
朝の東西線は、感情を押し殺した大人たちの吐息で満ちている。 指(ゆび)、16歳。高校に入学して3ヶ月。まだ馴染みきっていない硬い制服の襟が、喉仏に当たってじりじりと痛い。周囲をサラリーマンの背中に囲まれ、身動きが取れない。右手は吊革を掴み、左手はカバンのストラップを握りしめている。
茅場町を過ぎたあたりで、車両が大きく揺れた。 その瞬間、背後にいた女性の体が、吸い付くように指の背中に押し付けられた。
彼女の体温が背中から全身へと伝わり、指の心臓は今にも肋骨を突き破りそうなほど激しく打ち鳴らされていました。周囲の大人たちはスマートフォンを眺めたり、虚空を見つめたりして、この異常なまでの近距離で起きている出来事に誰も気づいていません。
彼女は、指が困惑し、硬直しているのを知っているかのようでした。電車がカーブに差し掛かり、車両が左右に揺れるたび、彼女はあえてバランスを崩すふりをして、その柔らかな胸元を指の肩に預けてきます。そのたびに鼻腔をくすぐる、甘く、どこか危険な香りが、少年の頭の中を白く塗りつぶしていきました。
「……君、次の駅で降りるの?」
耳元で、囁くような声がしました。それは電車の走行音に掻き消されそうなほど小さな声でしたが、指にとっては雷鳴のように大きく響きました。彼女は表情を崩さぬまま、けれど確実な意志を持って、重なった指先に力を込めます。
指はまともに返事をすることすらできず、ただ小さく頷くのが精一杯でした。16歳の彼にとって、これまで経験してきたどんな期末テストや部活動の試合よりも、この数分間の方がはるかに過酷で、そしてどうしようもなく刺激的でした。
ドアが開き、人の流れがホームへと溢れ出します。指は逃げるように電車を降りましたが、背後から軽やかな足音がついてくるのを感じて、思わず足を止めました。振り返ると、そこには先ほどの「綺麗なお姉さん」が、悪戯っぽく微笑んで立っていました。
「ねえ!ちょっと時間ある?」
「いいえ これから 学校が」
「学校なんて、今日くらいサボっちゃえば?」
彼女はそう言って、指の制服の袖を薄い指先で軽く引きました。その仕草はあまりに自然で、それでいて抗いがたい強さを持っていました。指は言葉に詰まり、視線を泳がせます。朝の光が差し込む駅のホームで、周囲を急ぎ足で通り過ぎる通勤客たちの群れが、まるで別世界の出来事のように遠のいていきました。
「真面目なんだね。でも、そんなに顔を赤くして学校に行っても、先生に熱があるって保健室に送られちゃうよ?」
彼女は顔を覗き込むようにして距離を詰め、くすくすと喉の奥で笑いました。至近距離で見つめる彼女の瞳は、吸い込まれそうなほど澄んでいて、同時に何でも見透かしているような深みがあります。指は「そんなことはない」と言い返そうとしましたが、喉がカラカラに乾いていて、情けない掠れた音しか出せませんでした。
指の頭の中では、一限目の数学の授業と、目の前の女性の誘いが天秤にかけられていました。もちろん、答えは最初から決まっていました。16年間、親や教師の言う通りに生きてきた少年にとって、この状況は人生で初めて訪れた「分岐点」そのものでした。
彼女は指の反応を待たず、そのまま彼の腕に自分の腕を絡めました。柔らかい感触が二の腕に伝わり、指の思考は完全に停止します。彼女は「こっち」と短く促すと、学校とは正反対の方向にある、改札の外へと続く階段の方へ歩き出しました。
「ねえ、指くんって言うんだ。名札、見えちゃった」
名前を呼ばれた瞬間、指の心臓は今日一番の跳ね上がりを見せました。自分の名前がこれほどまでに艶っぽく、重みを持って響いたことはありませんでした。彼はもう、彼女の歩調に合わせる以外に道はないのだと、半分諦め、半分は狂おしいほどの期待を抱きながら、校門とは違う景色の中へと踏み出していきました。
「……今日は、午前中で授業が終わるんです。その後でよければ」
指は、絞り出すような声でそう答えました。精一杯の妥協案であり、同時に彼なりの精一杯の勇気でもありました。彼女は一瞬だけ意外そうに目を見開きましたが、すぐにまた、あの困ったような、それでいて愛おしいものを見るような笑みを浮かべました。
「そっか。試験休みか何かかな? 偉いね、ちゃんと学校には行くんだ」
彼女は絡めていた腕をゆっくりと解きましたが、別れ際に指の耳元へ顔を寄せました。ふわりと、あの甘い香りが再び鼻をくすぐります。彼女の唇が触れそうなほどの距離で、「じゃあ、お姉さん、ここで待ってるから」と囁かれ、指の背筋に電撃のような震えが走りました。
彼女はバッグから小さなカードケースを取り出すと、そこから一枚のショップカードのようなものをつまみ出し、指の胸ポケットにそっと差し込みました。
「お昼、1時。その場所にきて。サボらなかったご褒美、考えておくね」
