては耳を劈くような大きな音が、三人の笑い声に混じって響きます。
「……もっと、よく見せて」
彼女は岩に背を預けたまま、僕のすぐ隣で、品定めをするような目で僕の手元を凝視しています。彼女の吐息が僕の頬にかかるたび、僕の「指」は絶望に反して、より一層強く、熱く脈打ちました。屈辱と、恐怖と、そして禁じられた興奮。十八年間、教科書とハンドルしか握ってこなかった僕の指が、今、人生で最も過酷な、そして倒錯した儀式を強いられている。
三人の一人が、「ねえ、そっちの方、お湯熱くない?」と言いながら、少しだけこっちに近づいてきた気配がしました。 僕は息を止め、水面の下で狂ったように指を動かしました。絶頂よりも先に、死の恐怖が追い越してきそうでした。
彼女の唇が、僕の耳元に触れるほど近づきました。 「ねえ、どんな気持ち? こんなに近くに女の子がいるのに、私の前でそんなことして。……ねえ、もっと激しくしてよ」
その声に、僕はもう、自分が壊れていくのを感じていました。
「お湯から出て、立ってやりなさい。水音がうるさいわ」
その一言は、僕にとって死刑宣告に等しかった。 お湯の中にいれば、まだ「隠れている」という言い訳が成り立つ。けれど、外に出るということは、この湯気に煙る月明かりの下で、自分のすべてを、そしてこの浅ましい勃起を完全に晒すということだ。
「……っ、そんな……」 「聞こえなかった? 早くしないと、あの子たちがこっちに来ちゃうわよ」
彼女は冷たく言い放ち、顎で岩の上を指し示した。 逆らうことなんてできなかった。もし彼女が声を上げれば、僕は不審者として、この旅の途中で社会的に抹殺される。頭の奥がジンジンと痺れ、正常な判断力はすでに霧散していた。
僕は、這うようにして岩風呂の縁に手をかけ、ゆっくりと身体を湯から引き上げた。 4月の夜気は、お湯で火照った肌にはあまりにも冷たかった。濡れた全身から、白い湯気がゆらゆらと立ち上る。 遮るものは何もない。岩の上に立ち上がると、すぐ数メートル先で楽しげにはしゃいでいる三人の女子大生の背中が、嫌でも視界に入ってきた。彼女たちがふと振り返るだけで、僕の人生は一瞬で終わる。
「そう、そのまま。……始めなさい」
彼女は湯船に浸かったまま、岩に肘をつき、僕を見上げていた。 僕の足元で、濡れた肌が空気に触れて粟立っていく。寒さと、極限の恐怖。それなのに、見せつけられているという異常な背徳感が、僕の股間をこれまでになく硬く、熱くさせていた。
僕は震える指を自分自身に添えた。 水の中とは違い、手のひらと肌が擦れる生々しい音が、静まり返った夜の空間に響く。 「っ……ぁ……」 漏れそうになる吐息を、必死で奥歯を噛み締めて飲み込む。
「もっと、よく見えるように。……あの子たちの方を向いて」
彼女の囁きは、悪魔の誘惑のように僕の理性を削り取っていく。 僕は言われるがまま、三人の背中に向かって、その無防備な光景を特等席にしながら、自分の指を動かし始めた。 誰にも触れたことのない、教科書とハンドルしか知らなかった僕の「指」が、今、見知らぬ女性の支配下で、かつてないほど激しく、絶望的な快楽を刻んでいた。
三人のうちの一人が、ふと立ち上がろうとした。 「ねえ、そろそろ上がる?」 その声に、僕の心臓が口から飛び出しそうになる。 止まれば、彼女にバラされる。続ければ、三人に見つかる。 逃げ場のない地獄の淵で、僕は泣きそうな顔をしながら、狂ったように腰を震わせるしかなかった。
目の前の彼女は、その僕の惨めな姿を、うっとりとした、残酷な悦びに満ちた瞳で眺めていた。
湯船の中から僕を見上げる彼女の瞳が、わずかに揺れたのを僕は見逃しませんでした。
「……意外と、引き締まった体をしてるのね」
彼女が吐息を漏らすように呟きました。 体操部で鍛え上げた僕の体は、無駄な脂肪がなく、濡れた肌の下でしなやかな筋肉が浮き彫りになっています。自転車旅でさらに絞られた腹筋や太もものラインは、月明かりの下で彫刻のような陰影を作っていました。
けれど、彼女が本当に言葉を失ったのは、その筋肉のせいだけではありませんでした。 お湯から完全に晒された僕の「そこ」は、彼女の予想を遥かに上回る存在感を放っていたのです。
「……嘘、でしょ」
彼女の余裕たっぷりだった表情に、明らかな動揺が混じりました。 自分から「立ってやりなさい」と命じたはずなのに、いざ目の前に突きつけられたその猛々しい現実に、彼女は気圧されているようでした。 実は、彼女もまた、本物の男性をこんなに近くで見たことなどない、僕と同じ「処女」だったのです。経験豊富なふりをして僕を支配することで、自分の内側にある好奇心と恐怖を誤魔化そうとしていたに過ぎませんでした。
僕は彼女の動揺に気づく余裕すらなく、ただ必死に自分の指を動かし続けました。 「っ、はぁ、……っ」 冷たい夜気の中で、僕の体からはさらに激しく湯気が立ち上ります。 すぐ後ろにいる三人の笑い声が、耳元で鳴り響く警笛のように聞こえる。 見つかれば終わる。でも、止まれば彼女に何をされるかわからない。 その極限の恐怖が、皮肉にも僕の指に更なる力を込めさせ、自分でも驚くほどの硬さと熱さを僕に与えていました。
「ねえ、……そんな顔で、私を見ないでよ」
彼女は強がって見せましたが、その頬は、お湯の熱さとは明らかに違う赤みに染まっていました。 僕の大きく脈打つ「それ」を凝視したまま、彼女の指が、無意識のうちに自分の太ももを強く握りしめています。
「……もっと。もっと近くで見せなさい。……こっちに、一歩寄って」
