
指は、自分の容姿が周囲に与える影響にほとんど関心がありません。若い看護師たちが頬を赤らめて挨拶をしても、視線を落としたまま小さく頷くか、あるいはカルテを見つめたまま通り過ぎるだけです。しかし、その素っ気なさがかえって「高嶺の花」としての魅力を高め、院内ではアイドルのような扱いを受けています。
手術室に入ると、その「綺麗な顔」はマスクに覆われ、唯一露出した鋭い瞳だけがすべてを支配します。モデルのようなスマートな体躯は、執刀の瞬間には驚くほど精密で力強いマシーンへと変貌するでしょう。周囲の医師たちが数時間かかると思い込んでいた難手術を、指はまるで作法を知り尽くした芸術家のように、無駄のない動きで短時間のうちに終えてしまいます。
指の生活は、誰もが羨むような完璧な調和に満ちてい 都心の夜景を一望できる超高級マンションに居を構え、選び抜かれた上質なインテリアに囲まれて暮らしています。
彼にとって、驚くほどの高収入は単なる贅沢のためではなく、自らの「天才」を維持するための環境作りに注ぎ込まれます。指先を守るための徹底した湿度管理や、心身を研ぎ澄ませるための静寂。何不自由ない暮らしは、彼が最高難度の手術に挑むための聖域のようなものです。
若い看護師たちがため息をつくそのスマートな体は、高級な仕立てのスーツに包まれ、病院の駐車場には洗練されたスポーツカーが停まっている。独身である彼が、その莫大な富を自分の美学のためだけに惜しみなく使う様子は、周囲から見れば冷徹なほどに完璧で、どこか浮世離れした美しさを放っています。
指は、病院の誰もが「夜な夜なモデルのような女性を抱いているだろう」と疑わないほど、私生活も華やかで完璧に見えています。しかし、その高価なスラックスの下には、本人も持て余すほどの「超一流の業」が隠されている。彼は医者として自分の肉体の構造を誰よりも理解しているからこそ、その異常なまでの勃起力や持続力、そして「デカ物」と称されるほどの質量が、生物学的にどれほど突出しているかを自覚し、密かに困惑しているのです。
彼が三十路まで未経験なのは、決して魅力がないからではありません。あまりにも美しく、あまりにも天才であるがゆえに、周囲の女性たちが「自分なんかが相手にされるはずがない」と勝手に気後れして、誰も踏み込めなかったという皮肉な理由でしょう。あるいは、彼自身が潔癖でストイックすぎるあまり、指先一つ、髪の毛一筋に至るまで完璧な自分と釣り合う相手を、無意識のうちに求めすぎていたのかもしれません。
その出会いは、完璧な秩序の中に生きてきた指の人生を根底から揺さぶる、激しい衝撃だったに違いありません。
病院という清潔で静謐な聖域に、場違いな金属音と罵声を響かせて現れた金髪の少女。彼女は傷だらけの仲間を連れてきたのか、あるいは自分自身が騒動に巻き込まれたのか、その瞳には大人への不信感と剥き出しの生命力が宿っています。指がこれまで相手にしてきた、自分を崇拝する看護師たちや、礼儀正しいエリート層とは正反対の、粗野で、凶暴で、それでいて眩しいほどに純粋な存在です。
指は、彼女の髪の色や言葉遣いに眉をひそめながらも、医師としての本能で彼女の内に眠る圧倒的な「熱」を感じ取ります。一方で、18歳の彼女の方は、指の透き通るような白い肌や、女と見紛うばかりの端正な顔立ちを「スカした野郎」と鼻で笑い、挑発的な態度を崩しません。
しかし、一触即発の空気の中で、指が偶然彼女の肌に触れた瞬間、これまで彼が抑え込んできた「人一倍の性欲」と「超一流の肉体」が、かつてないほどの咆哮を上げます。理性では「子供だ」と撥ねつけようとしても、彼のデカ物はその野性的な金髪ヤンキーの放つフェロモンに、暴力的なまでの反応を示してしまう。
30年間、高潔な天才外科医として積み上げてきたプライドが、たった18歳の、世の中から爪弾きにされた少女の前で崩壊し始める。指は、自分の指先が彼女に触れたがっていることに気づき、戦慄するはずです。
深夜の緊急外来。自動ドアが激しく開き、静寂が切り裂かれました。
「おい、医者はどこだ! さっさと診ろよ!」
現れたのは、雨に濡れて金髪が頭に張り付いた、特攻服のような上着を羽織った十八歳の少女でした。彼女は単車で転倒したのか、細い太ももに深い裂傷を負い、鮮血が床に滴っています。当直だった指は、眉ひとつ動かさず、そのスマートな体躯を揺らして彼女の前へ立ちました。
「静かに。ここは病院だ」
女と見紛うばかりの端正な顔、そして氷のように冷徹な瞳。少女は一瞬、指の圧倒的な美しさに言葉を失いましたが、すぐに尖った声で言い返しました。
「あぁ? なんだよその綺麗なツラ。まともに治療できんのかよ」
指は答えず、無造作に彼女の傷口付近の肌に触れました。その瞬間、彼の背筋に電流のような衝撃が走ります。看護師たちの柔和な肌とは違う、雨と排気ガスの匂いが混じった、野性的で熱い、若さゆえの弾力。
