『「63」十歳の共犯者』
2026/01/21(水)
アスファルトから立ちのぼる陽炎(かげろう)が、指の視界をゆらゆらと揺らしていた。 「おい、指! 遅れるなよ。いい場所がなくなっちまうぞ」 前を歩く高校生のタカ兄が振り返る。その肩にかけられた大きな浮き輪が、夏の太陽を反射してまぶしい。
今日、指は近所のお兄さんたち三人に連れられて、バスで三十分もかかる大きな市民プールにやってきた。指の家の近くにある小学校のプールとはわけが違う。ここには、この辺りでは珍しい「流れるプール」があるのだ。
入場門をくぐると、消毒液と塩素の混ざった独特の匂いが鼻をついた。着替えを済ませて外へ飛び出すと、目の前には空よりも青い、巨大な水の輪が広がっていた。
「すげえ……」 指は思わず足を止めた。水面がキラキラと光りながら、ゆっくり、けれど確かな意志を持ってぐるぐると回っている。まるで街の中に、巨大な水の生き物が横たわっているみたいだった。
指は、ぷかぷかと上を向いて浮かんでいた。耳まで水に浸かると、外の喧騒が遠のいて「ゴボゴボ」という水の音だけが鼓膜を震わせる。 (本当に、どこまでも運ばれていきそうだ……) そう思った矢先。
「あ、ごめんなさい!」
柔らかい声と同時に、指の肩に「ポン」と何かが当たった。 慌てて体勢を立て直し、顔を上げると、すぐ目の前に黄色いハンドルがついたベビーボートが浮いていた。そこに乗っていたのは、ムチムチとした腕を動かして、不思議そうにこちらを見つめる赤ちゃんだ。
「あ、すみません! ぼーっとしてて……」 指が慌てて謝ると、ボートを引いていた女性——お姉さんと呼ぶには少し大人びた、優しい目をしたお母さん——が、ふわりと微笑んだ。
「いいのよ、こっちこそ。この子が急にハンドルを回しちゃったから。……ねえ、涼(りょう)くん、お兄さんにぶつかっちゃったね」
彼女が話しかけると、赤ちゃんは「あー、うー」と声を出し、指の方へ向かって小さな手を伸ばした。 強い日差しの中で、赤ちゃんの肌は水しぶきを浴びてキラキラと輝いている。指は、自分の弟や親戚にもいない「自分よりずっと小さな存在」を間近に見て、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「……可愛いですね」 指が照れ隠しにそう言うと、お母さんは少し驚いたような顔をして、それからいっそう優しく目を細めた。 「ありがとう。あなた、お名前は?」
「指、です。十歳です」
「指くん。素敵な名前ね。……よかったら、次の橋のところまで一緒に流れていかない?」
お兄さんたちといる時とは違う、ゆったりとした、でもどこか背筋が伸びるような不思議な時間が、流れるプールの水流とともに動き出した。
指は、ぷかぷかと上を向いて浮かんでいた。耳まで水に浸かると、外の喧騒が遠のいて「ゴボゴボ」という水の音だけが鼓膜を震わせる。 (本当に、どこまでも運ばれていきそうだ……) そう思った矢先。
「あ、ごめんなさい!」
柔らかい声と同時に、指の肩に「ポン」と何かが当たった。 慌てて体勢を立て直し、顔を上げると、すぐ目の前に黄色いハンドルがついたベビーボートが浮いていた。そこに乗っていたのは、ムチムチとした腕を動かして、不思議そうにこちらを見つめる赤ちゃんだ。
「あ、すみません! ぼーっとしてて……」 指が慌てて謝ると、ボートを引いていた女性——お姉さんと呼ぶには少し大人びた、優しい目をしたお母さん——が、ふわりと微笑んだ。
「いいのよ、こっちこそ。この子が急にハンドルを回しちゃったから。……ねえ、涼(りょう)くん、お兄さんにぶつかっちゃったね」
彼女が話しかけると、赤ちゃんは「あー、うー」と声を出し、指の方へ向かって小さな手を伸ばした。 強い日差しの中で、赤ちゃんの肌は水しぶきを浴びてキラキラと輝いている。指は、自分の弟や親戚にもいない「自分よりずっと小さな存在」を間近に見て、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「……可愛いですね」 指が照れ隠しにそう言うと、お母さんは少し驚いたような顔をして、それからいっそう優しく目を細めた。 「ありがとう。あなた、お名前は?」
「指、です。十歳です」
指は、ぷかぷかと上を向いて浮かんでいた。耳まで水に浸かると、外の喧騒が遠のいて「ゴボゴボ」という水の音だけが鼓膜を震わせる。 (本当に、どこまでも運ばれていきそうだ……) そう思った矢先。
「あ、ごめんなさい!」
柔らかい声と同時に、指の肩に「ポン」と何かが当たった。 慌てて体勢を立て直し、顔を上げると、すぐ目の前に黄色いハンドルがついたベビーボートが浮いていた。そこに乗っていたのは、ムチムチとした腕を動かして、不思議そうにこちらを見つめる赤ちゃんだ。
「あ、すみません! ぼーっとしてて……」 指が慌てて謝ると、ボートを引いていた女性——お姉さんと呼ぶには少し大人びた、優しい目をしたお母さん——が、ふわりと微笑んだ。
「いいのよ、こっちこそ。この子が急にハンドルを回しちゃったから。……ねえ、涼(りょう)くん、お兄さんにぶつかっちゃったね」
彼女が話しかけると、赤ちゃんは「あー、うー」と声を出し、指の方へ向かって小さな手を伸ばした。 強い日差しの中で、赤ちゃんの肌は水しぶきを浴びてキラキラと輝いている。指は、自分の弟や親戚にもいない「自分よりずっと小さな存在」を間近に見て、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「……可愛いですね」 指が照れ隠しにそう言うと、お母さんは少し驚いたような顔をして、それからいっそう優しく目を細めた。 「ありがとう。あなた、お名前は?」
「指、です。十歳です」
指は、ぷかぷかと上を向いて浮かんでいた。耳まで水に浸かると、外の喧騒が遠のいて「ゴボゴボ」という水の音だけが鼓膜を震わせる。 (本当に、どこまでも運ばれていきそうだ……) そう思った矢先。
「あ、ごめんなさい!」
柔らかい声と同時に、指の肩に「ポン」と何かが当たった。 慌てて体勢を立て直し、顔を上げると、すぐ目の前に黄色いハンドルがついたベビーボートが浮いていた。そこに乗っていたのは、ムチムチとした腕を動かして、不思議そうにこちらを見つめる赤ちゃんだ。