彼女の声が、わずかに震えていました。 命令しているはずの彼女自身が、僕という「初めて見る雄の現実」に、飲み込まれようとしている。 僕は、岩の縁ギリギリまで足を一歩進めました。 今、僕の指が刻んでいるこのリズムは、僕だけの秘密ではなく、この場所で僕を支配しようとしている彼女との、共犯の儀式へと変わっていきました。
目の前に差し出された、荒い息を吐く少年の剥き出しの熱。 岩の縁に立つ僕の股間は、彼女のちょうど目の高さにありました。
体操で鍛え上げられた僕の身体は、贅肉を削ぎ落とした彫刻のように鋭く、そこから力強く反り立つ「雄」としての現実は、彼女の想像を遥かに超えていたようです。
「……うそ。こんなの……」
彼女の唇が、戦慄(わなな)くように小さく動きました。 さっきまでの冷徹な支配者の顔は、どこにもありません。そこにあるのは、未知の巨大な存在を前にして、恐怖と好奇心に瞳を潤ませる、一人の少女の顔でした。
彼女の手が、まるで磁石に吸い寄せられるように、ゆっくりとお湯の中から上がってきました。 指先は、僕と同じように小刻みに震えています。 彼女もまた、知らなかったのです。教科書や画面の中の知識ではない、熱を持って脈打ち、今にも爆発しそうな本物の肉体が、これほどまでに圧倒的なものだということを。
「っ……あ……」
僕の太ももに、彼女の指先がかすかに触れました。 ひんやりとした夜気の中で、彼女の指先だけが、焼けつくような熱を帯びて感じられます。 彼女は自分の指が、僕の引き締まった腹筋をなぞり、そのまま「そこ」へと吸い込まれていくのを、自分でも止められないようでした。
「ダメ……です、そんな……っ」
僕は掠れた声で拒もうとしましたが、足はすくんで動けません。 すぐ背後では、三人の女の子たちが「ねえ、シャンプー貸してー!」と笑い合っています。 その日常的な明るい声が届くたびに、僕の身体は極限の緊張でさらに硬くなり、彼女の目の前で、隠しようもなくドクンドクンと大きく脈打ちました。
彼女の細い指が、ついに僕の熱を包み込みました。
「……すごく、熱い」
彼女の瞳から、ポロリと一滴、涙のようなしずくがこぼれました。それがお湯の飛沫なのか、それとも彼女の心の揺れなのかはわかりません。 初めて触れる異性の感触に、彼女自身の「処女」としての輪郭が、音を立てて崩れていくのがわかりました。 支配していたはずの彼女が、今や僕の放つ圧倒的な生命力に、逆に支配されようとしていました。
「ねえ、……これ、どうすればいいの? 私、……どうしたらいいか、わかんないよ……」
強気な命令はどこへやら、彼女は縋るような、泣き出しそうな瞳で僕を見上げました。 僕の指は、もう自分を動かすのを止めていました。 代わりに、彼女の不器用で震える指が、僕のすべてを握りしめていました。
「……うそ。こんなの、絶対……入るわけない」
彼女の指先から伝わってくる震えが、僕の肌にダイレクトに響きました。 僕の「そこ」を握りしめたまま、彼女は瞬きも忘れたように凝視しています。月明かりに照らされたそれは、自分でも恐ろしくなるほど怒張し、血管が浮き出し、生命の熱そのものを形にしたような塊となっていました。
彼女の頭の中では、今まで見聞きしてきた浅い知識と、目の前にある「雄の現実」が激しく衝突していました。 自分と同じくらいの年齢の、まだ少年の面影を残した僕から、これほどまでに強大で、硬く、熱い「暴力的なまでの肉体」が突き出している。
「こんなものが……女の子の、あそこに……?」
彼女の声は、もう命令でも何でもありませんでした。ただの、怯えた少女の呟きでした。 彼女自身の股間の奥が、未知の恐怖でキュッと縮まるのを感じているのかもしれません。これが自分の中に入り、内側を押し広げ、すべてを支配していく光景。それを想像しただけで、彼女の顔からはさらに血の気が引き、同時に、否定できないほどの強烈な好奇心が彼女の瞳を潤ませていきました。
「壊れちゃうよ……こんなの。……ねえ、君、痛くないの? こんなにパンパンになって……」
彼女の指が、恐る恐る、先端の脈打つ部分をなぞりました。 そのあまりの柔らかさと熱さに、僕は「ひっ……!」と短い声を漏らしてのけぞりました。 体操で鍛え、自分の意志で自在に動かしてきたはずの僕の体が、彼女の指一本で、いとも容易く、情けなく折れ曲がりそうになる。
「あっ……だめ、そんな……っ」
三人の女子大生の声は、すぐそこで続いています。 「ねえ、夜空、めっちゃ綺麗だよ!」 「本当だー、星がすごい!」 彼女たちの無邪気な会話が、僕たちのいる岩陰の異常な空気をより一層際立たせます。
もし、今ここで彼女が手を離さなかったら。 もし、このまま彼女の恐怖が「別の感情」に変わってしまったら。
僕は岩の上で立ち尽くしたまま、逃げ出すこともできず、自分を握りしめる彼女の小さな手を見つめるしかありませんでした。彼女の処女としての純粋な恐怖が、僕の「指」に、かつてないほどの凶暴な熱を注ぎ込んでいました。
「……ねえ。もっと、近くに来て。……もっと、私に見せて」
恐怖に震えながらも、彼女は僕の手首を掴み、自分の方へと引き寄せました。 彼女の顔が、僕の熱に触れそうなほど近づきます。
その瞬間、僕の脊髄を電気が走り抜け、頭のてっぺんまで突き抜けました。
彼女の濡れた舌が、冷え切った夜気の中で熱を持った僕の先端に、おずおずと、けれど逃れられないほど確かに触れたのです。ヌルリとした、未知の粘膜の感触。それは、ハンドルや鉄棒の感触しか知らなかった僕の指が、一生かかっても辿り着けないと思っていた「異性の核心」でした。
「っ……あ、が……!」
