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夕暮れ時の図書室は、古い紙の匂いと、西日の熱が混じり合って、息が詰まるような沈黙に満ちていた。

15歳のユビにとって、そこは聖域であり、同時に拷問部屋でもあった。視線の先には、司書補助の佐伯さんがいる。彼女がページをめくるたび、細く白い指先が踊る。その動きを追うだけで、ユビの心臓はドラムのように早鐘を打った。

「ユビ君、またその本? 難しいのが好きなんだね」

ふいに声をかけられ、ユビは飛び上がらんばかりに肩を震わせた。佐伯さんが、いたずらっぽく目を細めて笑っている。彼女から漂う、石鹸とわずかなコーヒーの混ざった香りが、ユビの未熟な嗅覚を容赦なくかき乱す。

(綺麗だ、なんて、口が裂けても言えない)

彼女は24歳。9歳の年の差は、今のユビにとっては絶望的な距離だった。自分はまだ、何者でもない、ただの「童貞のガキ」だ。自分の名前の通り、彼女の人生の端っこに触れることさえ許されない、ちっぽけな存在。

「……別に。ただ、なんとなくです」

精一杯の虚勢でぶっきらぼうに答えると、彼女は「ふーん」と喉を鳴らして、少しだけ身を乗り出した。開いた胸元から覗く鎖骨の白さに、ユビは慌てて視線を泳がせる。



ある日の放課後 窓の外では、部活動に励む生徒たちの声が遠くで反響している。図書室は、その喧騒から切り離された深い海の底のようだった。

ユビは開いたままの参考書に目を落としていたが、文字は一行も頭に入ってこなかった。意識のすべては、数メートル先にある貸出カウンターへと向けられている。そこでは佐伯さんが、返却された本の背表紙を一枚一枚、丁寧に拭いていた。

彼女が腕を動かすたび、薄手のブラウスが肩のラインに沿ってしなやかに張り、微かな衣擦れの音が静寂に溶け込む。ユビはその音を耳で追うだけで、耳の裏が熱くなるのを感じた。15歳の自分にとって、彼女の存在はあまりに完成されすぎていて、直視すれば目が潰れてしまうのではないかとさえ思う。

「ユビ君、そんなに睨んでも問題集は解けてくれないよ?」

不意に投げかけられた声に、ユビは心臓を跳ねさせた。佐伯さんは作業の手を止めず、こちらを見ることさえせずに、唇の端に小さな笑みを浮かべている。

「……解いてますよ。ただ、考えてるだけです」

「そう。じゃあ、今は何を考えてるのかな」

彼女はそこでようやく顔を上げ、椅子の背にもたれかかった。ゆったりとした動作で組まれた足が、机の下でわずかに揺れる。ユビは慌てて視線を参考書に戻したが、心拍数は上がる一方だった。

「この公式の意味とか……。あとは、次の休みのこととか」

「嘘つき」

佐伯さんは短くそう言うと、カウンターの内側から出て、ゆっくりとユビの席へ歩み寄ってきた。床を叩くヒールの音が、死刑執行へ向かう足音のようにユビの胸を締め付ける。彼女はユビの真後ろで立ち止まり、その細い指先で、彼の机の端をトントンと軽く叩いた。

「君の目はね、いつもここじゃないどこかを見てる。……例えば、私の指先とかね」

耳元で囁かれた吐息に、石鹸の香りが混じる。ユビは指先が震えるのを隠すために、膝の上で強く拳を握りしめた。彼女の指が、ほんの一瞬、ユビの制服の肩に触れたような気がした。

それは偶然かもしれないし、彼女なりのからかいかもしれない。けれど、ユビにとっては、その一瞬の接触が、15年の人生で経験したどんな出来事よりも重く、熱く、そして残酷なほどに甘美なものに感じられた。

ユビは返事もできず、ただ自分の名前の由来でもある「指」を、白く乾いたページに強く押し付けていた。


窓の外で降り始めた夕立が、図書室の窓ガラスを激しく叩き、世界を灰色に塗りつぶしていく。雨音に包まれた室内で、ユビの視界はますます狭く、鋭くなっていった。

彼は机に突っ伏すような姿勢をとりながら、顔の向きをわずかに変える。そこには、カウンターの端に腰をかけた佐伯さんの姿があった。彼女は一冊の詩集を読み耽っており、ユビの視線には気づいていない。