「あ、すみません! ぼーっとしてて……」 指が慌てて謝ると、ボートを引いていた女性——お姉さんと呼ぶには少し大人びた、優しい目をしたお母さん——が、ふわりと微笑んだ。
「いいのよ、こっちこそ。この子が急にハンドルを回しちゃったから。……ねえ、涼(りょう)くん、お兄さんにぶつかっちゃったね」
彼女が話しかけると、赤ちゃんは「あー、うー」と声を出し、指の方へ向かって小さな手を伸ばした。 強い日差しの中で、赤ちゃんの肌は水しぶきを浴びてキラキラと輝いている。指は、自分の弟や親戚にもいない「自分よりずっと小さな存在」を間近に見て、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。
「……可愛いですね」 指が照れ隠しにそう言うと、お母さんは少し驚いたような顔をして、それからいっそう優しく目を細めた。 「ありがとう。あなた、お名前は?」
「指、です。十歳です」
「指くん、か。珍しい、いい名前ね」
お母さんは、流れるプールの縁にそっと手を添えて、速度を調整しながら言った。指は彼女の横を歩くようにして(プールの底に足がつくので)、浮いているベビーボートをガードする位置についた。
「よく言われます。……変な名前だって、笑われることもありますけど」
指が少し俯き加減に答えると、彼女は「まさか」と鈴を転がすように笑った。
「そんなことないわ。指って、何かを教えたり、誰かと約束したり、道を示したりするときに一番に使うでしょう? とっても大切な役割がある名前じゃない」
そんな風に言われたのは初めてだった。 指は自分の名前が、短くて、なんだか記号みたいで、少しだけ恥ずかしいと思っていたのだ。
「お姉さん——あ、おばさん、じゃなくて」 呼び方に迷って口ごもる指を見て、彼女は「お姉さんでいいわよ、ここではね」とウィンクした。
「お姉さんは、どうして赤ちゃんを流れるプールに連れてきたんですか? 普通のプールの方が、波もなくて安全じゃないですか?」
彼女は赤ちゃんの柔らかい髪を指先でなでながら、少し遠くを見るような目をした。
「この子、家の中だとすぐ泣いちゃうの。でもね、こうして流れるプールに来ると、自分から動かなくても景色が変わっていくでしょう? それが楽しいみたいで、ずっと笑っててくれるの。……たぶん、世界は止まってるんじゃなくて、ずっと動いてるんだよって、教えてあげたいのかもね」
彼女の言葉は、水の音に混じって指の心にすとんと落ちた。 指は改めて、自分の横を流れていく景色を見た。 楽しそうに騒ぐお兄さんたち、売店の焼きそばの匂い、キラキラ光る水面。 自分もこの「流れ」の一部なんだと思うと、さっきまで感じていた「子供扱いされる不満」が、少しだけ消えていくような気がした。
「……僕も、流れるの好きです。どこかに連れて行ってもらえる感じがして」
「ふふ、そうね。でも指くん。いつか流れから外れて、自分の足で歩かなきゃいけない時も来るわ。その時は、その指で、自分の行きたい方向をしっかり指さすのよ」
ベビーボートの黄色い縁に、指とお姉さんは並んでつかまっていた。 ボートがひっくり返らないように、そして赤ちゃんを安定させるために、二人の距離は自然と詰められた。流れるプール特有の強い渦が二人の体を寄せ、逃げようとしても足がもつれてしまう。
その時だった。
「わっ、ごめんね。流れが急になっちゃった」
お姉さんがバランスを崩し、その拍子に彼女のしなやかな太ももが、水の中で指の股間にすっと入り込むように当たった。
ドクン、と指の心臓が大きく跳ねた。
水着越しに伝わる、自分よりもずっと柔らかくて、でも確かな熱を持った肉体の感触。 10歳の指にとって、それは今まで知っていた「プールの水の冷たさ」をすべて塗り替えてしまうほど、熱く、なまなましいものだった。
「あ……っ」
声にならない声が漏れる。お姉さんはボートを支えるのに必死で、自分の足がどこに触れているのか気づいていない様子だ。むしろ、流されないようにと指の体にさらに体重を預けてくる。
水流に押されるたびに、彼女の太ももが指のそこへ、何度も、柔らかく押し当てられた。
指は呼吸の仕方を忘れたようになった。 目の前にある彼女の白い肩から漂う、日焼け止めとプールの匂い。そして股間に伝わり続ける、言葉にできないほど心許ない感触。 さっきまであんなに楽しかった「流れるプール」が、今は恐ろしいほどに感覚を鋭敏にさせる装置に変わっている。
(どうしよう……離れなきゃ、でも、ボートを離したら赤ちゃんが……)
頭の中が真っ白になり、指はただ、顔を真っ赤にして歯を食いしばるしかなかった。水の流れは残酷なほどゆっくりで、彼女の体温は冷たいはずの水中で、そこだけが火がついたように熱かった。
水の流れは、指の困惑などお構いなしに二人を運び続ける。ボートを支える指の指先は、滑りやすいビニールの感触を必死に捉えていたが、意識のすべては水面下の、自分でも正体の分からない熱い違和感に集中していた。
波に揺られるたび、お姉さんの太ももが指の股間に、ぐっと深く、あるいは撫でるように滑り込んでくる。それは、今まで経験したことのないほど柔らかく、同時に逃げ出したくなるほど強烈な「重み」だった。
「ごめんね、指くん。ちょっと足場が不安定で……つかまってていい?」
お姉さんが顔を近づけて囁く。彼女の吐息が耳元にかかり、指の体温は限界まで跳ね上がった。自分でも顔が火を吹くほど赤くなっているのが分かる。水着の奥で何かが疼き、心臓の音が耳の奥で警報のように鳴り響いていた。
「あ、は、はい……大丈夫、です」
やっとの思いで絞り出した声は、自分のものではないように掠れていた。指はお姉さんの顔を見ることができず、ただ懸命にベビーボートのハンドルを握る赤ちゃんの、小さな後頭部を見つめ続けた。
お姉さんの柔らかな太ももが、何度も指の股間に押し当てられるたび、彼の幼い体には抗いようのない変化が起きていた。水着の中が、自分でも怖くなるほど熱く、硬く張り詰めていく。十歳の指にとって、それは制御不能な未知の反乱だった。
「指くん、顔が真っ赤よ? のぼせちゃったかな」
お姉さんが顔を覗き込んできた。彼女の瞳がいたずらっぽく細められる。彼女は気づいていた。指の体が、自分に触れるたびにびくりと跳ねること、そして水面下で何が起きているのかを。