三十年間、一度も揺らぐことのなかった「天才」の理性が、その肌の感触ひとつで音を立てて崩壊し始めました。スラックスの中で、これまで一度も実戦を知らなかった彼の「デカ物」が、かつてないほどの硬度を持って膨張し、生地を内側から猛烈に押し上げます。
「……奥の処置室へ。私が直接縫う」
指の声は、わずかに掠れていました。彼は必死に、白衣でその異様なまでの勃起を隠しながら、彼女を誘導します。処置室のライトの下、横たわる少女の無防備な脚と、挑発的にこちらを見上げる瞳。指先は精密な機械のように動いていますが、彼の頭の中では、人一倍の性欲が獣のように暴れ回っていました。
処置室の眩いライトの下、指の細く長い指先が、魔法のように鮮やかに動いていました。
麻酔の針を通す瞬間さえ彼女に痛みを感じさせず、裂けた肉を寸分の狂いもなく縫い合わせていくその手つきは、もはや医療というよりは神聖な儀式のようでした。金髪の少女は、痛みを忘れてその光景に見入っていました。自分たちのような「はみ出し者」をゴミを見るような目で見る大人ばかりの世界で、この透き通るような肌を持つ男だけは、一切の偏見なく、ただひたすらに自分の体と向き合っている。
縫合を終え、指が手袋を脱ぎ捨てたとき、少女の胸の中に生まれて初めての感情が突き上げました。
「……すげえ。あんた、マジで天才なんだな」
少女はベッドから身を乗り出し、指の白衣の袖を強く掴みました。見上げた先にある、彫刻のように整った指の横顔。鋭い瞳。至近距離で嗅ぐ、清潔な消毒液と高級な石鹸が混じった彼の香りに、彼女の心臓は激しく跳ねました。
一方、指は内側で必死の葛藤を続けていました。袖を掴む彼女の手から伝わる熱。スラックスの中では、相変わらず「デカ物」が猛り、今にも白衣を突き破らんばかりの勢いで自己主張しています。三十年間、鉄の意志で抑え込んできた性欲が、この無邪気で乱暴な少女の視線一つで、制御不能な領域に達していました。
「終わったなら、さっさと帰れ。もう無茶はするな」
指はわざと冷たく言い放ち、彼女から視線を逸らしました。膨張しきった股間の違和感を隠すため、背を向けてカルテを書き始める彼の背中は、どこまでもスマートで、冷徹な美しさを保っています。
しかし、少女の瞳にはもう、彼以外のものは映っていませんでした。
「ねえ、先生。……名前、なんてーの? 私、またここに来るわ。怪我してなくても、会いに来る」
ヤンキー特有の真っ直ぐな、そして熱烈な告白。完璧な生活、完璧なキャリア、そして完璧に隠し通してきた「雄」としての本能。指は、ペンを握る指先がわずかに震えるのを感じながら、背中越しに答えました。
「……指(ゆび)だ。好きにしろ」
これが、すべてを手に入れたはずの天才外科医が、初めて一人の少女に「支配」され始める瞬間でした。
彼女が嵐のように去っていった後、指は誰もいない診察室で、深く椅子に体を預けました。
いつもなら、静寂は彼にとって最も心地よい報酬のはずでした。しかし今、耳の奥には彼女のぶっきらぼうな声が残り、鼻腔には微かに、あの安っぽい煙草と雨の匂いが混じった「生命の気配」がこびりついています。
彼はふと、自分の右手を見つめました。数多の難手術を成功させ、巨万の富を築いてきた、美しく洗練された指先。その指が、今も微かに痺れているような錯覚を覚えます。
(……喜んでいるのか、私は)
自分の中に芽生えた感情の正体に気づき、指は驚愕しました。 これまで、数え切れないほどの女性から羨望の眼差しを向けられ、愛の告白を受けてきました。けれど、それらはすべて「天才外科医」という肩書きや、この「綺麗な顔」という記号に向けられた、型通りの賞賛に過ぎませんでした。
しかし、あの金髪の少女はどうでしょう。彼女は彼のステータスなど見向きもせず、ただ目の前で自分の足を救った「指」という男の腕に、魂を揺さぶられていました。打算も、お世辞もない、剥き出しの好意。
三十年間、清潔な培養液の中で生きてきたような彼の人生に、泥だらけのまま土足で踏み込んできた彼女の存在が、不思議と不快ではありませんでした。むしろ、硬く閉ざされていた心の奥底が、春の氷が解けるように、瑞々しい喜びで満たされていくのを感じたのです。
「……ふっ、馬鹿げている」
独りごちた彼の口元には、自分でも見たことがないような、柔らかく、どこか幼い微笑が浮かんでいました。
同時に、その精神的な高揚に呼応するように、スラックスの下の「デカ物」が、再びズシリとした重みを増していきます。それは、これまでの行き場のない欲求不満とは違う、もっと根源的な、愛しいものを求める「雄」としての熱い疼きでした。
指は、デスクに置かれた高級な万年筆を強く握りしめ、自分に言い聞かせるように呟きました。
「次に彼女が来たら……どう処置すべきか」
それは医師としての診断ではなく、一人の男として、彼女をどう迎え入れ、どう愛でるべきかという、人生で初めての「難問」に挑む決意のようでもありました。
彼女の宣言は嘘ではありませんでした。翌日から、静かな院内に場違いなエンジンの回転音が響き、金髪をなびかせた少女が律儀に外来へと現れるようになります。