ユビの目は、吸い寄せられるように彼女の指先へと向かった。ページをめくる、細くしなやかな五本の指。爪の形は整い、淡い桜色の光沢を宿している。その指が紙の端をなぞるたび、ユビは自分の肌が直接撫でられているような錯覚に陥り、喉の奥がひりつくように乾いた。

視線はさらに下へと滑り落ちる。カウンターから投げ出された彼女の足が、膝のあたりで重なっていた。タイトなスカートの裾から伸びる脚は、図書室の薄暗い空気の中でも不思議なほど白く、滑らかに発光しているように見えた。

膝からふくらはぎへと描かれる柔らかな曲線、そして足首の華奢な造形。彼女がページをめくるリズムに合わせて、浮かせた足先がかすかに上下する。サンダルのストラップに食い込む肌の柔らかさを想像しただけで、ユビの頭の中には形にならない熱がこみ上げた。

(あんなに綺麗なんだ。僕の、こんな汚い想像なんて、きっと透かして見えてるんだろうな)

15歳の未熟な身体には、その視覚情報はあまりに毒が強すぎた。ズボンの奥で疼くような重みを感じ、ユビは慌てて足を組み替える。彼女の脚の白さと、自分の未分化で不格好な欲望との対比が、彼を惨めな気持ちにさせた。

それでも、目を逸らすことなんてできなかった。彼女の指先が動き、スカートの裾がわずかに揺れるたび、ユビはそこに自分の人生のすべてを懸けてしまうような、危うい熱狂の中にいた。

雨脚が強まり、図書室の湿度が一段と上がった。佐伯さんがふと本から目を離し、髪を耳にかける。その動作でスカートの端がさらに数ミリ持ち上がり、露わになった太ももの眩しさに、ユビは呼吸することさえ忘れてしまった。

「……ユビ君、雨、止まないね」

前触れもなく彼女がこちらを向いた。ユビは心臓が口から飛び出しそうな衝撃を受け、とっさに開いたままのノートに視線を叩きつけた。

図書室を支配する雨音は、いつしか心臓の鼓動と同期し、ユビの意識を現実から引き剥がしていく。

伏せた顔の下、机の影で、ユビはただ、先ほどまで見ていた彼女の指先を反芻していた。あの白く、冷たそうなのに、どこか熱を帯びて見えた指。本をめくり、髪をかき上げ、今はペンを握っているであろうあの指が、もしも自分の、このやり場のない熱塊に触れたなら。

想像の中で、佐伯さんの指先は驚くほど滑らかに、ユビの硬く昂った部分を包み込む。

彼女の細い五本の指が、容赦なく、けれど慈しむようなリズムで上下する。節の目立たない華奢な指が、自分の未熟な皮膚を強く圧し、引き絞る感触。彼女が本を読むときに見せるあの静かな集中力が、今は自分を昂ぶらせることだけに注がれている。

「……こんなに熱くなってる。ユビ君、ここ、すごく正直だね」

妄想の中の彼女は、図書室で見せる微笑よりもずっと深く、艶やかな声で囁く。 彼女の指先が、先端の敏感な部分をわざとなぞるように、円を描いて這い回る。爪がかすかに立ち、皮膚を薄く引っ掻くような刺激が走るたび、ユビの腰は無意識に跳ねそうになった。

彼女の指が、自分の知らない「僕」を引き出していく。 スカートからはみ出していたあの白い膝の上に、もし自分が跨がっていたら。あの滑らかな足に挟まれながら、その指先で執拗に、壊すような強さでしごき上げられたなら。

(ああ、だめだ……)

ユビは奥歯を噛み締め、机を掴む指先に力を込めた。鼻を突く古い紙の匂いが、妄想の中の彼女の香りと混ざり合い、脳を痺れさせる。

彼女の指先が、最後の一振りに向かって速度を上げる。 皮膚が擦れる微かな音、彼女の指の間から溢れる、自分でも制御できない熱い飛沫。それを受け止める彼女の掌の柔らかさを想像した瞬間、ユビの背筋に、耐え難いほどの戦慄が走り抜けた。