「……っ、す、少し、暑いだけです。大丈夫、ですから」
指は必死にボートを離そうとしたが、お姉さんは「危ないわよ」と言って、わざと指の腰のあたりに自分の膝を滑り込ませた。硬くなったそこが、彼女の膝の皿に逃げ場なく押し付けられる。
「あ、う……っ」
指は思わず声を漏らし、ボートの縁をぎゅっと握りしめた。お姉さんは表情を変えず、むしろ楽しむように、さらに密着を深めてくる。彼女が泳ぐふりをして足を動かすたび、水着越しに伝わるなまなましい感触が、指の理性をめちゃくちゃにかき回した。
「流れるプールって、不思議よね。こうしてると、自分たちの意思じゃなくて、水が勝手に私たちをくっつけちゃうんだもの」
彼女はそう言いながら、水中でそっと足を動かし、指の股間の「熱い塊」を包み込むように太ももで圧迫した。指の頭の中は真っ白になり、目の前の景色がチカチカと火花を散らす。
「指くん、ここ、すごくドキドキしてるわよ。……心臓の音、ここまで聞こえてきそう」
お姉さんの指先が、水しぶきを払うふりをして、一瞬だけ指の太ももの付け根に触れた。わざと、ギリギリの場所を狙って。
指はもう、返事すらできなかった。彼女が面白がっているのは分かっていた。自分という「子供」が、大人の女性の体に翻弄されているのを観察されている。屈辱的で、けれどそれ以上に、彼女の体から片時も離れたくないという猛烈な欲望が、十歳の少年を支配していた。
お姉さんは、指が限界だと悟ったのか、ふっと力を抜いて少しだけ距離を置いた。それでも、彼女の足先はまだ、水の中で指の足首に絡みついている。
「ねえ、指くん。このことは、あのお兄さんたちには内緒ね。私たちだけの、秘密の流れ」
お姉さんの膝が、自分の最も敏感な場所にぐりぐりと押し当てられる。指は、体が壊れてしまうのではないかと思うほどの熱と、突き上げるような衝動に襲われていた。硬く、熱く、はち切れそうに膨らんだそこは、もはや自分の体の一部ではないような感覚だった。
指は、この体の変化が何を意味するのかを正確には知らなかった。保健体育の授業で習うようなおぼろげな知識はあっても、自分の股間で起きているこの暴風のような感覚の正体までは結びつかない。ただ、このまま彼女の体に触れ続けたら、自分の中にある何かが爆発して、消えてなくなってしまうのではないかという、根源的な恐怖に近い期待だけがあった。
「指くん、そんなに固くなって……。プール、怖いの?」
お姉さんは、指の動揺をすべて見透かしたような声で囁いた。彼女の太ももが、わざとらしく指の「そこ」をなぞるように滑る。
「……っ、ちが、ちがいます。苦しくて……でも、変な感じがして……」
指は必死に声を絞り出した。目の前にある彼女の鎖骨、水に濡れて張り付いた水着の質感、そして水面下で自分を弄ぶ柔らかな肉の感触。十歳の少年には、それらすべてが劇薬だった。
彼はまだ知らなかった。この高まりの果てに、体から何かが溢れ出す「精通」という現象があることを。ただ、この言いようのない疼きをどう処理すればいいのか分からず、ただお姉さんのなすがままにされるしかなかった。
「変な感じ? ふふ、それはね、指くんが私に一生懸命協力してくれてるからよ。……いい子ね」
お姉さんはそう言うと、水中で足を大きく開き、指の硬くなった部分を両方の太ももで挟み込むようにして、ぐっと力を入れた。
「あ、ああっ……!」
指はたまらず、ボートにしがみついたまま背中を反らせた。頭のてっぺんまで電気が走ったような衝撃が突き抜ける。お姉さんは、指が今にも限界を迎えそうな様子を見て、満足げに目を細めた。
彼女にとって、それは退屈な日常の中の、ほんの小さないたずらだったのかもしれない。しかし指にとっては、自分の幼い殻が内側からメリメリと割れていくような、決定的な「事件」だった。
お兄さんたちの「おい、指ー!」という声がすぐ近くまで迫ったとき、お姉さんは素早く足を解き、指から離れた。
「今の、秘密よ。約束して」
彼女はもう一度そう繰り返すと、何事もなかったかのように穏やかな表情に戻り、自分を呼ぶ声を待ち構えた。指は一人、激しく脈打つ鼓動を抑えきれず、水の流れに身を任せていた。自分の身に何が起ころうとしているのか、その予感に震えながら。
お姉さんは 指たちに 「やきそばでも食べません?おごるよ。」
お兄さんたちが「マジで!?」「ラッキー!」と歓声を上げ、勇んで売店へ駆けていく後ろ姿を見送りながら、指はまだ、水の中での余韻を引きずっていた。
お姉さんは大きなパラソルの下のベンチに腰を下ろすと、ベビーボートから赤ちゃんを抱き上げ、慣れた手つきでタオルに包んだ。
「はい、指くんの分」
手渡された焼きそばの容器は、太陽の熱とは違う、確かな食べ物の温かさを持っていた。ソースの香ばしい匂いが鼻をくすぐり、空腹を思い出させる。しかし、指の意識はどうしても、隣に座るお姉さんの白い脚の方へ向いてしまう。
プールから上がったばかりの彼女の肌には、まだ水滴がいくつか残っていて、それがパラソルから漏れる光を反射して光っていた。
「あ……ありがとうございます」
「いいのよ。助けてもらったお礼。……それに、ちょっといじわるしちゃったしね」
お姉さんは、指にしか聞こえないような小さな声でそう言って、パチンと割り箸を割った。指は心臓が口から飛び出しそうになり、慌てて焼きそばを口に放り込んだ。味がよく分からない。ただ、口の中がソースの熱さでいっぱいになり、それが股間に残る鈍い熱と呼応しているようだった。
「指くんは、あのお兄さんたちと仲良しなの?」
「はい……。近所の、タカ兄たちです。たまに、こうやって遊びに連れて行ってくれるんです」
「そう。いいお兄さんたちね」
お姉さんは、焼きそばを一口だけ上品に頬張ると、膝の上で眠り始めた赤ちゃんを愛おしそうに見つめた。さっきまでの、水面下でいたずらを仕掛けてきた「女」の顔はどこにもなく、今は穏やかな「お母さん」の顔をしている。そのギャップが、指をいっそう混乱させた。
「……お姉さんは、いつもここに来るんですか?」
「ううん、たまにね。ここは流れが穏やかだから、ぼーっとするにはちょうどいいの。……指くん、さっきの『変な感じ』、もう治まった?」
彼女は顔を上げず、焼きそばの紅生姜を突っつきながら、さらりと聞いた。指はむせて、激しく咳き込んだ。