しかし、指は彼女の前に姿を現しません。
彼はあの日以来、あえて彼女の担当を後輩の若い医師に任せ、自分は遠く離れた執刀医室や特別病棟に身を置いていました。処置室のモニター越しに、あるいは廊下の陰から、受付で「指先生は?」と不満げに周囲をキョロキョロと見渡す彼女の姿を、ただ黙って見つめているだけです。
それは、彼なりの防衛本能でした。 彼女の姿を見るだけで、心臓の鼓動は早まり、医師として保つべき冷静さが指先から失われていく。そして何より、白衣の下で制御不能なほどに猛り狂う「デカ物」の存在が、彼にプロフェッショナルとしての矜持を保つことを許さなかったのです。
後輩の医師から「あの金髪の子、毎日先生を指名してくるんですよ」と苦笑混じりに報告を受けるたび、指は無表情を装いながらも、内側では狂おしいほどの独占欲と、自嘲的な喜びを噛み締めていました。
(毎日来ているのか。私のいない、この退屈な病院に……)
彼女が消毒を終え、不機嫌そうに肩を落として帰路につく後ろ姿を、指は高層階の窓から見下ろします。その瞬間、彼の頭をよぎるのは、医学書には載っていないような濃密な空想でした。もし、今すぐ彼女をこの部屋に呼びつけたら。その細い腰を引き寄せ、三十年間誰にも触れさせたことのない自分の「超一流」を彼女に刻み込んだら、一体どんな顔をするだろうか。
高級な腕時計が刻む規則正しい音だけが響く部屋で、指は自分の熱い溜息を自覚します。
彼女に会いたい。その熱い肌に、もう一度だけ触れたい。 医師としての理性が、孤独な天才の殻を内側から突き破ろうとしていました。
一週間の空白は、指にとって永遠にも似た地獄のような時間でした。毎日のように病院に現れる彼女の気配を遠くに感じながら、執務室で独り、高鳴る鼓動を抑えつける日々。しかし、運命はあっけなく、そして必然のように彼を彼女の前へと引き戻しました。
「……今日だけだ。担当医が不在のため、私が代わる」
処置室のカーテンを開けた指の姿に、ベッドに座っていた少女の瞳が、一瞬でひまわりのようにパッと輝きました。
「なんだよ、やっと出てきた。逃げてんのかと思ったぜ」
生意気な口を叩く彼女に対し、指は何も答えません。というより、答えられなかったのです。至近距離で見る彼女の肌は、一週間前よりもさらに瑞々しく、放たれる熱量は指の理性を容赦なく焼き尽くそうとしていました。
指は震える心を押し殺し、白衣を翻して彼女の前に膝をつきました。スマートな体躯を折り曲げ、彼女の太ももにそっと触れます。
「……抜糸する。動くな」
極細のピンセットと鋏を操るその指先は、世界を救う天才のそれです。しかし、今日ばかりはその「超一流」の技術も、己の内に荒れ狂う獣を抑え込むために全神経を動員していました。
ピン、と糸を切るたびに、指先が彼女の柔らかな肌に微かに触れます。そのたびに、彼のスラックスの中では、一週間溜め込みに溜め込んだ「デカ物」が、過去最大級の猛りを見せていました。白衣の布地がはち切れんばかりに持ち上がり、自分でも驚くほどの熱量と硬度が、彼の腰を突き上げています。
もし今、彼女がこの白衣の下を覗き見れば、この端正な顔の外科医が、どれほど野蛮な「雄」の象徴を隠し持っているかを知ることになるでしょう。
「終わった。……綺麗に治っている」
指が処置を終え、立ち上がろうとしたその時です。少女が、彼の白衣のポケットを掴んで引き止めました。
「なあ……。先生って、本当に人間かよ。冷たすぎるんだよ」
そう言って見上げてくる彼女の潤んだ瞳には、怒りと、それ以上の切ない恋心が混じり合っていました。自分を避けていた指に対する、彼女なりの精一杯の抗議。
その瞬間、指の中で何かが音を立てて切れました。嫌な気分どころか、彼は今、この金髪の少女をこのまま連れ去り、誰もいない場所で自分のすべてを曝け出したいという、狂おしいほどの情熱に突き動かされていました。
「……明日、この病院の裏に来い。車を出してやる」
それが、三十歳の童貞である天才外科医が、人生で初めて、一人の女に向けて放った「誘い」の言葉でした。
病院の裏口、街灯の届かない暗がりに、指の愛車である漆黒の高級スポーツカーが静かに滑り込みました。そこにはいつも以上に気合の入った、けれどどこか落ち着かない様子の金髪の少女が立っていました。
彼女が車内に乗り込んだ瞬間、狭い空間は甘い香水と、若々しい熱気で一気に満たされます。
「……待たせたな」
指の声は、自分でも驚くほど低く響きました。ダッシュボードの淡い光に照らされた彼の横顔は、彫刻のような美しさを保っていましたが、ハンドルを握る指先には隠しきれない力がこもっています。
車が滑らかに走り出すと、車内には重厚な静寂が訪れました。高級車特有の静粛性が、二人の鼓動の音さえ際立たせます。少女は窓の外を流れる夜景を眺めるふりをしていましたが、その視線は時折、隣に座る指の端正な横顔や、シフトレバーを操る細く長い指先へと注がれます。