声にならない悲鳴が喉の奥で詰まりました。 彼女は、恐怖に震えていたはずの瞳を潤ませながら、僕を逃がさないようにその両手で僕の太ももをしっかりと掴みました。そして、意を決したように、大きく口を開いたのです。
熱い。 お湯よりも、自分の体温よりも、ずっと濃密で重い熱が、僕のすべてを飲み込んでいきました。 僕の鍛え上げられた腹筋が、予期せぬ快感に耐えかねて岩のように硬く波打ちます。
彼女の小さな口の中に、僕の猛々しい膨らみが収まっていく。 「あ……ふ、ん……っ」 彼女は、鼻にかかった苦しそうな、けれどどこか悦びに満ちた声を漏らしました。 あんなに「入るわけない」と怯えていた彼女が、今、僕の一部を自分の中に受け入れている。その事実に、僕の理性が音を立てて砕け散りました。
しばらくして、彼女は顔を離すと、銀色の糸を引きながら僕を見上げ、少しだけ意地悪に微笑みました。
「……とりあえず、口には入るね」
その言葉は、まるで「次はどこに入るか試してみる?」とでも言いたげな、挑発的な響きを孕んでいました。彼女の瞳からは先ほどの恐怖が消え、代わりに、処女としての好奇心が、もっと深い場所へと手を伸ばそうとする艶やかな輝きに変わっていました。
すぐ後ろでは、三人の女の子たちが「上がったらアイス食べよ!」なんて、まだ無邪気な話をしています。 彼女たちの笑い声が聞こえるたびに、僕は見つかる恐怖に震えながらも、目の前の彼女がもたらす禁断の熱に、どうしようもなく溺れていきました。
僕の指は、もう何もしなくてもいいほどに、彼女の存在そのものに支配されていました。
「……ねえ。口の中、すごく熱かったでしょ? もっと……もっと熱いところ、知りたい?」
彼女が僕の太ももに爪を立てるようにして、自分の方へとさらに強く引き寄せました。 僕はもう、一歩も後ろへは下がれませんでした。
「あー、お腹空いた!」「ラーメン食べて帰ろっか」
そんな、どこにでもある日常の会話とともに、三人の気配が脱衣所へと消えていきました。カタン、と引き戸が閉まる音が夜の静寂に響き、広い露天風呂には、僕と彼女、そして立ち上る湯気だけが残されました。
「……行ったね」
彼女が僕の太ももから手を離し、お湯の中に身体を沈めました。 その瞬間、僕の全身から一気に力が抜け、膝がガクガクと震え出しました。 助かった。見つからなかった。 警察も、退学も、親への謝罪も、すべてが回避されたのだという猛烈な安堵感が、熱い波のように押し寄せてきました。 僕の指は、岩の縁を白くなるほど強く掴み、自分がまだこの世界の「日常」側に踏みとどまっていることを確かめていました。
あんなに恐ろしかったはずの三人の声が消え、完全な静寂が戻ってきたことを、誰よりも喜んでいるのは僕自身でした。 けれど、その安堵のすぐ裏側に、名前のつかない「残念さ」が、毒のようにじわりと広がっていくのを僕は感じていました。
何が残念なんだ? あんなに生きた心地がしなかったのに。あんなに醜態を晒して、消えてしまいたいと思っていたのに。 三人の観客がいなくなったことで、僕を支配していたあの「極限の緊張」という名の麻薬が、急激に体から抜けていく。 自分の愚かさが、冷え切った夜気とともに肌にへばりついて、ひどく虚しい気持ちになりました。
「……何、ホッとしてるの?」
湯船の中から、彼女が僕を見上げていました。 その瞳には、先ほどまでの強がりや支配欲、そして僕の「それ」に触れた時の純粋な恐怖が、複雑に混ざり合った色が浮かんでいます。
「あの子たちがいなくなったら、もう私に言うこと聞かなくていいと思ってる?」
彼女の声は、少しだけ寂しそうに、けれど先ほどよりもずっと親密な響きを持っていました。 観客がいなくなったこの場所で、僕と彼女の関係は、脅迫者と被害者から、何か別のものへと形を変えようとしていました。 僕の指は、まだ彼女の口の中の熱さを、そして初めて触れた「女性」という生き物の柔らかさを、火傷のような記憶として刻み込んでいました。
彼女はゆっくりと立ち上がり、お湯を滴らせながら僕の目の前まで歩み寄ってきました。 今度は彼女の方が、自分の裸を隠そうともせず、真っ直ぐに僕を見つめています。
彼女の指が、僕の濡れた指先に触れました。 三人が去った後の静寂の中で、僕たちの本当の「初めて」が、今、静かに始まろうとしていました。
「……ついてきなさい。ゆっくり走るから。途中でコンビニに寄るわよ」
脱衣所から出てきた彼女は、お風呂でのあの扇情的な姿とは打って変わって、少し大きめのパーカを羽織った、どこにでもいる普通の、けれどひどく綺麗な女の子に戻っていました。 駐車場には、彼女のものらしき軽自動車がぽつんと一台だけ停まっていました。
僕は、まだ心臓の鼓動が収まらないまま、自転車のスタンドを上げました。 「指」と呼ばれ、教科書をめくり、ハンドルを握ることしか知らなかった僕の指は、今、冷たい夜気の中でブレーキレバーを握りしめています。 けれど、その指先はまだ、彼女の唇の熱や、あの水面下での柔らかな感触を鮮明に覚えていて、感覚が麻痺したようにジリジリと熱を持っていました。
「……はい」
僕はそれだけ答えるのが精一杯でした。 彼女は一度だけ僕を振り返ると、少しだけいたずらっぽく、それでいて僕と同じ「初めて」を共有した者特有の照れを含んだ笑みを浮かべ、運転席に乗り込みました。
夜の国道を、赤いテールランプがゆっくりと進んでいきます。 僕はその光を見失わないように、必死でペダルを漕ぎました。 体操で鍛えた太ももは、旅の疲れを忘れたかのように軽く、夜風を切り裂いていきます。