「ユビ君? 顔、真っ赤だよ。熱でもあるの?」

現実の、佐伯さんの声が降ってきた。 ユビは弾かれたように顔を上げ、激しく脈打つ鼓動を隠すように、慌てて鞄を抱え込んだ。目の前に立つ彼女は、相変わらずあの綺麗な指で、今度は心配そうに自分の額に触れようと手を伸ばしてくる。

その指先が触れる直前、ユビは思わず椅子を鳴らして後ろに下がった。

「……そんなに怖がらなくてもいいのに。取って食べたりしないわよ」

佐伯さんは、逃げるように距離を取ったユビを見て、くすりと小さく笑った。その笑みはいつもの優しげなものとは違い、どこか獲物を追い詰めた猫のような、鋭い光を帯びている。

彼女はゆっくりと、閉館を知らせる鍵を図書室の入り口へと差しに歩いた。カチリ、と重い金属音が響き、広い室内は完全に二人だけの密室になる。

「熱があるのか、それとも……何か、私には言えないような破廉恥なことでも考えてた?」

彼女はカウンターへ戻ると、そこに乗っていた厚い辞書をどかし、代わりに自分の身体を預けるように腰掛けた。スカートの裾がさらに持ち上がり、白く眩しい太ももが、ユビの視線の高さに真っ直ぐに突き出される。

「おいで、ユビ君。教科書には載っていないこと、教えてあげる」

手招きする彼女の指先が、ユビには呪文のように見えた。抗えるはずもなく、磁石に吸い寄せられる鉄屑のように、ユビはふらふらと彼女の膝の間へと足を進めた。

至近距離。彼女の膝が、ユビの太ももの外側に触れる。ストッキング越しではない、生身の肌の熱が伝わってきて、ユビは全身の血が逆流するような感覚に陥った。

「十五歳だっけ。男の子が一番、指先の感覚に敏感になる時期……」

佐伯さんはそう言うと、ユビの震える右手をそっと取り、自分の唇へと運んだ。冷たい唇が指先に触れた瞬間、ユビの脳内で何かが弾けた。

「私の指が、どう動いてほしかった? さっき、机の下で想像してたみたいに……やってみてあげようか?」

彼女はユビの手を離すと、今度は自分の細い指先を、彼のシャツのボタンへと掛けた。一つ、また一つとボタンが外され、冷たい外気が肌に触れる。だが、それ以上に彼女の指が胸元に触れるたび、そこから発火しそうなほどの熱が広がっていく。

「これは『特別授業』。声を出したら、外の人に聞こえちゃうから気をつけてね」

彼女の指が、ユビのズボンのベルトに手をかける。カチャリ、と静かな図書室に場違いな硬い音が響いた。ユビは呼吸の仕方を忘れ、ただ目の前の、憧れ続けた白い指先が、自分の「未熟な現実」へと伸びてくるのを、戦慄とともに見つめていた。

ベルトが外され、ジッパーが重い音を立てて下ろされる。ユビの心臓は、もはや肋骨を突き破らんばかりの勢いで打ち鳴らされていた。

「あら……。こんなに、はち切れそう」

佐伯さんは、覗き込むような仕草で小さく吐息をもらした。彼女の指先が、下着越しにその膨らみの輪郭をなぞる。たったそれだけの、羽毛が触れるような軽い接触で、ユビの腰はガクガクと震え、膝から崩れ落ちそうになった。

「ユビ君、こっち見て。目を逸らしちゃだめよ」

命じられるまま顔を上げると、至近距離に彼女の美しい顔があった。陶器のような肌、濡れたように光る唇、そして自分を観察する冷徹なまでに穏やかな瞳。

やがて、彼女の細い指が下着の縁を捉え、ゆっくりと、けれど容赦なく引き下げた。

外気に晒された瞬間、ユビは恥ずかしさと快感の混ざり合った呻きを漏らした。15歳の、まだ何も知らない、真っ赤に昂りきった剥き出しの核心。それを佐伯さんは、逃がさないと言わんばかりに、掌で包み込むようにして掴んだ。