「……先生。あたし、マジで来ると思わなかった。あんたみたいな凄い人が、あたしなんかとさ」
少女がぽつりと零した言葉に、指は思わずアクセルを踏む足に力を込めました。 凄い人、天才、綺麗な顔。世間が自分に貼るレッテルなど、今の指にとっては、スラックスの中で猛り続けるこの「暴力的な衝動」を前にしては何の意味も持ちません。
「……私の方こそ、お前を呼んでしまったことを後悔している」
「えっ……?」
「理性が、保てそうにないからだ」
指が車を停めたのは、都心の喧騒から切り離された、彼が所有するタワーマンションのプライベートガレージでした。エンジンを切ると、車内は完全な密室となります。
指はシートベルトを外すと、ゆっくりと助手席の方へ体を向けました。スマートな体躯が彼女を覆い隠すように迫り、至近距離で見つめ合う形になります。少女の瞳に、戸惑いと、それ以上の期待が混じった熱が宿るのが分かりました。
「先生……、顔、近いよ……」
彼女の小さな囁きが引き金でした。指は、これまで三十年間、手術器具以外には決して許さなかったその神聖な指先を、彼女の金髪に這わせました。そして、もう一方の手は、自分でも制御できないほどに熱く、硬く膨張した股間を隠すこともせず、彼女の細い腰を引き寄せます。
人一倍の性欲。超一流の肉体。そして、初めて知る恋心。 それらすべてが混ざり合った指の熱い吐息が、彼女の唇に触れようとしていました。
「……私は、お前が思っているような、綺麗なだけの男じゃないぞ」
その警告は、自分自身に向けられた最終通告のようでもありました。
エレベーターを降り、指が指紋認証で自宅の扉を開けると、そこには生活感の一切を排除した、静謐で豪華な空間が広がっていました。しかし、一歩足を踏み入れた瞬間に、指の心臓はこれまでの人生で最も激しい警鐘を鳴らし始めました。
彼はこれまで、生死の境にある患者の心臓をその手で握り、一ミリの狂いも許されない執刀を幾度となく完遂してきました。しかし今、目の前にいる、少し緊張した面持ちでリビングを見渡す十八歳の少女を前に、その「天才の指先」が、情けないほどに震えていたのです。
「……何か、飲むか」
指は、ワインセラーへ向かおうとしましたが、足がもつれそうになりました。 三十年間、一度も女性を「女」として抱いたことがない。医学書で構造は知り尽くしている。しかし、その教科書通りの知識が、目の前の金髪の少女が放つ、生々しく熱い生命力の前では全く役に立たないことを彼は痛感していました。
「先生、そんなのいいよ」
少女が背後から、彼の広い背中にそっと抱きつきました。その瞬間、指の体は石のように硬直しました。背中に伝わる彼女の胸の柔らかさ、そして幼い体温。
指の中で、限界まで引き絞られた弦が弾けるように、彼は彼女を抱き寄せました。リビングのソファに倒れ込むように重なりましたが、その所作は、普段のスマートな彼からは想像もできないほど不器用で、荒々しいものでした。
「……待て。私は、どうすればいい……」
端正な顔を苦悶に歪め、指は彼女の首筋に顔を埋めました。人一倍強い性欲が、彼の「デカ物」をかつてないほどに猛らせ、スラックスの生地が悲鳴を上げています。しかし、いざ彼女の服に手をかけようとすると、その「神の手」が、どうやってボタンを外せばいいのかさえ分からず、彷徨うのです。
治療の時のように、冷静に剥くことができない。彼女の肌に触れるたび、自分の中に眠る「雄」としての未熟な部分が露呈し、頭が真っ白になります。
「先生、指……震えすぎだって」
少女が、くすりと笑いました。彼女は、完璧で冷徹なはずの天才外科医が、自分を前にして、初めて自転車に乗る子供のように戸惑っていることに気づいていました。
「……笑うな。私は、本気だ」
指は、焦燥感に駆られて彼女の唇を奪いました。歯が当たるほどの、不器用で、しかし激しい熱を帯びたキス。三十年間溜め込まれたマグマのような欲求が、技術を置き去りにして溢れ出します。
天才外科医・指。 豪華なマンションの静寂の中で、彼は今、世界で一番無力で、世界で一番飢えた「初めての男」として、彼女という未知の深淵へ、震える手で踏み込もうとしていました。
少女の細く柔らかな指先が、指(ゆび)の高級なシャツのボタンに掛かった瞬間、彼は反射的に肩を震わせました。
「先生、落ち着いて。……逃げたりしないよ。お風呂、入ろう?」
その言葉は、まるで高ぶる獣を鎮める飼い主のように優しく、慈愛に満ちていました。彼女に導かれるまま、指は促されるままに腕を上げ、一枚ずつ鎧を剥ぎ取られるように服を脱がされていきます。
いつもは自分が患者の服を切り、命を救うために肌を露出させる側でした。しかし今、逆転した状況の中で、彼は自分がいかに無防備であるかを突きつけられていました。
やがて、最後に残った下着が彼女の手によって膝元まで滑り落ちたとき、ついにその「全貌」が露わになりました。
「……うそ、でしょ……」