南へ向かうあてのない旅。 そのはずだったのに、僕の旅は今、目の前を走る一台の車に完全にコントロールされていました。 コンビニで彼女は何を買うつもりなのだろう。 「入るわけない」と怯えていた彼女が、覚悟を決めたような瞳で僕を誘っている。 その意味を考えると、再び股間が熱くなり、サドル越しに伝わる自分の鼓動が、静かな夜の道に響き渡るようでした。
やがて、闇の中にポツンと浮かび上がるコンビニの白い光が見えてきました。 彼女がウィンカーを出して、駐車場に滑り込んでいきます。 僕の人生で最も長く、そして最も劇的な十八歳の夜は、まだ終わる気配を見せませんでした。
彼女の車の後を追い、たどり着いたのは予想外に小綺麗なオートロックのワンルームマンションでした。
地方の大学生の一人暮らしにしてはセキュリティもしっかりしていて、僕がこれまでテントを張ろうとしていた道端やキャンプ場とは、住む世界が違うような清潔感が漂っています。僕は自分の泥除けのないマウンテンバイクを駐輪場に停めながら、ウィンドブレーカーの汚れを急に恥ずかしく感じました。
「……入って。自転車、そこに置いておけば大丈夫だから」
彼女はエントランスの鍵を開け、僕を促しました。エレベーターの中の静寂が、外を走っていた時よりもずっと重く、密接に感じられます。狭い箱の中で、彼女が持っているコンビニの袋から、温められたお弁当の匂いがふわりと漂ってきました。
部屋のドアを開けると、そこは女の子の一人暮らしらしい、少し甘い香りのする空間でした。 脱ぎ捨てられた靴もなく、整頓された部屋。けれど、その空気のどこかに、彼女もまた僕を招き入れたことに緊張しているような、張り詰めた気配がありました。
「あ、適当に座って。……お茶、コップに入れるね」
彼女はキッチンへ向かい、背中を向けたまま忙しなく動き始めました。 僕は部屋の隅に置かれた小さなローテーブルの前に、所在なく腰を下ろしました。 体操で鍛えたせいで少し幅の広い僕の肩が、その繊細な部屋の中ではやけに場違いで、大きく見えました。
テーブルの上には、先ほど彼女が悩んで買った、あのLサイズの箱が入ったレジ袋が置かれています。 それを直視することができず、僕は自分の膝の上に置いた指先を見つめました。 爪の間に少しだけ詰まった、旅の汚れ。 つい一時間前まで、この指は岩を掴み、自分を慰め、そして彼女の口の熱さを知った。 今、その同じ指が、この綺麗な部屋の、彼女の柔らかい何かに触れようとしている。
「はい、お茶。……あと、お弁当。お腹空いてるでしょ?」
彼女が僕の目の前に座りました。 お風呂の時とは違い、彼女の瞳はもう僕を試すような光を宿していません。むしろ、差し出されたコップを握る彼女の指も、僕と同じように微かに震えているのがわかりました。
「ねえ、……さっきのこと、怒ってる?」
彼女がお弁当の蓋を開けようとして、手を止め、上目遣いに僕を見ました。 その声は、混浴の岩陰で僕を脅した時とは別人のように、頼りなげで、純粋な響きを持っていました。
僕は首を振ることしかできませんでした。 「……いえ。……びっくりした、だけです」
「私も。……あんなことするつもり、なかったんだけど。君があんまり一生懸命、……あそこで、……してたから」
彼女はそこまで言って、顔を真っ赤にして俯きました。 静かな部屋に、二人分の浅い呼吸の音だけが重なります。 コンビニで買ったお弁当が冷めていくのも構わず、僕たちは互いの存在が放つ熱に、ただ当てられていました。
十八歳の、何者でもない僕たちの夜。 彼女が勇気を出して買ったあの小さな箱が、テーブルの上で僕たちの答えを待っているようでした。
コンビニの弁当を半分も食べないうちに、どちらからともなく箸が止まりました。 部屋の隅で唸る冷蔵庫の音だけが、やけに大きく聞こえます。
彼女はコップに残ったお茶を一口飲むと、膝を抱え込むようにして、ぽつりぽつりと自分のことを話し始めました。
「私ね、この春から大学二年生になるの。このマンションは、親が勝手に決めたところで……。門限とかはないけど、なんだかずっと、見えない檻の中にいるみたいだなって思ってた」
彼女の瞳は、テーブルの木目を見つめたまま動きません。
「今日、あの温泉に行ったのは、ただ、誰にも邪魔されたくなかったから。あそこ、夜はほとんど人がいないって聞いてたし。……混浴だって知ってたけど、どうせ誰も来ないだろうって、どこかで世界をなめてたんだと思う」
彼女は少しだけ自嘲気味に笑いました。
「でも、岩陰に君がいるのを見つけたとき、私、怖かったはずなのに……なぜか、目が離せなかった。一生懸命で、今にも壊れそうな顔をして自分を慰めてる君を見てたら、なんだか、私の中にあった『退屈』が全部吹き飛んじゃったの」
僕は黙って彼女の言葉を聞いていました。 彼女もまた、僕と同じように、何かから逃げ出したくて、あるいは何かを見つけたくて、あの夜の温泉にいたのだと知って、胸の奥が締め付けられるようでした。
「ごめんね、あんな酷いこと言って。私、本当は男の人とあんなことしたことないのに……。君があまりに綺麗な体をしてて、なんだか、負けたくなかったの。支配してないと、自分の心がバラバラになりそうで」
彼女が顔を上げました。その瞳には、さっきまでの傲慢な支配者の面影は微塵もなく、ただ震えている一人の少女がいました。
「君の『指』……さっき、すごく震えてたよね。私も、今、同じくらい震えてるんだよ」
彼女はテーブル越しに、そっと手を伸ばしてきました。 僕の、旅で日焼けして節くれだった指先に、彼女の白く透き通るような指が触れました。