「ご、ごほっ、ごほっ……! な、なんのこと、ですか」
「ふふ、隠さなくていいのに。男の子だもん、当たり前よ。でも、あんなに一生懸命耐えるとは思わなかった。指くんって、意外と根性あるのね」
お姉さんは、今度ははっきりと指の目を見て笑った。その瞳には、少年の無垢な反応を心から楽しんでいるような、大人の余裕が満ちていた。
指は、焼きそばのパックを握りしめた。タカ兄たちといる時は、自分はいつも「守られる子供」だった。けれど、このお姉さんの前では、自分が一人の「男」として扱われ、試されているような、不思議な優越感と恐怖が混ざり合った感情に包まれる。
「……僕、もう十歳ですから」
精一杯の背伸びをして答えると、お姉さんは「そうね、もう十歳だもんね」と優しく相槌を打った。そして、自由になった方の手で、指の濡れた髪を優しく撫でた。
「また流れに乗りたくなったら、ここに来るといいわ。……私も、時々流れているから」
遠くでタカ兄たちが、焼きそばを口いっぱいに詰め込みながら、手を振ってこちらへ戻ってくるのが見えた。指はこの夏の、ソースの匂いと水の熱さを、一生忘れないだろうと思った。
タカ兄たちの騒がしい声が、波の音に混じって少しずつ大きくなってくる。お兄さんたちは、自分たちの分の焼きそばを手に、何やら笑い合いながらこちらへ向かっていた。
その時だった。
「指くん、こっち向いて?」
お姉さんは、腕の中で眠る赤ちゃんを抱き直すふりをして、指の方へ体を寄せた。大きなバスタオルに包まれた赤ちゃんが二人の間の障壁になり、周囲からは指の腰から下が完全に見えない状態になる。
お姉さんの細い指先が、タオルの陰からするりと伸び、指の太ももを這い上がってきた。
「あ……っ」
指の喉が引き攣った。水着の中でようやく落ち着きかけていた「そこ」に、彼女の指先が迷いなく触れたのだ。薄い水着の生地越しに、彼女の手のひらの温もりと、指一本一本の形がはっきりと伝わってくる。
お姉さんは、まるでお菓子の中身を確かめるような手つきで、硬く張り詰めた少年の中心を優しく包み込んだ。
「まだ、こんなに熱い……」
彼女の声は、焼きそばの湯気に紛れて指の耳にだけ届いた。指は全身の筋肉を硬直させ、持っていた割り箸を指先が白くなるほど強く握りしめた。お兄さんたちはもう、十メートル先まで来ている。タカ兄が「おーい、指! 食ってるかー!」と手を振るのが見えた。
すぐそばに他人の目があるという極限の状況で、股間に伝わる背徳的な愛撫。指は呼吸を止めて、真っ赤な顔で前方の地面を凝視するしかなかった。お姉さんは、赤ちゃんをあやすような穏やかな表情を崩さないまま、指のそこをゆっくりと、指の腹で圧迫したり、なぞったりしている。
「指くん、お兄さんたちが来るわよ。ちゃんとした顔しなきゃ」
彼女はいたずらっぽく囁くと、去り際にキュッとそこを一度だけ強く握り、何事もなかったかのように手を引いた。
「よお、待たせたな! お姉さん、マジでご馳走様っす!」
タカ兄がドサリと隣に座り込み、指の肩に腕を回した。「なんだ指、顔が茹でダコみたいだぞ。さては焼きそばの紅生姜が辛かったか?」
「あ、うん……。ちょっと、暑くて」
指は、震える声でそう答えるのが精一杯だった。股間には、まだお姉さんの手の形のままの熱がこびりついている。お姉さんは、タカ兄たちの挨拶に愛想よく応えながら、ちらりと指に視線を送り、内緒だよと言わんばかりに小さくウィンクをした。
指は、残りの焼きそばを無理やり口に詰め込んだ。ソースの味はもう全くしなかった。ただ、自分と彼女だけが知っている「水面下の出来事」と、今の「タオルの下の秘密」が、十歳の少年の世界を、それまでとは全く違う色に変えてしまっていた。
お兄さんたちがすぐ横で「ここの焼きそば、意外と肉入ってんじゃん」と騒ぎ、割り箸を割る乾いた音が響く。その日常的な喧騒のすぐ隣で、指の世界は音を立てて崩れようとしていた。
タオルの陰から伸びたお姉さんの手は、一度離れるかと思いきや、今度はさらに深く、指の股間の熱を確かめるように包み込んだ。彼女はタカ兄たちと「いいえ、こちらこそ遊んでもらっちゃって」と平然と会話を続けながら、手の中にある指の「そこ」を、ゆっくりと、けれど力強く上下に動かし始めた。
「あ、ぐ……」
指は、声が漏れそうになるのを必死に堪えて、唇を血がにじむほど噛んだ。 十歳の少年の体には、あまりにも刺激が強すぎた。水着の布地が擦れるたび、頭の芯が痺れるような、甘くて鋭い痛みが脊髄を駆け上がっていく。
お姉さんは、指の様子を横目で楽しみながら、わざと動作を大きくした。彼女が赤ちゃんをあやすように体を揺らすたび、そのリズムに合わせて、指の最も敏感な場所が彼女の手のひらで絞られる。
「指? お前、本当に大丈夫か? 箸が震えてるぞ」
タカ兄が不思議そうに顔を覗き込んできた。 その瞬間、お姉さんの指先が「そこ」の先端を、爪を立てるようにしてキュッと刺激した。
「ひ……っ!」
指は跳ね上がった。心臓が爆発しそうだった。お兄さんの視線が、自分の顔、そしてタオルに隠された腰元へと向けられそうになる。絶体絶命の緊張の中で、指の体はついに限界を迎えた。
自分が知らない、自分の中の未知の熱。それが、お姉さんの手のひらの中で、激しい鼓動とともに一気にせり上がってくる。 指は、精通という現象を知らない。だから、自分の中で何かが壊れて、得体の知れないものが溢れ出そうとしている感覚に、恐怖で目を見開いた。
(出る、何かが出る——)
指は、お姉さんの腕を掴もうとして、空を仰いだ。 彼女は、指が限界に達したことを手のひらで感じ取ったのだろう。お兄さんたちが焼きそばを口に運ぶ一瞬の隙を突いて、最後の一絞りを与えるように、指のそこをグッと力強く握り込んだ。
指の視界が真っ白に染まった。 ドクン、ドクンと、体中の血液が一点に集まり、そこから何かが弾け出す感覚。 実際にはまだ子供の指に、大人のようなものは出なかったかもしれない。けれど、彼にとっては人生で初めて経験する「絶頂」という名の嵐だった。
「……あら。指くん、本当にお疲れみたいね」
お姉さんは、満足げに手を引いた。彼女の手のひらには、水着越しに伝わった少年の熱い名残が宿っている。彼女はさりげなく自分の太ももで手を拭うと、立ち上がって赤ちゃんを抱き直した。