少女の動きが、ぴたりと止まりました。 彼女の視線の先にあるのは、指が三十年間、人知れず持て余してきた「雄」としての誇り高き象徴でした。それは、モデルのようなスマートな体躯には不釣り合いなほどの質量を湛え、怒張した血管が浮き上がり、熱い拍動を繰り返しています。
形は神が彫刻したかのように美しく、それでいて暴力的なまでの存在感。三十年という歳月をかけて凝縮されたエネルギーが、今、たった一人の少女という標的を見つけて、猛り狂っていました。
「……すげえ。先生、中身までこんなに……綺麗で、デカいんだ」
少女は驚愕に目を見開きながらも、その瞳には恐怖ではなく、抗いようのない好奇心と愛おしさが灯っていました。彼女は震える手で、そっとその熱い塊に触れました。
その瞬間、指は短く、獣のような声を漏らしました。指先一つで世界を救ってきた男が、少女の掌の熱に触れられただけで、腰が砕けそうなほどの衝撃に襲われたのです。
「……待て、触るな。……まだ、理性が残っているうちに……」
指は掠れた声で懇願しましたが、彼女はもう止まりませんでした。
「いいよ、先生。全部出しちゃいなよ。あたしが、初めての人になってあげる」
豪華な浴室へ続く大理石の床の上で、少女は指の手を引き、優しく一歩を踏み出します。 三十歳の天才外科医。その「指」が、初めてメスではなく愛しい人の肌を震わせ、自分自身のすべてを解放する、至福の時間が始まろうとしていました。
浴室の磨き抜かれたタイルに、彼女が脱ぎ捨てた服が静かに落ちました。
目の前で露わになった十八歳の肢体は、金髪の派手な印象とは裏腹に、驚くほど白く、そしてまだ幼さの残るしなやかさを湛えていました。指は、眩しいものを見るかのように目を細め、その場に立ち尽くしました。解剖学的に知り尽くしているはずの「人体」が、これほどまでに神秘的で、脆く、愛おしいものに見えるのは、彼にとって初めての経験でした。
「ほら、先生も。ぼーっとしないで」
少女は照れくさそうに笑いながら、指の大きな、それでいて繊細な手を取りました。彼女に引かれるまま、湯気が立ち込める浴室へと足を踏み入れます。
温かなシャワーの飛沫が二人の肌を濡らし始めると、指の端正な顔立ちに滴が伝い、濡れた黒髪がその美貌をさらに妖艶に引き立てました。水滴に濡れることで、彼のスマートな体の筋肉のラインが浮き彫りになり、その中心で猛り続ける「デカ物」がいっそう力強く、威厳を放って脈打っています。
指は、震える手でシャワーヘッドを手に取り、彼女の背中に湯をかけました。 「……熱くないか」 「うん……ちょうどいい。先生の手、やっぱり綺麗だね」
彼女が振り返り、指の胸板にその小さな手のひらを添えた瞬間、彼の内に溜まっていた三十年分の熱量が、決壊したダムのように溢れ出しました。
もう、不器用な戸惑いは消えていました。 一度スイッチが入れば、彼は物事の本質を瞬時に見抜く「天才」です。彼女の肌のどこが敏感か、どの角度で触れれば彼女が甘い声を漏らすのか。指先から伝わる微かな震え、瞳の潤み、呼吸の乱れ——。それらすべてを「診断」するように、しかし情熱的な「雄」として、指は彼女を抱き寄せました。
「ああ……先生、そこ……っ」
彼の超一流の指先が、彼女の柔らかな肌を愛撫し、これまで培ってきたすべての集中力が、彼女を悦ばせるためだけに注ぎ込まれます。そして、溢れんばかりの性欲を湛えた彼の「デカ物」が、彼女の太ももに熱く押し当てられました。
「壊してしまうかもしれない……。それほど、お前を求めている」
湯気の中で、指の瞳は獲物を捕らえた獣のように鋭く、そして狂おしいほどの愛に満ちていました。三十年間、誰にも触れさせなかった天才のすべてが、今、雨上がりの金髪少女という唯一の理解者によって、完全に解き放たれようとしていました。
湯気と石鹸の香りに包まれた浴室で、二人は向き合うように座り、互いの体を洗い始めました。
「先生、背中流してあげる」
少女の小さな掌が、きめ細かな泡と共に指(ゆび)の広くしなやかな背中を滑ります。三十年間、誰の体温も受け入れず、ただストイックに研ぎ澄まされてきた彼の肉体が、彼女の指先が触れるたびに快感で細かく震えました。
やがて少女の手は、彼の脇腹を通り、前面へと回り込みます。そして、猛り狂って熱を帯びた、その「デカ物」を泡で包み込むように、そっと握りしめました。
「……っ! 待て……それは……」
指は、奥歯を噛み締め、端正な顔を苦悶に歪めました。 女性に直接触れられるという、未知の衝撃。それも、自分が恋焦がれた少女の手です。彼女が泡を滑らせ、その超一流の質量をゆっくりと、しかし確かな愛撫で上下させると、指の脳内には真っ白な火花が飛び散りました。
「先生、すごいよ……ドクドクしてる。これ、全部あたしのせい?」
彼女が耳元で悪戯っぽく囁き、握る力を少し強めた瞬間、指の理性の糸は跡形もなく千切れ去りました。 人一倍強い性欲と、三十年間一度も解放されることのなかった膨大な生命エネルギーが、彼女の手の中で一気に臨界点を超えたのです。
「ああ……っ、くっ……!」