「ねえ、君のこと、もっと教えて。……名前は? どこから来て、どこに行こうとしてたの?」
僕は、喉のつかえが取れたような気がして、自分のことを話し始めました。 厳格な家で「いい子」を演じてきたこと、卒業式のあとの言いようのない焦燥感、自転車で南へ向かえば、自分が何者かになれると思ったこと。 そして、女性の体に触れるのが、今、彼女の指に触れているのが、人生で初めてだということ。
話し終える頃には、部屋の空気は密やかで、温かいものに変わっていました。 彼女の指が、僕の指を絡めとるようにして握りしめます。
「……そっか。指(ゆび)くんって言うんだ。……私は、結衣(ゆい)」
結衣さんは、僕の指を引き寄せると、自分の頬にそっと押し当てました。 「ねえ、指くん。もう南へ行かなくても、ここで、私と一緒に『初めて』を見つけてくれない?」
テーブルの上には、コンビニで買ったあのLサイズの箱が、静かに出番を待っていました。 僕は、自分の指が伝える彼女の肌の柔らかさに、ただただ、溺れていきました。
「……高校三年間、本当に体操しかしてこなかったんです。朝から晩まで練習で、女子と遊ぶ暇なんてなくて。そのおかげで、大学にはスポーツ推薦で決まったんですけど……」
僕は、自分の不器用な半生をさらけ出すように語りました。結衣さんは、僕の節くれだった、けれど力強い指をじっと見つめながら、相槌を打ってくれました。
「あそこが混浴だってことも、本当に知らなくて。自転車で何日も走って、体も心も極限だったんです。そこに……結衣さんたちが、あんなふうに入ってきて」
僕は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じながら、正直な気持ちを言葉にしました。
「画面の中じゃなくて、リアルの女性の裸なんて、あんなに間近で見たのは初めてで。……数日前からずっと溜まってたのもあって、自分でも抑えが効かなくなって……。あんな無様なところを見せて、本当にすみませんでした」
深く頭を下げる僕の頭上に、結衣さんの柔らかな笑い声が降ってきました。
「……指くんって、本当に真っ直ぐなんだね」
彼女は僕の指を握る手に、少しだけ力を込めました。
「体操一筋で、推薦で大学へ行くくらい頑張ってきた指……。そんな指が、私のせいであんなに震えてたんだ。……そう思ったら、なんだか私、さっきよりもずっと、胸が苦しくなってきた」
結衣さんは立ち上がり、僕の隣に移動してくると、肩が触れ合う距離で座り直しました。 部屋の照明を、彼女がリモコンで少しだけ落とします。 薄暗くなった部屋の中で、彼女の肌の白さがより際立ち、あの露天風呂で立ち上っていた湯気のような、幻想的な美しさが漂いました。
「指くんの初めての相手が、あんな意地悪な私でよかったのかな。……でも、もう逃がしてあげない」
彼女の手が、僕のウィンドブレーカーのファスナーにゆっくりと掛かりました。 「お風呂では私が命令したけど、今は……湊くんのしたいようにして。その体操で鍛えた体で、私を……」
結衣さんの瞳は、もう僕を怯えさせていたあの冷たい色ではありませんでした。 一人の男の子として僕を見つめ、自分を受け入れてほしいと願う、熱い熱い潤みを湛えていました。
僕は、震える指を伸ばしました。 ハンドルのグリップや、鉄棒の冷たい感触ではない。 柔らかくて、温かくて、壊してしまいそうなほど繊細な、本物の女性の肩。 十八歳の春。南へ向かうはずだった僕の指は、今、人生で最も大切な「未知」へと、ゆっくりと触れていきました。
薄暗い部屋のなか、結衣さんのその言葉は、露天風呂で聞いたどの命令よりも艶っぽく、僕の鼓動を跳ね上げさせました。
「でも、お願い。一回、飛ぶところが見たいの……。手助けしてあげるから。自分でしごいて、出して見せて?」
彼女は僕のすぐ隣で膝をつき、上目遣いに僕を見つめてきました。その瞳は、好奇心と、そして自分にだけ向けられる「雄」の絶頂を独占したいという、処女ゆえの無垢な残酷さに満ちています。
「指くん、体力あるもんね。体操やってたんだし……。何回でも、できるんでしょ?」
僕は逃げ場を失いました。けれど、お風呂のときのような屈辱感はありません。むしろ、彼女の期待に応えたい、自分のすべてを彼女の目に焼き付けたいという、激しい衝動が突き上げてきたのです。
僕は震える手で、ズボンをゆっくりと押し下げました。 さっきよりもさらに猛々しく、熱く脈打つ僕の現実は、彼女の目の前で跳ねるように露わになりました。結衣さんは「あ……」と吐息を漏らし、その巨大な質量に一瞬身を引きましたが、すぐに吸い寄せられるように顔を近づけてきました。
「……すごい。さっきより、ずっと熱そう」
彼女は自分の手を僕の手に重ねてきました。 「ねえ、やってみて。私がこうして、横で見ててあげるから」
彼女の白く細い指が、僕の指の上に重なります。彼女の手助けを受けながら、僕は自分自身を握りしめました。体操で培った握力は、今は自分を追い詰めるための快楽へと転じます。 彼女の顔がすぐ近くにあります。彼女の甘い吐息が、僕の膨らむ血管に直接かかり、脳の芯が痺れていくのがわかりました。
「もっと、激しくしていいよ……。私、ちゃんと見てるから」
結衣さんは僕の胸筋や腹筋に空いた方の手を這わせ、筋肉の躍動を指先で楽しんでいるようでした。見つめられている。自分の最も恥ずかしい、けれど最も力強い瞬間を、この綺麗な女性に捧げている。その背徳感が、数日間溜まっていたエネルギーに火をつけました。