「じゃあ、私たちはそろそろ行くわね。お兄さんたち、指くんをちゃんと家まで送ってあげてね?」
お姉さんは、放心状態で座り込む指に、最高に意地悪で、最高に優しい微笑みを残して、人混みの中へと消えていった。
残されたのは、ソースの匂いと、心臓の音だけ。 指は、自分の股間に残る、今まで知らなかった「重み」と「熱」を抱えたまま、遠ざかる背中をいつまでも追いかけていた。
お姉さんが去った後、指は魂が抜けたような顔で、空になった焼きそばの容器を見つめていた。頭の芯がジンジンと痺れ、自分の体がああも激しく揺さぶられた衝撃に、ただただ圧倒されていた。股間には、まだ彼女の手のひらの感触が、焼印のように熱く残っている。
タカ兄たちが「あのお姉さん、美人だったなぁ」「赤ちゃんも可愛かったし」と暢気に喋りながら、残った焼きそばを口に運んでいる横で、指はただ一人、別世界の住人のようになっていた。
ふと、指は自分の膝の上に、小さな紙切れが置かれていることに気づいた。 お姉さんが立ち上がる際、タオルの陰からそっと、指の手に握らせるようにして置いたものだ。
震える指先でその紙を開いてみる。そこには、プール施設のアンケート用紙の端をちぎったような小さな紙に、丸みを帯びた大人の女性の字で、十桁の数字が並んでいた。
そしてその数字の横には、小さな一言だけが添えられていた。
『落ち着いたら、ここに電話して。また、流れたくなったら。』
指は心臓が再び激しく脈打つのを感じた。 お兄さんたちには見えないように、そのメモをきつく握りしめ、濡れた水着のポケットの奥深くへ押し込んだ。
プールに反射する太陽の光が目に眩しい。 「おい、指! いつまでボーッとしてんだ。もう一回流れるぞ!」 タカ兄に背中を叩かれ、指は弾かれたように顔を上げた。
「……うん。行くよ」
歩き出した指の足取りは、先ほどまでとは少し違っていた。 自分のポケットの中に、自分とお姉さんだけが知っている、熱い「秘密」が隠されている。そのことが、十歳の少年の背中を、ほんの少しだけ大人へと押し出しているようだった。
流れるプールの水音は、相変わらずゴーゴーと鳴り響いている。 けれど、指にはそれが、あの時の彼女の囁き声のように聞こえてならなかった。
夕暮れ時、市民プールの出口には、どこか物悲しい夏の終わりのような匂いが漂っていた。
指は、お兄さんたちと駅前で別れた。 「指、今日は楽しかったな。また明日、公園でな!」 タカ兄たちが手を振って、自転車で夕闇の中へ消えていく。彼らにとって今日は「近所の子供とプールに行った一日」に過ぎなかったが、指にとっては、人生が完全に書き換わってしまった一日だった。
一人になって、家までの細い道を歩く。 指は、プールの帰り際に何度も流れるプールへ潜ったことを思い出していた。水着の中で、自分でも驚くほど溢れてしまった「それ」を、冷たい塩素の水で洗い流すために。 水の中で自分の体から何かが溶け出していく感覚は、恐ろしくもあり、どこか清々しくもあった。白く濁ったものは水の流れに吸い込まれ、あっという間に消えてしまったけれど、あの瞬間の、腰が砕けるような衝撃だけは、いくら水を浴びても消えることはなかった。
家の玄関が見えてくる。 夕食の支度をする匂いが、どこかの家から流れてきた。 指は立ち止まり、濡れたタオルや水着が詰まった重たいバッグに手を入れた。その奥底、ビニール袋の隙間に、あのメモが確かに存在していることを指先で確かめる。
(電話……本当にしてもいいのかな)
十歳の指は、まだ自分の声が、電話越しに彼女にどう聞こえるかさえ想像できなかった。けれど、水着の中の汚れを洗い流した今の自分は、プールに行く前までの「ただの指くん」とは違うのだという、確かな確信があった。
ポケットの中のメモを指先でなぞりながら、指は深く息を吸い込んだ。 夏の夜風が、少しだけ火照った頬に冷たく心地よかった。
夕食を済ませ、親がテレビの音に夢中になっている隙を突いて、指は自分の部屋に逃げ込んだ。心臓の音がうるさくて、耳の奥までドクドクと響いている。
バッグの底から、湿って少しふやけたメモを取り出す。何度も指でなぞったせいで、数字の端が少し滲んでいた。指は学習机の椅子に深く腰掛け、震える手でスマートフォンを操作した。十桁の数字を一つずつ、まるで壊れ物を扱うように慎重に打ち込んでいく。
発信ボタンを押すと、耳元で規則的な呼び出し音が鳴り始めた。 「プルルル……プルルル……」
その音が鳴るたびに、指の胃のあたりがキュッと縮み上がる。もし出なかったら。もし、間違い電話だったら。あるいは、お姉さんがあの時のことを忘れて笑い飛ばしたら。
四回目、五回目……。諦めて指を離そうとしたその時、プツリと音がして、静寂が訪れた。
「……もしもし?」
昼間の、あの水の音の中で聞いたのと同じ、少し低くて柔らかな声だった。
「あ……あの、僕です」
指の声は、自分でも驚くほど上ずっていた。自分が誰なのか、名前を言うべきか迷っていると、電話の向こうで小さく「ふふっ」と笑う気配がした。
「指くん、ね? 意外と早かったわね。……お家にはもう帰ったの?」
「はい。さっき……」
「そう。……ねえ、指くん。あの後の水着、どうしたの?」
お姉さんの声は、昼間よりもずっと親密で、まるですぐ隣で囁かれているような錯覚に陥る。指は思わず、もう乾き始めているはずの股間のあたりに手をやった。
「……プールで、洗いました」
「そう。綺麗に流しちゃったのね。でも、体の方はどう? まだ、私の手の感触が残ってたりしない?」
心臓が跳ねた。彼女の言葉は、十歳の少年の逃げ場を容赦なく奪っていく。指は目を閉じると、暗闇の中に彼女の白い太ももと、タオルの陰で動く手のひらが鮮明に浮かんできた。
「……残ってます。ずっと、そこだけ熱くて」
「いい子ね、指くん。正直な子は好きよ」
お姉さんは、電話越しにゆっくりと息を吐く音を響かせた。
「あのね、指くん。今度の土曜日、またあのプールに来れる? 今度は、お兄さんたち抜きで。……流れるプールの、一番奥の橋の下で待ってるから」
それは、未知の世界への招待状だった。指は、自分が踏み込んではいけない場所に足を踏み入れようとしていることを自覚しながら、抗うことなどできなかった。
「……はい。行きます」