指は天を仰ぎ、彼女の肩を強く掴みました。 次の瞬間、彼の内側から、三十年分の鬱屈と情熱が混じり合った、熱く濃密な一撃が解き放たれました。それは天才外科医としての冷静な仮面を完全に剥ぎ取り、ただの「雄」としての咆哮を伴う、凄まじいまでの射精でした。
少女の白い手と、浴室の床を、彼の証が激しく汚していきます。 一度目とは思えないその量と勢いに、指は肩で息をしながら、力なく彼女の体に顔を埋めました。
「……すまない。……情けない姿をさらした」
掠れた声で謝る指でしたが、少女は優しく笑って、彼の濡れた髪を撫でました。
「情けなくないよ。先生が、あたしでこんなになっちゃうの……すっごく嬉しいもん」
初めての解放を終えた指の体は、驚くほど軽く、そして充足感に満ちていました。しかし、彼が「超一流」である理由は、ここからにありました。一度目の射精を終えたばかりだというのに、彼の「デカ物」は萎えるどころか、彼女の優しさに触れて、さらに硬く、さらに熱く、二度目の、そして本番の瞬間を求めて再び鎌首をもたげ始めたのです。
一度目の解放を終え、浴室の床に散った自身の証を見つめながら、指は深い脱力感に包まれていました。しかし、その安らぎは数秒も続きませんでした。
「……っ、はぁ、はぁ……」
肩で息をする彼の体内で、三十年間眠っていた「獣」が、一度の解放では全く満足せずに咆哮を上げたのです。少女が驚いて目を見開いたのは、その直後でした。
射精直後であれば、通常は鎮まるはずの彼の「デカ物」が、萎えるどころか、さらに血管を浮き上がらせ、先ほどよりも一層の硬度と熱量を帯びて天を突いたのです。それは、スマートな彼の体格からすれば、もはや異様とも言えるほどの、雄々しく猛々しい立ち姿でした。
「うそ……。先生、うそでしょ……?」
少女は、石鹸の泡がついたままの手を口元に当て、信じられないものを見るように凝視しました。
「さっき、あんなに出したのに……なんで、前より凄くなってんの……?」
彼女の驚愕の声に、指は顔を赤らめ、濡れた前髪の間から鋭くも潤んだ瞳で彼女を射抜きました。自分でもこの体の反応に戸惑っているのです。しかし、彼女の瑞々しい裸体と、自分を真っ直ぐに見つめる視線が、彼の「超一流」の持続力と性欲に火をつけ、ガソリンを注ぎ続けていました。
「……言ったはずだ。一筋縄ではいかないと。私の体は……自分でも制御できないほどに、お前を求めているらしい」
指は、震える手で彼女の細い腰を引き寄せました。一度放たれたことで、かえって感度は研ぎ澄まされ、彼女の肌が触れるたびに、脳髄を痺れさせるような快楽が駆け巡ります。
「先生、すごいね……。天才外科医って、中身まで化け物なんだ……」
少女は驚きながらも、その圧倒的な生命力に気圧されるように、うっとりと吐息を漏らしました。指は彼女の首筋に熱い唇を押し当て、今度は逃がさないと言わんばかりに、その長い指先を彼女の脚の間に滑り込ませました。
「ここからは、止まらないぞ。……覚悟しろ」
浴室の湯気はさらに濃くなり、二人の熱気で視界が白く染まっていきます。三十歳の童貞という殻を完全に脱ぎ捨て、超一流の「雄」としての本能に目覚めた指が、少女をベッドへと連れ去るための準備は、もはや十二分に整っていました。
浴室から上がった二人は、軽く体を拭いただけで、吸い寄せられるようにベッドへと倒れ込みました。
指の頭の中には、これまでの人生で学んだあらゆる医学的知識と、先ほど浴室で目覚めた野生の本能が渦巻いています。人一倍の性欲と、はち切れんばかりの「デカ物」を抱え、彼は獲物を仕留めるような鋭い動きで少女に覆い被さりました。
しかし、現実は彼の天才的な計算通りにはいきませんでした。
「……くっ、あ、……待て、これは……どうすれば……」
指は焦っていました。彼の「超一流」の象徴は、あまりにも猛りすぎて、そしてその質量があまりにも規格外であったがゆえに、どうやって彼女の小さな体に受け入れてもらえばいいのか、その「入り口」が分からないのです。
スマートな体躯を震わせ、指は彼女の脚の間に身を沈めますが、三十年間実戦経験のない腰使いはぎこちなく、せっかくの「デカ物」も行き場を失って彼女の太ももを虚しく突くだけでした。
「先生、落ち着いて……。痛い、痛いよっ」
「す、すまない! 痛くするつもりは……。だが、どうにも……収まりがつかないんだ」
端正な顔を真っ赤に染め、指は必死に態勢を立て直そうとします。手術なら、どんな微細な血管も一瞬で見抜くその「天才の瞳」も、今は欲望と焦りで潤み、完全に迷子になっていました。
手が当たれば彼女の髪を引っ掛けてしまい、体勢を変えようとすればベッドから落ちそうになる。超一流の持続力と硬度が、かえって仇となり、彼を不器用な操り人形のように変えていました。
「……おかしい。私は、完璧なはずなのに……」
指は、彼女の胸元に顔を埋めたまま、情けなさに打ちひしがれました。 どんな難手術も成功させてきたその指先が、今、愛する少女の肌の上で、ただ無力に泳いでいます。