「っ、……あ、結衣さん……っ!」
「いいよ、指くん……出して。全部、見せて……」
視界が白く点滅しました。 僕は彼女の目の前で、全身の筋肉を鋼のように硬直させました。 体操の着地の瞬間の、あの極限の集中力に似た感覚。 けれど、そこから解き放たれたのは、重力に逆らう跳躍ではなく、僕のなかに溜まっていた、熱く、白い、僕自身の生命そのものでした。
それは彼女の驚嘆の吐息とともに、彼女の指先や、僕の腹筋、そして二人の間の空気を切り裂くようにして、鮮やかに飛び散りました。
「……すご……い……」
結衣さんは、放心したようにその光景を見つめていました。 飛び散った僕の証が、彼女の白い指にひとしずく、光を反射して輝いています。 彼女はその指をそっと口元に運び、僕から目を逸らさないまま、ゆっくりとその味を確かめるように舌を動かしました。
「本当に……こんなに飛ぶんだね」
彼女の瞳に、新たな熱が灯りました。 一回目が終わったばかりの僕の「そこ」は、彼女の熱い視線と指先に触れられ、休む間もなく、二回目の胎動を始めていました。
「ねえ、……次は、私に手伝わせて。指くんの指、今度は私の『ここ』に触れてほしいの」
結衣さんは、自分のシャツのボタンに指をかけ、僕を深い、深い夜の淵へと誘い込みました。
「……指くん、すごい顔してる」
結衣さんは、僕の目の前で飛び散ったばかりの熱い余韻を指先でなぞりながら、艶っぽく微笑みました。 一回目の絶頂を終えたばかりの僕は、肩で息をしながら、未だかつてない感覚の奔流に飲み込まれていました。けれど、その火照った体のまま、僕は彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返しました。
「結衣さん……僕に、教えてください。どこを触ればいいのか、どうすれば結衣さんが気持ちいいのか。……自分で、やって見せてほしいです」
僕の不器用で、けれど真っ直ぐな言葉に、結衣さんは一瞬だけ驚いたように目を見開きました。そして、少しだけはにかんだような、けれど覚悟を決めたような顔をして、ゆっくりと自分のシャツの残りのボタンを外しました。
「……指くんって、本当にズルい。そんな顔で言われたら、断れないじゃない」
彼女は下着もすべて脱ぎ捨て、月明かりと間接照明が混じり合う床の上に、その真っ白な肢体を横たえました。 体操で鍛えられた僕の肉体とは正反対の、柔らかくて、たおやかな曲線。 彼女は少し震える手で、自分の内腿をゆっくりと割り、その中心にある、まだ誰にも許したことのない「秘密の花びら」に指を添えました。
「よく見てて……。ここをね、こうやって、優しくなでるの」
彼女の細い指が、自身のそこを円を描くようにゆっくりと愛撫し始めました。 「あっ……ふ、ん……っ」 結衣さんの口から、露天風呂のときよりもずっと甘く、湿った声が漏れます。 彼女の指が動くたびに、そこが蜜を含んだように艶やかに光り、ひっそりと開いていく。
「こうして、少しずつ……熱くなってきたら、今度は中の方に……。指くんの指、あんなに強くて器用なんだから、きっとすぐ上手になるよ」
彼女は自分の指を、狭い隙間へとゆっくりと沈めていきました。 自分の体に指を沈める彼女の表情は、苦しそうで、けれど堪らなく幸せそうで、僕はその光景から一秒たりとも目が離せませんでした。 「指」と呼ばれ、何も知らなかった僕が、今、一人の女性が「女」になっていく聖域を、一番近くで学んでいる。
「指くん……、次は……君の指でやって。私、もう……自分じゃ、我慢できない……」
結衣さんは顔を真っ赤にして、僕の方へ手を伸ばしました。 僕は膝をついたまま彼女に近づき、教わったばかりの「愛し方」をなぞるように、おずおずと指を伸ばしました。 初めて触れる、女性の最も熱くて、最も柔らかい場所。
僕の指先が彼女の熱に触れた瞬間、結衣さんの体がビクンと大きく跳ねました。
「もっと近くで見たい。その熱を、その形を、一瞬たりとも見逃したくない」
その一心で身を乗り出したとき、僕の視界は彼女の真っ白な太ももで埋め尽くされました。 甘い石鹸の香りと、お湯の残り香。そして、結衣さんという一人の女性が放つ、濃厚で官能的な「命の匂い」が鼻腔を突き抜けます。
僕はただ、教わった通りに指を動かすつもりでした。けれど、目の前でひっそりと、けれど熱烈に僕を招き入れているその場所があまりに瑞々しく、愛おしくて、気づいた時には吸い寄せられるように顔を近づけていました。
「あっ……指くん、どこ……えっ……?」
結衣さんの戸惑う声が頭の上で響きましたが、僕は止まれませんでした。 指よりも先に、僕の舌が、その震える花びらの端に触れていました。
「ひゃあ……っ!!」
結衣さんの腰が大きく跳ね、シーツを掴む指先に力がこもります。 初めて触れる、女性の粘膜の熱。それはお風呂で彼女に口付けられた時のあの衝撃を、何倍にも膨らませたような強烈な感覚でした。 柔らかくて、少しだけ切ない味がして、そして驚くほど熱い。
僕は夢中で、そこを這わせました。 体操で培った集中力が、今は彼女を喜ばせるためだけに研ぎ澄まされていきます。 どこをどうなぞれば、彼女がより高く、より甘い声を上げるのか。 僕の舌先がその核に触れるたび、結衣さんは「あ、あ……っ、だめ、そんなの知らないっ……!」と、狂おしいほどに身をよじらせました。
「指くん……指くんの、舌、……熱いよ。すご……っ、おかしくなっちゃう……」