「熱い……。ねえ、私の指、冷たくて気持ちいい?」

彼女の言葉通り、指先のひんやりとした感触が、熱を持ったユビの「そこ」に突き刺さるように伝わる。彼女はそのまま、親指の腹で先端の最も敏感な部分を、じっくりと、円を描くように押し潰した。

「ひっ……、あ、……っ」

「声を出さないって、約束したでしょ?」

佐伯さんはいたずらっぽく微笑むと、今度は五本の指すべてを使って、根元から先端へと力強くしごき上げた。指の節が、皮膚の薄い筋を刺激し、ユビの脳内は真っ白な火花で埋め尽くされる。

彼女の指は、まるで熟練の奏者が楽器を操るように、緩急をつけてユビを追い詰めていく。時折、爪の先がカリリと先端を掠めるたび、ユビは背中を大きく反らせ、声にならない悲鳴を上げた。

「ほら、指先だけでこんなに震えてる。かわいいわね、ユビ君」

彼女の指に力がこもり、速度が上がる。 自分の名前と同じ「指」によって、人生で初めて味わう究極の快楽へと引きずり込まれていく。ユビは、カウンターに置かれた彼女の白い足を掴み、縋り付くことしかできなかった。

「もう……限界……っ、佐伯さん……!」

ユビの喉から、掠れた切実な声が漏れ出す。彼の視界は、彼女の白い肌と、窓を叩く雨の残像が混ざり合い、万華鏡のように歪み始めていた。

佐伯さんは彼の焦燥を楽しむように、一度だけ指の動きを止め、わざとじっくりと、一番熱くなっている先端を親指で強く押し込んだ。

「だめよ、勝手に終わらせちゃ。最後まで、私の指を感じて……」

彼女はそう囁くと、残りの四本の指でユビの根元を固く締め上げ、吸い付くような密着感で、一気に、そして激しく上下に動かし始めた。

シュルリ、シュルリと、溢れ出した先走りの液と彼女の指が擦れる、淫らな音が静かな図書室に響く。

ユビの頭の中は、もう沸騰したお湯のように何も考えられなくなっていた。彼女の指の節が、自分の脈打つ血管をダイレクトに刺激する。指先が通るたびに、背骨を電撃が駆け抜け、足の指先までがピンと強張る。

「あ、ああ……! くる、……きますっ!」

「いいよ、全部出しなさい。私の指の中に」

佐伯さんの指が、最後の仕上げと言わんばかりに、潰すような強さで先端を擦り上げた。

その瞬間、ユビの身体は大きく跳ね上がった。 視界が真っ白に染まり、15年間、大切に、そして持て余すように溜め込んできた熱い塊が、彼女の掌の中で激しく爆発した。

ドクン、ドクンと、自分の心臓がそこにあるかのような激しい拍動とともに、熱い飛沫が彼女の指を、手の甲を、そして貸出カウンターを汚していく。ユビは呼吸を忘れ、口を半開きにしたまま、彼女の細い肩に顔を埋めて激しく喘いだ。

静寂が戻った図書室で、雨音だけが一段と大きく聞こえる。 佐伯さんは、白濁した液で濡れ光る自分の指を、まるで芸術品でも眺めるようにうっとりと見つめた。

「……すごい量。やっぱり、元気な男の子の指は、嘘をつかないね」

彼女はそう言うと、汚れた指先をユビの唇に寄せた。自分の情けない証拠が、彼女の綺麗な指を汚している。その背徳感と、終わったばかりの余韻による痺れが、ユビを深い奈落へと突き落としていくようだった。

「……あら。まだ、こんなに元気」

佐伯さんは、自身の指を汚した熱い余韻を眺めながら、感心したように声を漏らした。

普通なら、すべてを出し切った後は急速に熱が引き、萎れていくものだ。しかし、彼女の掌の中に収まったユビのそれは、いまだに脈打ち、硬い棒のような熱を失わずにいた。それどころか、彼女の指が這った感触をなぞるように、さらなる重みを増していく。