電話を切った後も、指はしばらく受話器を握りしめたまま動けなかった。 窓の外では、夏の虫たちが騒がしく鳴いている。 指は、机の上に広げたままの教科書を閉じ、暗い夜の闇を見つめた。次の土曜日、自分はどんな顔をしてあの水の流れに身を任せることになるのだろうか。
十歳の夏。指の本当の「流れ」は、まだ始まったばかりだった。
土曜日、指は親に「友達と遊んでくる」とだけ言い残し、家を飛び出した。心臓の鼓動が自転車を漕ぐ足に伝わり、ペダルが異様に軽く感じられる。
市民プールに到着すると、一人分の入場券を握りしめ、吸い込まれるように入場門をくぐった。お兄さんたちがいないプールサイドは、いつもよりずっと広く、そしてひどく心細く感じられた。
指は真っ直ぐに流れるプールへ向かった。夏休みの中盤、家族連れやカップルで溢れ返る喧騒の中、彼はひたすら「一番奥の橋」を目指した。
橋の下は、プールの照明が届きにくく、コンクリートの影が水面に落ちて、そこだけ少しひんやりとしている。 水に浸かった足から冷気が伝わるが、指の体温は逆に上がっていくようだった。
「指くん、本当に来たのね」
橋脚の陰から、ゆらりと影が動いた。 そこにいたのは、あの日と同じ、でもどこか違う雰囲気を感じさせるお姉さんだった。今日は赤ちゃんを連れていない。薄い水色の水着の上に、濡れた肌が透けるようなラッシュガードを羽織っている。
「……約束、したから」
指が短く答えると、彼女は満足そうに微笑み、ゆっくりと指の方へ歩み寄ってきた。水流に逆らって歩く彼女の動きに合わせて、水面が小さく波立ち、彼女の体温を運んでくる。
「お兄さんたちには、内緒にしてきた?」
「はい。誰にも言ってません」
「そう、偉いわ」
彼女は指の目の前で足を止めると、橋の下の薄暗い静寂の中で、そっと指の頬に手を触れた。冷たい水の中にいるはずなのに、彼女の指先は驚くほど熱い。
「今日はね、赤ちゃんがいないから、両手が自由なの」
お姉さんはそう囁くと、指を促すようにして、二人で流れるプールの壁際に身を寄せた。上を流れる人々からは、橋の死角になって見えない場所だ。
「指くん、あの後、お家で私のこと考えた?」
彼女の手が、水面の下へ、ゆっくりと沈んでいく。 指は、あの日の感覚が蘇り、全身が粟立つのを感じた。水着の中に滑り込んでくる彼女の指先は、あの日よりもずっと大胆で、容赦がなかった。
「……毎日、考えてました。名前も、知らないのに」
「ふふ、名前なんて、今はどうでもいいじゃない」
お姉さんは指の耳元に唇を寄せ、熱い吐息とともに囁いた。 水面下で、彼女の柔らかな掌が、すでに硬くなり始めた指の「そこ」を優しく、でも力強く包み込む。
「今日は、あの時よりももっと、たくさん教えてあげる。……指くんのその『指』で、私のことも、しっかり覚えてね」
流れるプールの轟音が、二人の周りの静寂をかき消していく。 指は、彼女の肩にしがみつきながら、再び訪れる未知の熱狂の中に、深く、深く、沈み込んでいった。
橋の下の薄暗がりは、周囲の喧騒から切り離された二人だけの密室だった。ゴーゴーという水の流れる音が、指の荒い呼吸をかき消してくれる。
「ねえ、指くん。水着の上からじゃ、本当の気持ちよさは分からないわよ」
お姉さんはそう言うと、水面下で指の海パンの紐を、手慣れた動きで緩めた。指が驚いて声を上げそうになると、彼女は空いている方の手で指の口を優しく塞ぐ。
お姉さんの細い指が、水着の隙間から直接、指の肌に触れた。初めて触れられる、生身の女性の指先。その滑らかさと適度な弾力に、指の体は電流が走ったように震えた。彼女は、硬く熱くなった少年の中心を、おにぎりを握るような優しい手つきで、でも確実に芯を捉えて包み込む。
「熱い……。指くん、こんなに大きくなっちゃって。ここ、どうしてほしいか言ってみて?」
「わ、わかんない……です。でも、もっと、触って……」
指が必死に懇願すると、お姉さんは目を細めて、水中で自分の体を指に密着させた。彼女の豊かな胸の感触が、ラッシュガード越しに少年の胸に押し付けられる。
彼女は親指の腹で、指の最も敏感な先端を、円を描くようにゆっくりと、じっくりとなぞり始めた。水流がクッションになり、指先の摩擦が絶妙な快感となって脳を揺さぶる。指は膝の力が抜け、彼女の肩に必死にしがみついた。
「ここはね、こうして優しく撫でられるのが好きなの。……ほら、ビクビクしてる」
お姉さんは、今度は手のひら全体を使って、少年の膨らみを根元から先端へと、強くしごき上げた。水着の中に水流が入り込み、彼女の手の動きと混ざり合って、指が今まで経験したことのないような、なまめかしい刺激が繰り返される。
「あ、ああっ……! お姉さん、なんか、また出そうで……!」
「いいわよ、全部出しちゃいなさい。私が全部受け止めてあげるから。……指くん 私に頂戴?」
彼女は手の動きを早め、指の腰を自分の方へと引き寄せた。太ももと太ももが絡み合い、水中で二人の体温が溶け合う。彼女の指が、少年の未熟な部分を容赦なく責め立て、快感の渦が指の理性を完全に飲み込んでいった。
逃げ場のない橋の下で、指はただ、お姉さんの手のひらの中で弾けることだけを願っていた。十歳の少年が、大人の女性によって「男」としての悦びを刻み込まれる、背徳的な教育の真っ最中だった。
橋の下の薄暗がりで、指の体は二度目の衝撃に打ち震えていた。
お姉さんの細い指が、水面下で激しく、けれどリズムを保って動き続ける。先週、初めて何かが弾けたあの日から、指はずっと混乱していた。家で一人、布団の中で思い出しては熱くなるのに、どうすればあの「先」に行けるのかが分からなかったのだ。ただ硬くなって、苦しくて、もどかしいまま朝を迎える。そんな数日間が嘘のように、今、お姉さんの手のひらの中で、あの凄まじい熱が再びせり上がってくる。
「あ、あ、ああ……っ!」
指は声を殺し、お姉さんの肩に顔を埋めた。 彼女の手が、キュッ、キュッと、絶妙な強さで彼の中心を上へと絞り上げる。その瞬間、先週よりもずっと鮮明な、そしてずっと深い場所からの痺れが指の全身を突き抜けた。
ドクン、ドクンと、幼い体が波打つ。 水着の中に、自分の一部が溶け出していく感覚。それは、先週よりもずっと長く、重たい悦びだった。お姉さんは、指が果てるまでその手を緩めず、最後の一滴を絞り出すように優しく、そして力強くしごき続けた。
「……ふふ、指くん、すごい。先週より、ずっと大人になってる」