彼女の指が僕の髪を強く掴みました。 拒絶ではなく、もっと深く、もっと奥まで来てほしいという切実な願いが、その指先から伝わってきます。 僕は彼女の脚を割り、さらに深くその甘い深淵に顔を埋めました。 「指」と呼ばれ、教科書とハンドルしか知らなかった僕の口が、今、一人の女性を絶頂の淵へと追い詰めている。
結衣さんの呼吸が激しくなり、内腿が小刻みに痙攣し始めました。 「あ、くる……っ、ゆびくん、まって、まって……っ! ああぁぁぁっ!!」
彼女は僕の頭を抱え込むようにして、大きくのけぞりました。 僕の顔に、彼女の熱い吐息と、溢れ出した喜びのしずくが降り注ぎます。 彼女が自分でも「入るわけない」と言っていたその場所が、今は僕を受け入れる準備を終えたかのように、艶やかに、そして柔らかく波打っていました。
結衣さんは力なく横たわり、涙で潤んだ瞳で僕を見つめました。 「……指くん、反則だよ。そんなこと、教えなかったのに……」
彼女は弱々しく笑いながら、枕元に置かれたあの「Lサイズの箱」に手を伸ばしました。
コンビニの袋から出された、あの四角い小さな箱。結衣さんは、まだ震えの残る手でそれを手に取り、中から一袋を取り出しました。
「……湊くん。これ、付けてもいい?」
彼女の声は、少し掠れていて、けれど僕の全身を支配するような不思議な力を持っていました。カサカサというアルミパックの小さな裂ける音が、静まり返った部屋の中で、まるで運命の幕が開く音のように響きました。
彼女の指先が、中から滑り出した薄いゴムの輪を慎重に摘み上げます。 初めて手にする、男性を守るための、そして二人を繋ぐための小さな膜。 結衣さんは、僕の膝の間に割り込むように座り直すと、火傷しそうなほど熱く脈打っている僕の「そこ」に、そっと指を添えました。
「あ……」
彼女がその輪を僕の先端に当てた瞬間、僕の背筋に稲妻のような刺激が走りました。 「Lサイズにして、よかったみたいだね。……本当に、大きい」
「……あれ? これ、どっちが表?」 「……えっと、こっちじゃない? いや、でも説明書の図だと……」
結衣さんが袋から取り出した薄いゴムの輪を手に、僕たちは完全にフリーズしてしまいました。 露天風呂でのあの圧倒的な支配者の顔も、僕がさっき見せた「雄」としての勢いも、どこかへ吹き飛んでいました。目の前にあるのは、二人とも一度も触れたことがない「未知の道具」です。
「指」と呼ばれた僕も、体操の技なら何百回と練習してきましたが、これの付け方は教科書にも載っていませんでした。 「……なんか、無理やり付けて破けたら怖いよね」 「うん。……ちょっと、ちゃんと調べようか」
裸のまま、僕たちはベッドの上でノートパソコンを開きました。 青白い画面の光に照らされて、僕の鍛え上げられた肩と、結衣さんの華奢な肩がぴったりと並びます。
検索窓に「ゴム 付け方」と打ち込む僕。 出てきた解説サイトや動画を、二人で食い入るように見つめました。 「あ、空気を抜くんだって」 「へぇー……あ、これ逆だ。さっき私、逆にしようとしてた!」 「危なかったね(笑)」
あまりにマヌケで、でもどうしようもなく真剣な自分たちの姿が急に可笑しくなって、どちらからともなく「ふふっ」と笑いが漏れました。 さっきまでの極限の緊張や背徳感、そして恐怖。 そんなものが、この小さな画面の前で、温かい「日常」に溶けていくのがわかりました。
「指くん。……私たち、本当に初めてなんだね」
結衣さんが、画面から目を離して僕を見つめました。 そこにはもう、僕を脅していた女性も、恐怖に震えていた少女もいませんでした。ただ、僕のことを大好きになってくれようとしている、等身大の「結衣さん」がいました。
「……はい。でも、よかったです。結衣さんと一緒で」
僕はノートパソコンの画面を閉じ、彼女の頬にそっと指を添えました。 体操で、泥だらけのハンドルで、そして彼女の熱で。 今日一日でいろんなものを知った僕の指が、今はただ、彼女の柔らかさを愛おしむように。
どちらからともなく、顔が近づきました。 触れるだけの、けれどお湯や指先よりもずっと熱くて深い、初めてのキス。 ミントの香りがする彼女の唇は、甘くて、少し震えていました。
「……うん。もう大丈夫。付け方、わかったから」
結衣さんは僕の首に腕を回し、もう一度、深く、深く唇を重ねました。 Lサイズの箱も、体操の推薦も、自転車の旅も。 すべての理由が、この瞬間のためにあったのだと、僕は確信していました。
「……準備、できたよ」
結衣さんが、調べたばかりの手つきで慎重に僕へと「それ」を被せてくれました。薄い膜越しに伝わる彼女の指先の震えが、僕の鼓動をさらに速めます。
「指くん、こっちに来て……」
彼女はベッドに仰向けになり、ゆっくりと脚を開きました。月明かりに照らされた彼女の肌は、まるで真珠のような光沢を放ち、そこから溢れ出す瑞々しい熱が、部屋の空気を濃密に支配しています。
僕は彼女の両脚の間に膝をつきました。体操で鍛えられた僕の腕が、彼女の華奢な体を囲い込むように支えます。 「指」が彼女の太ももの内側に触れると、結衣さんは「っ……」と短く息を呑み、僕を見上げました。潤んだ瞳には、期待と、そして「処女」を失うことへの根源的な恐怖が混じり合っています。
「指くん……優しく、してね……」
僕は頷き、彼女の唇に、安心させるように何度も小さなキスを落としました。 先端が、彼女の最も柔らかい場所に触れました。先ほど僕の舌で熱く湿らされたそこは、僕を受け入れる準備を終えていましたが、それでも僕の「Lサイズ」の質量を前にして、驚いたように小さく震えています。
「あ……っ、待って……」