ユビは荒い息を吐きながら、自分の身体に起きている異常な反応に困惑していた。賢者タイムという言葉で片付けられるはずの安らぎは訪れず、下腹部の奥底からは、先ほどよりもさらに深く、暗い渇きがせり上がってくる。

「ユビ君、名前の通り……すごく『欲張り』な指なんだね」

佐伯さんは、濡れた指先を自分の舌先で一撫でして拭い去ると、再びその指を、いまだに反り立つユビの核心へと添えた。今度は包み込むのではなく、人差し指の先で、先端の穴をなぞるように、ゆっくりと。

「ひ、あぁ……っ、佐伯さん、もう出ない、出ないです……!」

「嘘つき。身体はこんなに、もっと欲しいって言ってるじゃない」

彼女はカウンターから身を乗り出し、ユビの耳元に唇を寄せた。熱い吐息が耳孔に吹き込まれる。彼女の細い足が、ユビの腰を挟み込むようにして引き寄せ、逃げ場を完全に塞いだ。

「一度で終わらせてあげるなんて言ってないわよ? 今日は、君が立てなくなるまで……私の指の動かし方、叩き込んであげるから」

彼女の指が、再び力を込めてしごき始める。一回目よりも執拗に、一回目よりも深く。

15歳の童貞という殻を無理やり剥ぎ取られ、ユビはただ、自分の意志を無視して昂り続ける肉体の熱に、身を任せることしかできなかった。雨音に紛れて、肉と指が擦れる粘り気のある音が、放課後の図書室にいつまでも鳴り響いていた。

「……さすがに、ここじゃこれ以上は無理ね」

佐伯さんは、昂ぶるユビの熱を掌で感じたまま、ふっと我に返ったような顔をして唇を離した。図書室の静寂は、今や二人にとってあまりに窮屈で、露出した肌を刺す冷たい空気は、逆に情動を煽る毒でしかなかった。

彼女は乱れたブラウスのボタンを素早い手つきで留めると、カウンターの下から自分のバッグを掴み、ユビの手を強く引いた。

「ついてきて。私の部屋、ここからすぐだから」

雨の降りしきる中、一つの傘に肩を寄せ合い、二人は夜の街を急いだ。15歳のユビにとって、雨の匂いと彼女の香水が混ざり合うこの時間は、まるで現実感を欠いた映画のワンシーンのようだった。彼女の指は、傘の柄を握るユビの手の上に重ねられ、逃がさないと言わ言わんばかりに力が込められている。

たどり着いたのは、古びた、けれど手入れの行き届いたアパートの一室だった。 玄関の鍵を開け、照明もつけないまま、彼女はユビを室内に引き入れた。

ドアが閉まった瞬間、背中に冷たい扉の感触が伝わる。それと同時に、佐伯さんの柔らかい身体がユビに押し付けられた。

「あっちでは、指だけで我慢させてごめんね」

暗闇に目が慣れてくると、彼女が濡れた髪をかき上げながら、妖艶に微笑んでいるのが分かった。彼女はユビの制服のネクタイを指先に絡め、ゆっくりと解いていく。

「ここなら、誰にも邪魔されない。図書室では教えきれなかったこと……朝まで、じっくり復習しましょうか」

彼女の指がユビの頬をなぞり、首筋、そして再び熱を帯びた下腹部へと滑り落ちていく。図書室の机の上では叶わなかった、本当の「延長戦」の幕が、今ここで上がろうとしていた。

カーテンを閉め切った部屋は、雨音さえも遠のくほどに静まり返っていた。わずかに開いた窓から流れ込む夜風が、湿った空気と二人の体温をかき混ぜる。

佐伯さんは、まだ戸惑いを捨てきれないユビを優しくベッドへ押し倒した。スプリングが軋む音に、ユビの心臓がまた跳ねる。彼女は膝をついて彼を跨ぐと、濡れた髪から滴る雫をユビの胸元に落としながら、ゆっくりと自分のブラウスを脱ぎ捨てた。