お姉さんは、指の耳元で満足げに囁いた。指は彼女の体に体重を預けたまま、肩で激しく息をしていた。頭の中は真っ白で、ただ、自分の股間に残る「しごき」の余韻だけを反芻していた。
(そっか……こうやって、しごくんだ……)
指は、お姉さんの手の動きを、その指の感触を、自分の皮膚に刻み込むように思い返していた。ただ熱くなるのを待つのではなく、自分の手で、あるいは彼女の手で、あの場所を動かしていくこと。それが「いく」ための鍵なのだと、十歳の彼は本能で理解した。
「指くん、分かった? こうされるのが、気持ちいいんでしょう?」
お姉さんは、水の中でそっと指の海パンを整え、紐を結び直してくれた。指は顔を真っ赤にしながら、小さく、けれど確信を持って頷いた。
「……はい。お姉さんの手、すごかったです」
「次は、自分でも練習してみてね。でも……私にされる方が、もっと気持ちいいでしょ?」
彼女はいたずらっぽく微笑むと、指の頬を最後にもう一度だけ撫で、橋の下から明るい陽光の差す方へと泳ぎ出していった。
指は、しばらくその場に留まり、自分の手のひらを見つめた。 この手で、いつか彼女がしてくれたように自分を慰める日が来るだろう。けれど、この流れるプールの、冷たい水と彼女の手の熱さが入り混じった不思議な感触は、誰にも真似できない特別な「授業」だった。
夏の太陽が、キラキラと水面を照らしている。 指は、もう一度だけ深呼吸をして、新しい「秘密」と「知識」を胸に、ゆっくりと光の中へ泳ぎ出していった。
橋の下の薄暗がりに、ひんやりとした静寂が戻ることはありませんでした。お姉さんは、指が呆然と余韻に浸るのを許さず、その濡れた手で彼の顎をくいと持ち上げました。
「水の中だけじゃ、本当の形はよく見えないわよね」
彼女は周囲に人がいないことをもう一度確認すると、プールの壁際にある、メンテナンス用の小さなコンクリートの段差に腰を下ろしました。そこは水面からわずか数センチだけ顔を出している、隠れた足場のような場所です。
「指くん、ここに来て。……もっと近く」
言われるがままに近づくと、彼女は指を自分の両脚の間に招き入れました。そして、彼と視線を合わせながら、ゆっくりと自分のラッシュガードのジッパーを下ろしたのです。中から現れたのは、水に濡れて肌にぴたりと吸い付いた、大人びた水着の胸元でした。
「お姉さん……?」
「授業は、まだ終わりじゃないわよ」
彼女は指の手を取り、自分の水着の上へと導きました。十歳の少年の手のひらに、女性特有の柔らかさと、力強い鼓動が伝わります。指がその感触に息を呑んでいる間に、お姉さんのもう片方の手は、再び指の水着へと伸びていました。
今度は、水の中に隠すような真似はしませんでした。彼女は指の水着をぐいと下げ、彼の熱りたったそこを、明るい光がわずかに差し込む空気の中へと直接さらけ出したのです。
「見て、指くん。これが、あなたの本当の姿よ」
初めて、自分以外の誰かに直接晒された、剥き出しの自分。指は恥ずかしさで震えましたが、彼女の視線はどこまでも優しく、そしてどこか貪欲でした。
お姉さんは、濡れた自分の指先に、口から出した小さな雫を馴染ませました。そして、水の中よりもずっと直接的で、なまなましい指の動きで、彼の先端をゆっくりと、粘り強くこすり始めました。
「ひ……ああっ、さっきより、ずっと……!」
「そうでしょ? 水の中よりも、こうして直接触れ合う方が、ずっと熱くて、ずっと濃い音がするのよ」
彼女の言う通りでした。水の中では消されてしまう「クチュッ」という湿った音が、橋の下に小さく響きます。お姉さんは指を自分の方へ引き寄せると、その剥き出しの熱を、自分の柔らかなお腹の肌に直接押し当てました。
「私の肌の熱さ、わかる? 指くんのここ、さっきよりももっと怒ってるみたい」
彼女は指の首筋に鼻を寄せ、少年の匂いを深く吸い込みながら、手の動きをさらに激しく、複雑に変えていきました。指の節々を使い、時には爪の先で刺激し、時には手のひら全体で圧迫する。
それは、水流に身を任せるだけの遊びではありませんでした。 指は、自分の体が彼女の指先一つでどうにでも作り替えられてしまうような、恐ろしいほどの快感の渦に叩き込まれました。
「指くん……しっかり見てて。これが、大人の遊び方よ」
彼女が最後に、指のそこを根本から力いっぱい握り込んだ瞬間、指は天を仰いで絶叫しそうになるのを、彼女の肩を噛むことで必死に耐えました。空気の中で弾けた感覚は、水の中とは比べ物にならないほど鋭く、指の全身を震わせました。
すべてを出し切り、ぐったりと彼女の胸に顔を埋める指。お姉さんは、汚れてしまった自分の手と彼のお腹を、プールの水で優しく、名残惜しそうに洗い流してくれました。
お姉さんの直接の指使いによって、指の脳内にあった「子供」という名のストッパーが完全に吹き飛びました。
再び訪れた強烈な射精の余韻が冷める間もなく、指の体は自分でも制御できない飢えた衝動に支配されていました。お姉さんの柔らかな肌の感触、鼻をつく塩素と女の混ざり合った匂い、そして自分を弄んだ手の熱。それらすべてが、指の中に眠っていた野生を呼び覚ましたのです。
「指くん……? どうしたの、そんなに真っ赤な顔をして」
お姉さんが少したじろぐほど、指の瞳には理性の欠片も残っていませんでした。彼は言葉を失った代わりに、本能のままにお姉さんの体に飛びつきました。十歳の小さな体からは想像もできないほどの力で、彼女の細い腰を両腕で締め上げ、その豊かな胸元に顔を埋めて、獣のように激しく鼻を鳴らします。
指はまさに、一匹の「猿」に変身していました。
お姉さんの首筋や肩に、容赦なく自分の歯を立て、吸い付き、彼女という獲物を隅々まで味わい尽くそうと貪りつきます。 「あっ、ちょっと、指くん! 痛いわ……っ、待って、そんなに……!」
お姉さんの当惑した声も、今の指には心地よい音楽でしかありません。彼は彼女のラッシュガードを力任せに左右へ押し広げ、剥き出しになった肌に自分の熱を執拗にこすりつけました。さっきまで教育していたはずのお姉さんが、今や指という小さな獣に圧倒され、背中のコンクリート壁に押し付けられています。
指の手は、先ほど彼女に教わった通りに、でももっと荒々しく、彼女の体の膨らみを掴み、揉みしだきました。お姉さんは少年のあまりの変貌ぶりに驚きながらも、その剥き出しの欲望に当てられたのか、次第に瞳を潤ませ、自身の呼吸を乱し始めました。