入り口が押し広げられる感覚に、彼女の顔が少しだけ苦痛に歪みました。僕は動きを止め、彼女の耳元で囁きました。 「痛い……? やめる?」 「……ううん。……いいの。指くんに、全部あげたいから……。ゆっくり、入ってきて」
彼女の指が僕の背中に深く食い込みました。 僕は覚悟を決め、ゆっくりと、けれど確かに腰を沈めました。 内側から押し返してくるような、強い抵抗感。それが彼女の「守られてきた証」なのだと理解した瞬間、僕の中に言いようのない愛おしさがこみ上げました。
「っ、……ふ……ぅ、……ん……っ!」
彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれました。 膜が破れ、道が拓かれる。 その瞬間、僕たちは互いの人生の最も深い場所に、消えることのない足跡を刻み込みました。 僕を締め付ける、あまりにも熱くて狭い、未知の感覚。 それはハンドルを握りしめたときのような硬質な感覚ではなく、僕のすべてを包み込み、溶かしてしまうような、慈愛に満ちた熱さでした。
「……指くん。……入った、ね……」
結衣さんは涙を浮かべたまま、幸せそうに微笑みました。 痛みから悦びへ。 彼女の呼吸が徐々に整い、代わりに僕の動きに合わせて小さな吐息が漏れ始めます。 僕は彼女を壊さないように、けれど本能に突き動かされるまま、ゆっくりとリズムを刻みました。
体操の跳馬で宙を舞うときのような、無重力の感覚。 でも、これは一人で飛ぶものじゃない。 彼女の鼓動を、体温を、そして時折漏れる「あ、……っ、指くん……っ」という甘い名前を呼ぶ声を感じながら、僕たちは暗闇の中で一つに溶け合っていきました。
やがて、二人の体温が限界まで高まったとき。 僕は彼女のすべてを抱きしめ、彼女は僕を内側から強く抱きしめ返しました。 十八歳の春、僕たちの「卒業式」は、誰にも知られないこの静かなワンルームで、静かに、そして激しく完結しました。
嵐が去った後のような静寂の中、僕たちは重なったまま、いつまでも互いの心音を聞いていました。
カーテンの隙間から差し込む柔らかな春の光が、絡み合った二人の肌を白く照らしていました。
最初に目を覚ましたのは、僕でした。腕の中に伝わる、自分とは違う柔らかで温かな重み。昨夜の出来事が夢ではなかったことを、シーツに残るかすかな香りと、体の節々に残る心地よい気怠さが教えてくれました。
僕がそっと彼女の髪に触れようとしたとき、結衣さんの長い睫毛が震え、ゆっくりと瞳が開きました。
「……おはよう、指くん」
寝起きの少し掠れた声。彼女は恥ずかしそうに微笑むと、僕の胸元に顔を埋め、ぎゅっと抱きついてきました。その瞬間、昨日あんなに激しくぶつかり合ったはずなのに、僕の身体の奥から再び熱い火が灯るのを感じました。
それは、どちらからともなく始まった自然な誘いでした。
昨夜の「儀式」のような緊張感や恐怖は、もうどこにもありません。代わりにあるのは、お互いの体の隅々までを知り尽くしたいという、純粋で深い渇望でした。
「指くん……、昨日よりも……もっと熱いよ」
結衣さんが僕の首筋に腕を回し、吐息を漏らしました。 僕の「指」は、もう迷うことなく彼女の曲線を描き、彼女もまた、僕の引き締まった筋肉の躍動を指先で楽しむように愛撫してくれました。
明るい光の中で見る彼女の肌は、夜よりもずっと瑞々しく、僕を誘っていました。 一度繋がった絆は、二人の動きを驚くほど滑らかにします。 「付け方」をもう一度確認し合う必要もありません。 僕たちは、言葉にならない吐息と柔らかな接触を重ねながら、昨夜よりもずっと深く、そして鮮やかに、二度目の絶頂へと駆け上がっていきました。
「……あと10個、あるんだよね」
結衣さんがベッドの脇に置かれたあの箱を指差して、少しいたずらっぽく笑いました。コンビニで買ったときはあんなに重々しく感じられた一箱が、今は僕たちを繋ぎ止めるための、大切なパスポートのように見えました。
僕は、彼女の柔らかい肩を引き寄せ、力強く頷きました。
「この箱を使い切るまで、がむしゃらに抱きます。……結衣さんのこと、もっと、もっと知りたいから」
「がむしゃらって……指くんらしい」
彼女は可笑しそうに、でも本当に嬉しそうに目を細めました。 十八歳の春、あてのない旅に出た僕の「指」は、今、彼女の肌の温もりを離したくないと叫んでいます。推薦で決まった大学のこと、これから始まる新生活、そして僕たちの関係。 難しいことは、全部この10個を使い切った後でいい。
今はただ、体操で鍛え上げたこの体のすべてを使って、彼女が僕に教えてくれた「愛する」という感覚を、一つ一つ確かめ合いたい。
「……ねえ、指くん。休憩はなしだよ?」
彼女が僕の首筋に再び手を回しました。 窓の外では、春の風が新しい季節の訪れを告げていました。 駐輪場で僕を待っている泥だらけのマウンテンバイクには、まだしばらく出番は来そうにありません。
僕たちは再び、シーツの海へと沈んでいきました。 一秒ごとに、昨日よりも深く、昨日よりも情熱的に。 僕の旅の目的地は、地図のどこにも載っていない、この温かな部屋の、彼女の腕の中にありました。
光溢れる朝の情事。 それは、昨日までの「何も知らなかった僕たち」への本当の別れであり、新しい二人としての、輝かしい出発の合図でもありました。
やがて、重なり合ったまま呼吸を整えていた結衣さんが、僕の耳元で小さく囁きました。
「ねえ、指くん。……この後の旅、私もついて行ってもいい?」
完
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