「ユビ君、まだそんなに固くなってる。呼吸して……」

彼女の白い指先が、ユビの耳元から鎖骨にかけて、くすぐるような曲線を描いて滑り落ちる。図書室のカウンターで感じた冷たさはもうどこにもなく、指先は驚くほど熱を帯びていた。

彼女はユビのシャツを完全に脱がせると、その細い指で彼の乳首をピンと弾き、驚きに目を見開くユビの表情を楽しそうに眺めた。

「可愛い……。そんな顔されると、もっといじめたくなっちゃう」

佐伯さんは大胆にも、自らスカートのジッパーを下ろして脱ぎ去り、薄いレース一枚になった。15歳の少年には刺激が強すぎるその肢体が、月光を吸い込んで青白く光る。彼女はユビの手を取り、自分の柔らかな太ももの内側へと導いた。

「ここ、ずっと見たかったんでしょ? 触っていいよ。好きなように、もっと深く」

ユビの指先が、彼女の滑らかな肌に触れる。妄想していたよりもずっと柔らかく、弾力のある肉の感触。彼が震える指でそこをなぞると、佐伯さんは小さく声を漏らし、彼の腰を自分の足で強く挟み込んだ。

「上手……。じゃあ、次はお返しね」

彼女は身体を伏せ、ユビの耳たぶを吸い上げながら、一方の手を再び彼の熱の核へと伸ばした。今度は指先だけじゃない。掌全体で、その昂りを受け止めるように包み込み、ゆっくりと、けれど確実な力で根元までしごき上げる。

「図書室ではできなかったこと……全部、教えてあげる」

彼女の指先がユビのへその下を這い、さらに奥へと潜り込んでいく。15歳の童貞という未熟な境界を、彼女の熟れた指が、今まさに完全に破壊しようとしていた。

佐伯さんの指先が、ユビの未熟な熱を翻弄するように、執拗に先端をなぞり、押し潰す。快楽の波が絶え間なく押し寄せ、ユビの視界は火花が散ったように明滅していた。

「ねえ、ユビ君。私の目を見て」

佐伯さんは、逃げ場をなくすように彼の顔を両手で挟み込んだ。彼女の指の隙間から、ユビの熱い吐息が漏れる。彼女はゆっくりと腰を持ち上げ、自分の「そこ」を、ユビの昂りの真上に据えた。

「初めて、私に頂戴……?」

その囁きを合図に、彼女は自らゆっくりと、体重を預けるように沈み込んできた。

ユビは思わず息を止めた。図書室の空想では決して辿り着けなかった、未知の熱と圧迫感。狭く、けれど驚くほど柔らかな層が、自分の硬い一部を飲み込んでいく。身体が半分に裂けるような衝撃と、それを一瞬で上書きするほどの、脳を灼き切るような快感が全身を駆け抜けた。

「あ、……っ! 佐伯、さん……!」

「……大丈夫。力を抜いて。全部、入ってるよ」

彼女の指がユビの髪を優しくかき上げる。彼女の顔もまた、余裕を失ったかのように赤らみ、瞳は潤んでいた。彼女はユビの胸に掌をつくと、波打つようなリズムで腰を動かし始めた。

内側から直接擦られる感覚に、ユビは腰を跳ねさせ、彼女の白い肩に爪を立てた。一突きごとに、自分の境界線が溶けて、彼女の中に混ざり合っていく。15歳の少年が抱えていた、憧れ、劣等感、そして鬱屈した欲望のすべてが、その摩擦の熱によって純粋な快楽へと昇華されていく。

「すごい……。ユビ君の中、すごく……熱いよ」

彼女の指が、ユビの手に重なり、指を絡ませる。恋人同士のような、あるいは共犯者のような深い「指切り」。

ユビの視界の端で、彼女の細い指先がベッドのシーツを強く掴み、白く強張るのが見えた。それが、彼女もまた自分と同じ熱の中にいる証拠だと気づいた瞬間、ユビの理性は完全に崩壊した。

内側からせり上がってくる、制御不能の衝動。 ユビは彼女の腰を強く掴み、むせび泣くような声を上げながら、自分でも信じられないほどの力強さで、彼女の深奥へと突き上げた。