彼女はそれだけ言い残すと、颯爽と人混みの中へ消えていきました。残された指は、しばらくの間、自分の胸の鼓動だけを聞きながら立ち尽くしていました。ポケットの中のカードからは、かすかに彼女と同じ香りが移っています。
それからの授業の内容なんて、ひとつも頭に入りませんでした。黒板に並ぶ数式はただの記号の羅列にしか見えず、時計の針が進む音だけが、指の意識を激しく急かしていました。昼休みのチャイムが鳴った瞬間、彼はクラスメイトの誘いも聞かずにカバンを掴み、教室を飛び出しました。
指定された場所は、駅から少し離れた場所にある落ち着いた雰囲気のカフェでした。約束の5分前。指が額の汗を拭いながら店の前に辿り着くと、テラス席の影から、彼女が大きく手を振る姿が見えました。
「本当に来た。……可愛いね、指くん」
彼女は午前中とは違う、少しリラックスした表情で指を迎え入れました。16歳の童貞にとって、これから始まる「放課後」が、どんな未知の扉を開いてしまうのか。指は期待と恐怖が入り混じった心地よい眩暈を感じながら、彼女の向かいの席に腰を下ろしました。
彼女はテーブル越しに、改めて一枚の名刺を指の前に差し出しました。上質な紙の質感に、カチッとしたフォントで「株式会社ラテックスゴム 製品開発部 チーフ 伊藤真理」と印字されています。
それまで漂っていた甘く謎めいた雰囲気とは裏腹に、急に突きつけられた「社会人」としての現実に、指は少し気圧されました。ゴムメーカーの製品開発部。16歳の指にとって、それはまだ自分の生活とは結びつかない、大人の世界の言葉でした。
「伊藤……真理さん」
指がその名前をなぞるように呟くと、真理は少し真剣な、それでいてどこかいたずらっ子のような眼差しを彼に向けました。
「そう。名刺を渡したのはね、ただのナンパじゃないって信じてもらうため。……実は指くんに、ちょっと相談があるんだ」
彼女は少し身を乗り出し、机の上に組んだ両手の上に顎を乗せました。その瞳は、朝の満員電車で見せた妖艶な光を宿したまま、仕事の話をしようとするビジネスパーソンの鋭さも帯びています。
「うちの会社、今度新しく『若年層向けのヘルスケア製品』を開発してるんだけど……。ぶっちゃけて言うと、現役の高校生の、それも指くんみたいな『純粋な男の子』のリアルな意見がどうしても必要なの。朝、君と密着したとき、心臓の音がここまで聞こえてきそうだった。あぁ、この子なら嘘のない反応を教えてくれるかもって、直感しちゃったんだよね」
真理はそう言って、指の視線を捉えて離しませんでした。
「放課後の時間、私に貸してくれないかな? もちろん、ただでとは言わない。モニター調査っていう名目で、謝礼も出すし……それに、学校では絶対に教えてくれないこと、私が全部教えてあげる」
指の心臓が、再びうるさく脈打ち始めました。相談という名の誘惑。16歳の彼には、その言葉の裏にどれほどの熱量が含まれているのか、推し量ることすらできませんでした。
「株式会社ラテックスゴム」という社名を聞いても、指の頭にはゴム手袋や文房具の消しゴムくらいしか浮かんでいませんでした。それがまさか、大人の夜の必需品を扱うメーカーだとは、16歳の純朴な彼には想像もつかないことでした。
今の指にとっては、会社の業種なんて二の次でした。それよりも、学校にいたら絶対に接点のないような、洗練された大人の美人が自分を選び、真剣な顔で「相談がある」と頼ってくれている。その事実だけで、胸の奥が熱くなり、舞い上がってしまうには十分すぎました。
「僕で役に立てるなら……いいですよ。何でも言ってください」
指が赤くなりながらも真っ直ぐに答えると、真理は「よかった、断られたらどうしようかと思った」と言って、パッと花が咲いたような笑顔を見せました。その笑顔の破壊力に、指はさらに深く椅子に沈み込むような感覚に陥ります。
「ありがとう、指くん。じゃあ、ここではちょっと話しにくい内容だから、場所を変えようか。私の車、すぐそこにあるから」
彼女は伝票を掴んで流れるように会計を済ませ、指を促しました。彼女の後を追って店を出ると、そこには都会の街並みに似合う、磨き上げられた輸入車が停まっていました。
助手席のドアを開けてもらい、慣れない高級な本革の香りに包まれながら、指は緊張で膝を揃えました。真理が運転席に乗り込み、エンジンをかけると、車内という狭い密室の中に、朝から彼を狂わせているあの甘い香水が充満します。
「今から、私の会社の試作室……というか、プライベートなラボに行くね。そこで、新しく開発した『超極薄素材』の感触について、意見を聞かせてほしいの。指くんは、まだ『それ』に触れたことはないかもしれないけど、だからこそ先入観のない感想が欲しいんだ」