「ふふっ……あはは! 先生、顔、すごいことになってるよ」
少女が、緊張が解けたように声を上げて笑い出しました。 完璧で、美しくて、冷徹な天才外科医が、自分を抱こうとして必死に空回りしている。その滑稽なまでの懸命さが、彼女にはたまらなく愛おしく感じられたのです。
「いいよ、先生。ゆっくりやろう? あたしが、教えてあげるから」
彼女は、自分よりもずっと大きな彼の体を、優しく包み込むように抱きしめました。 三十歳の童貞。最強の武器を持ちながら使い道を知らない「大きな子供」のような指に、十八歳のヤンキー少女が優しく道を示し始める——。
夜はまだ始まったばかりです。
「実は私もはじめてなんだ 何本も手ではいかせたけどね」
その告白に、指は雷に打たれたような衝撃を受け、動きを止めました。
「お前も……初めて、なのか……?」
潤んだ瞳で自分を見上げる彼女。金髪に染め、粗野な言葉を使い、世の中を斜めに見ているような彼女でしたが、その本質は自分と同じように、誰にもその奥底を許してこなかった「純真」だったのです。
「……そうだよ。ヤンキーだからって、遊んでると思ったら大間違いだぜ。……でも、手では何本もいかせてきたから、やり方はわかってるつもりだけど……本番は、怖いんだよ」
少女は照れ隠しにふいっと顔を背けましたが、その耳たぶは真っ赤に染まっていました。
指の心の中に、言葉にできないほど熱い感情が込み上げました。自分のような、世間から浮き上がった冷徹な男のために、彼女が大切に守ってきた「初めて」を捧げようとしてくれている。その事実が、彼の胸を締め付け、同時に、先ほどまでの無様な焦りを、静かな、しかし強固な決意へと変えていきました。
「……すまない。私が、未熟だった」
指は、震えていた指先をピタリと止めました。一度深く呼吸をし、外科医として極限の集中状態に入る時のように、精神を研ぎ澄ませます。
彼は、彼女を怖がらせていた自分の「デカ物」を、力任せに押し通そうとするのをやめました。代わりに、世界最高峰と謳われるその指先を使って、彼女の緊張を解きほぐすように、羽毛のような優しい愛撫を始めました。
「お互い初めてなら、急ぐ必要はない。……痛くないように、私が、お前の体のすべてを『診て』やる」
指の瞳から焦燥が消え、慈しみと、プロフェッショナルとしての確かな熱が宿ります。 彼は医学的知識を、欲望のためではなく、彼女を傷つけず、最大の快楽へと導くための「羅針盤」として使い始めました。彼女の肌の微かな震え、呼吸の深さ、そして潤いの変化。それらすべてを「指」で感じ取り、対話するように。
「……あ、……先生……。なんか、さっきと全然ちがう……」
少女の瞳が、驚きと熱を帯びてとろけていきます。 天才外科医・指。彼が三十年間の沈黙を破り、その持てるすべての技術と、人一倍の性欲、そして初めての愛を、たった一人の少女のために捧げる——。
不器用な格闘は終わり、ここから、二人の「初めて」が、最も美しい形で行われる至高の時間が始まろうとしていました。
指の指先が、彼女の体の震えを一つ残さず拾い上げ、最適な「処置」を施していくうちに、室内の空気は甘く重い静寂に包まれました。
もう、そこには迷いも不器用さもありません。指は、己の内に眠る人一倍の性欲と、医学的な知性を完全に融合させていました。彼女の呼吸が一段と深まり、準備が整ったことを確信したとき、彼はその「超一流」の質量を、慈しむように、しかし確かな意志を持って彼女へと捧げました。
「……っ、先生……!」
少女の瞳が大きく見開き、涙がひと筋、枕にこぼれました。 三十年間、誰にも触れさせず研ぎ澄ませてきた彼の「デカ物」が、彼女の未知の深淵へとゆっくりと、深く、溶け込んでいく。その圧倒的な密度と熱量に、彼女は驚きに震えながらも、指の広い背中に爪を立て、そのすべてを受け入れようと必死に縋りつきました。
「大丈夫だ。……私を見ろ。……お前の中に、私がいる」
指の美しい顔は、快楽と情愛によってかつてないほどに雄々しく、そして艶やかに歪んでいました。彼は、彼女が痛みを感じないよう、持ち前の精密な動きで、その神聖な結合を確かな悦びへと変えていきます。
やがて、苦悶は甘い溜息へと変わり、少女の体は指の上で、見たこともないほど美しく開花しました。 金髪を乱し、汗ばんだ肌をバラ色に染めて、彼女はただ一人の男――「指」という名の天才外科医によって、女へと作り替えられていく。
「あ、あああ……っ! 先生、すごい……、すごすぎるよ……っ!」
彼女の絶叫に近い声が、豪華なマンションの寝室に響き渡ります。 指の持続力は、まさに超一流でした。一度目の射精を経てなお、彼の本能は枯れることを知らず、彼女の最奥を突き、揺らし、彼女を何度も、何度も、絶頂という名の楽園へと導いていきました。
彼自身もまた、これまでの人生で感じたことのない、魂が溶け合うような充足感に震えていました。 何不自由ない高収入、天才という称号、美しい容姿。それらすべてが、彼女のこの震える肌、自分を呼ぶ声、そして自分を丸ごと受け入れてくれる熱さに比べれば、砂屑のようなものに思えました。