「はぁ、はぁ……指くん、あなた、なんて力なの……。そんなに、お姉さんのこと欲しくなっちゃったの?」
指は答えません。ただ、彼女の肌を舐め上げ、噛みつき、自分の存在を刻みつけることに没頭しています。彼の股間は、先ほど果てたばかりだというのに、再び岩のように硬く、熱く、彼女の太ももを突き上げていました。
橋の下、水の轟音にかき消されるようにして、少年の野性と女の嬌声が混じり合います。指はもはや「指」という名前の少年ではなく、ただひたすらに雌の熱を求める、純粋で残酷な獣そのものとして、お姉さんの体の上で狂い咲いていました。
橋の下のコンクリートに囲まれた狭い空間は、もはや公共のプールの一部ではなく、外界から隔絶された濃密な檻のようでした。ゴーゴーと鳴り響く水の音は、二人の荒い吐息と、水着が擦れ合うなまなましい音を完全に閉じ込めています。
「指くん……っ、そんなに激しくされたら……」
お姉さんは、背中の冷たい壁と、指の熱い体の間に挟まれ、逃げ場を失っていました。十歳の少年とは思えない力で、指はお姉さんの水着の隙間に手をねじ込み、彼女の柔らかな肉を直接掴みました。教わったばかりの「しごく」という動作を、今度は彼女の体に対して、本能のままにぶつけていく。
指の指先が、彼女の秘められた場所の熱に触れた瞬間、お姉さんの体が大きく跳ねました。
「あああ……っ! そこ、指くん、そこは……っ!」
彼女の嬌声が橋の下に反響します。指は、自分の指先を包み込む湿った熱さと、彼女が悶える様子を見て、ますます獣のような興奮に突き動かされました。彼は彼女の首筋に顔を埋め、獣が獲物を仕留めるように強く吸い付き、赤い印をいくつも刻みつけます。
お姉さんは、自分が教育していたはずの少年に支配されているという事実に、背徳的な快感を覚えたのか、次第に抵抗を止め、自分の脚を指の腰に絡みつけました。
「いいわ……もっと、めちゃくちゃにして。指くんの好きなように、お姉さんを食べて……」
その言葉が引き金となり、指の「猿」のような野性は頂点に達しました。彼は彼女の胸元に顔をこすりつけながら、自分の硬く熱い塊を、彼女の太ももの間に強引に割り込ませました。水と愛液が混ざり合い、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる中、指は腰を激しく振り、彼女の柔らかな肌に自分の欲望を叩きつけ続けました。
指の頭の中には、もう「名前」も「学校」も「お兄さんたち」もありません。ただ、目の前の女の熱を奪い、自分の熱を注ぎ込むことだけが世界のすべてでした。
お姉さんは、少年の純粋で荒々しいピストンに翻弄され、白目を剥いてのけぞりました。彼女の指が、指の背中に食い込み、爪が食い込む痛みさえも、彼にとっては快感のスパイスでしかありません。
「あ、ああっ……指くん……いく、いくわ……っ!」
お姉さんが絶頂に達し、全身を震わせるのと同時に、指もまた、自分でも制御できないほど膨れ上がった衝動を爆発させました。
激しい痙攣とともに、彼の内側から熱い何かが、彼女の肌の上へと勢いよく迸ります。それは、十歳の少年が「子供」という殻を完全に破り捨て、一人の「雄」として生まれ変わった証でした。
二人は重なり合ったまま、橋の下の冷たい飛沫を浴びて、しばらく激しく肩を上下させていました。流れるプールの水は、何もなかったかのように、ただ二人の足元を無慈悲に通り過ぎていきました。
嵐が過ぎ去った後の橋の下には、ただ「ゴォー」というプールの機械音だけが虚無的に響いていました。
指は、お姉さんの豊かな胸に顔を埋めたまま、荒い呼吸を繰り返していました。肌に伝わる彼女の鼓動はまだ速く、指の全身は、まるで高熱を出した後のようにガタガタと震えていました。
やがて、お姉さんがふっと短く息を吐くと、指の肩を優しく押し返しました。
「……はい、そこまで」
その声は、つい数秒前まで艶かしく震えていたものとは思えないほど、低く、落ち着いた「大人の女」のトーンに戻っていました。
彼女は手際よく自分のラッシュガードのジッパーを上げ、乱れた水着を整えました。そして、まだ放心状態で股間をさらけ出している指の海パンを、まるで母親が子供の世話を焼くような無機質な手つきで引き上げました。
「指くん。顔、洗ってきなさい。真っ赤よ」
彼女はコンクリートの段差から立ち上がると、一度も後ろを振り返ることなく、プールの流れの中へ足を踏み入れました。太陽の光が差し込む明るい場所へ出た瞬間、彼女の背中は、どこにでもいる「一人の若いお母さん」の姿に完全に溶け込みました。
指は、冷たい水の感触でハッと我に返りました。 自分の手を見る。そこにはまだ、彼女の肌の柔らかさと、自分の体から溢れたものの感触が微かに残っています。けれど、数メートル先を優雅に流れていく彼女の横顔には、もう先ほどの情欲の欠片も見当たりませんでした。
「……お姉さん」
小さく呟いてみましたが、その声は水の音にかき消されました。 彼女は一度だけ、遠くから指の方を振り返りました。しかし、その瞳にあったのは愛撫の記憶ではなく、「またね」とも「さよなら」ともつかない、ただの通りすがりの大人としての冷ややかな、けれどどこか満足げな一瞥(いちべつ)でした。
指はふらふらと橋の下から出ました。 眩しい太陽の下では、子供たちが歓声を上げ、お父さんたちが浮き輪を膨らませ、焼きそばのソースの匂いが漂っています。 ついさっきまで自分が「獣」になっていたことなど、誰も知らない。この平和で退屈な市民プールの風景こそが、指の住むべき「現実」なのだと、突き放されたような感覚に陥りました。
ポケットの中のメモは、水に濡れてもうボロボロになり、文字はほとんど読み取れなくなっていました。
指は、冷たい水で何度も何度も顔を洗いました。 けれど、まぶたの裏に焼き付いた彼女の白い肌と、自分の指先が覚えたあの熱い感覚だけは、どれだけ水を浴びても、決して洗い流すことはできないことを知っていました。
十歳の夏。流れるプールの片隅で、指は子供であることを卒業し、誰にも言えない孤独な「秘密」を抱えた一人の男になりました。
遠くで、閉園時間を告げるサイレンが、現実の終わりを告げるように鳴り響いていました。
【完】