ユビの突き上げが深くなるにつれ、佐伯さんの余裕は完全に剥ぎ取られていった。

「あ、……っ、あぁ! ユビ、君……っ!」

彼女の喉から、これまで聞いたこともないような、高く震える声が漏れる。ユビの首に回された彼女の腕に力がこもり、爪が彼の背中に深く食い込んだ。

彼女の指先は、快楽のあまり行き場を失ったように空を掻き、やがてユビの胸元を強く掴んで白く強張った。その指の震えが、彼女の身体の奥底で起きている凄まじい昂まりを如実に物語っている。

ユビは夢中だった。憧れていた年上の女性が、自分の拙い動きによって、図書室では想像もできなかったような乱れた表情を晒している。その事実が彼をさらに奮い立たせ、未熟ながらも力強い一撃が彼女の最も深い場所に届いた瞬間だった。

佐伯さんの身体が、弓なりに大きく反った。

「あ……っ! だめ、くる、……いっちゃう……っ!!」

彼女の瞳が大きく見開かれ、焦点が宙を彷徨う。次の瞬間、彼女の身体の内壁が、ユビのそれを壊さんばかりの強さで、リズミカルに、そして執拗に締め上げ始めた。

「あぁぁぁ……っ!!」

絶頂の衝撃に耐えるように、彼女はユビの肩に顔を埋めて叫んだ。彼女の指はシーツをひきちぎらんばかりに握りしめられ、細い足の指先までがピンと伸びきって硬直する。

その締め付けに誘われるように、ユビもまた、自分の中のすべてを彼女の最奥へと解き放った。

彼女の身体が激しく痙攣し、熱い飛沫を飲み込みながら、何度も何度も、抗うことのできない悦びの波に飲まれていく。彼女の指先から力が抜け、だらりとユビの背中に落ちる。

静寂が戻った部屋で、聞こえるのは雨音と、重なり合ったまま離れられない二人の、狂おしいほどに激しい残響のような呼吸だけだった。


翌朝、雨は嘘のように上がり、窓の外からは湿った土の匂いと、授業開始を告げるチャイムの音が響いていた。

ユビは、いつものように放課後の図書室を訪れた。しかし、重い木の扉を開ける指先は、昨日までとは比べものにならないほど震えている。

カウンターの中には、いつもと変わらない佐伯さんがいた。彼女は白いブラウスの袖を少しだけ捲り、細い指先で新刊図書の背表紙にラベルを貼っている。

ユビが図書室に入っても、彼女は顔を上げない。ただ、淡々と作業を続けるその横顔は、昨夜、自分の上で激しく乱れていた女性と同一人物だとは到底信じられなかった。

(あれは、全部夢だったんじゃないか……)

そう思わざるを得ないほど、彼女の纏う空気は冷たく、静かだ。ユビは逃げるように一番奥の席に座り、適当な本を開いた。しかし、文字を目で追うふりをしながらも、視線は無意識に彼女の指先を探してしまう。

その時、佐伯さんがふと顔を上げた。

ユビと視線がぶつかる。心臓が跳ね、彼はとっさに目を逸らそうとした。

だが、佐伯さんは逸らさなかった。彼女はほんの一瞬、その薄い唇の端に、自分にしか分からないほどの小さな、けれど確かな艶を孕んだ笑みを浮かべた。

そして、彼女は右手の指先をゆっくりと自分の唇に寄せると、シー、と内緒話をするような仕草をした。その指先には、昨夜、ユビが彼女の背中につけてしまった小さな爪痕を隠すように、細い絆創膏が巻かれている。

ユビの顔が、一気に沸騰したように熱くなった。

彼女がラベルを貼るために動かしているその指が、今度はペンを置き、指先でユビだけに向けた合図を送る。 「放課後、また待ってるわよ」 言葉はなくても、その指の動きだけで、ユビにはすべてが伝わった。

ユビは、昨夜の熱がまだ身体の奥底に燻っているのを感じながら、机の下で自分の「指」を強く握りしめた。昨日までの自分とは、もう決定的に違う。指先に残る彼女の肌の感触が、この図書室を甘美な迷宮へと変えていた。

                 完

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