窓の外では、都会の夜景が静かに瞬いています。 しかし、この部屋の中では、三十歳の童貞を卒業したばかりの天才外科医が、自分だけの「花」を慈しみ、夜が明けるまでその芳醇な蜜を啜り続けていました。
三十歳の「初めての夜」としては、まさに伝説的とも言える一夜でした。
手で一度、そして中で三度。 人一倍の性欲と、三十年間一度も損なわれることなく蓄積されてきた凄まじい生命力が、彼女という最高の相手を得て、文字通り爆発した結果です。超一流の持続力と、二度目、三度目と回を重ねるごとに冴えわたる指(ゆび)のテクニック。それは彼女を何度も開花させ、同時に彼自身の孤独だった魂を、かつてない快楽と充足で塗りつぶしていきました。
高層マンションの遮光カーテンの隙間から、冬の澄んだ朝陽がひと筋、ベッドの上に滑り込んできました。
指(ゆび)は、いつも通り正確な体内時計で目を覚ましました。しかし、いつもなら目覚めた瞬間に始まる「今日のオペのシミュレーション」は、今朝に限ってはどこにもありませんでした。代わりに感じたのは、腕の中に残る、驚くほど温かくて柔らかな重みです。
隣では、金髪をシーツに散らした少女が、昨夜の激しい情事の疲れからか、あどけない寝息を立てて眠っています。
指は、自分の腕の中で丸まっている彼女を静かに見つめました。 三十年間、この寝室は彼にとって、ただ「脳と手指を休めるための無菌室」に過ぎませんでした。しかし今、そこには彼女の放つ生命の匂いと、二人で分かち合った濃密な夜の余韻が満ちています。
彼は、自分の白く長い指先を伸ばし、彼女の頬に触れようとして、ふと止めました。 この手は、昨日まで「人を治すための道具」だと思っていました。けれど今は、この子の寝顔を守り、慈しむために存在しているのだと、心の底から確信しています。
「……ふっ」
その時、指の唇から、自然と小さな笑みがこぼれました。 病院で見せる冷徹な微笑でも、社交界で見せる完璧な愛想笑いでもありません。 驚くほどの高収入も、天才という名声も、この瞬間の充足感には敵わない。人一倍の性欲さえも、今は凪のように静まり、ただ彼女を愛おしいと思う感情だけが、彼の胸を温かく満たしていました。
鏡を見るまでもなく、今の自分が、かつてないほど「人間」らしい顔をしていることを彼は知っていました。
やがて、光の眩しさに少女が小さく身悶えし、ゆっくりと瞼を持ち上げました。 「……ん、……せんせ?」 「おはよう。……まだ、寝ていていい」
指は、これまで誰にも向けたことのない、慈愛に満ちた穏やかな笑顔で彼女を迎えました。そのあまりにも優しい表情に、少女は一瞬呆然とし、それから顔を真っ赤にしてシーツに潜り込みました。
天才外科医、指。 彼は今日、初めて「完璧な孤独」を捨て、一人の男として、新しい朝を歩き始めました。
朝の柔らかな光が二人の肌を照らす中、指は彼女を抱き寄せる腕に、これまでにないほど強い力を込めました。
一晩で四度も重なり合った、その熱い余韻。 彼女の胎内に残る自分の証を思うとき、指の脳裏には一瞬、医学的な確率がよぎりました。
「……もし、昨夜のことでお前が妊娠したら、すぐに籍を入れよう」
その言葉は、責任感から出たものではありませんでした。口にした瞬間、彼の中で何かが爆発したのです。彼女を失うこと、彼女が自分の隣から消えてしまうことへの恐怖に近いほどの執着心。
「いや……違うな。妊娠なんて、そんなことは関係ない」
指は、彼女の目を見つめ直しました。そこには、迷いも冷徹さも一切ありません。あるのは、一人の女を永遠に自分のものにしたいと願う、剥き出しの独占欲だけでした。
「今すぐだ。今日、籍を入れよう。お前を誰にも渡したくない。病院の患者や、他の男たちが、お前の傷跡ひとつ、指先ひとつに触れることさえ、私はもう耐えられそうにないんだ」
超一流の天才外科医が、十八歳の少女に向かって、子供のように切実で、情熱的なプロポーズを口にしていました。 地位も名誉も、世間体も関係ない。自分を「一人の男」として開花させてくれたこの少女を、法的にも、肉体的にも、魂のレベルでも、完全に自分の支配下に置きたい。
少女は驚きで目を丸くし、それから少しだけ涙を浮かべて、最高の笑顔を見せました。
「……先生、マジで極端なんだから。でも……あたしも、あんた以外はもう、いらねーよ」
病院では「鉄の仮面」を持つと言われた男が、その朝、自分のマンションのベッドの上で、世界で一番幸せな敗北を認めました。
二人はその日のうちに、必要書類を揃えるための準備を始めます。 天才外科医・指。彼が人生で初めて下した「緊急の決断」は、どんな難手術よりも迅速に、そして情熱的に、二人の運命をひとつに結び合わせたのでした。
完
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