真理はサイドブレーキを外し、なめらかに車を走らせました。目的地が、自分をさらに未知の世界へと引きずり込んでいく場所だとも知らず、指はただ、隣に座る美しいチーフの横顔を盗み見ていました。
車は静かな住宅街を抜け、少し派手な電飾が目立つエリアへと入っていきました。真理がハンドルを切って滑り込ませたのは、高い壁に囲まれた、いかにも隠れ家といった雰囲気の建物でした。
入り口にあるパネルには、きらびやかな部屋の写真が並んでいます。16歳の指でも、ここがどういう場所なのか、直感的に理解できました。心臓が跳ね上がり、呼吸が浅くなります。
「真理さん、ここって……」
指が震える声で尋ねると、真理は慣れた手つきで駐車を終え、エンジンを切りました。車内が急に静まり返り、彼女の衣擦れの音だけが耳に届きます。
「驚かせてごめんね。でも、うちの製品を試すには、ここが一番適してるの。防音もしっかりしてるし、誰にも邪魔されないから。今日はここで、ちょっとした『実験体験』をお願いするわね」
真理はそう言って微笑むと、戸惑う指の背中を優しく押すようにして、エレベーターへと促しました。
案内された部屋は、過剰なほど大きなベッドと、柔らかな間接照明に照らされた空間でした。真理はバッグをソファに置くと、ジャケットを脱ぎ、窮屈そうに首元を緩めました。その仕草一つひとつが、指の目には刺激が強すぎました。
「さて、まずはこれから始めてみようか」
彼女がバッグから取り出したのは、キラキラとした小さなアルミのパッケージでした。そこには、先ほど名刺で見たのと同じ「株式会社ラテックスゴム」のロゴが入っています。
「これが、私たちが社運をかけて開発した最新作。まだ世の中に出ていない、究極の皮膚感を目指したサンプルよ。指くん、これを開けてみてくれる?」
真理はベッドの端に腰掛け、指を自分のすぐ隣へと招き寄せました。16歳の童貞である指にとって、ホテルのベッドの上で、大人の女性から差し出された「それ」。
コンドームというものの実物を初めて目にする指の手は、小刻みに震えていました。真理はその震える手に自分の手を重ね、耳元で熱い吐息を漏らしながら囁きました。
「怖がらなくていいのよ。これは実験なんだから。ねえ、指くんのその『素直な感覚』、私に全部預けてくれない?」
「そう、コンドーム。避妊具ね。指くんくらいの歳の子でも、今は使うチャンスがあるんだってね」
真理は、ごく自然な、それでいてどこか教育的ですらある落ち着いたトーンでそう言いました。その言葉が、ホテルの静寂の中に溶け込んでいきます。
指は、手の中にある小さなパッケージを見つめたまま、固まっていました。保健体育の教科書で見たことはあっても、本物がこれほどまでに薄く、そして自分の人生に突如として現れるものだとは思ってもみませんでした。ましてや、それを今、満員電車で出会ったばかりの綺麗な女性と一緒に見つめているなんて。
「……僕、こういうの、触ったこともなくて」
指が消え入るような声で正直に打ち明けると、真理は「知ってる。だから選んだの」と言って、優しく彼の肩に頭を預けました。彼女の髪が指の頬に触れ、甘い香りがさらに強く脳を刺激します。
「今の若い子たちは、知識だけはネットでたくさん持ってるけど、本当の質感や、それが守ってくれるものの重さは知らないでしょう? 指くんには、その『最初』を正しい感触で知ってほしいの」
真理は指の手に自分の手を添え、パッケージの端にある切り込みを教えるように導きました。
「開けてみて。中には私たちの技術の結晶が詰まってるわ。指くんがこれをどう感じるか……それが、これからの製品作りには欠かせないデータになるのよ」
指は、彼女の指先の温もりを感じながら、慎重にアルミの包みを破りました。中から現れたのは、透明で、驚くほど滑らかで、瑞々しい光を放つ円状の物体でした。
「さあ、触ってみて。指先でいいから」
真理の視線が、指の手元に注がれます。彼女の期待に満ちた瞳に見守られながら、指は震える指先を、その未知の素材へと伸ばしていきました。
どう? 触った感触とか、匂いとか。率直な意見を聞かせて」
真理は至近距離で指の横顔を見つめ、反応を一つも漏らすまいと観察しています。指は、おそるおそる指先でその透明な膜に触れました。
「あ……。思っていたより、ずっと……柔らかいです。もっと、こう、ゴム風船みたいな硬いものを想像してました。それに、変なゴムの匂いもしない。ちょっと、お花みたいな香りがします」
「正解。植物由来の成分で匂いをカットして、肌の潤いに近いゼリーを配合しているの。いい感触でしょう?」
真理は満足そうに目を細めると、今度は少し茶目っ気のある表情で、箱の側面を指差しました。
「じゃあ、次は実践ね。そこに書いてある説明通りに……指くんに、それをつけてみてほしいの」
指の心臓が、今日一番の大きな音を立てました。説明書きには、図解とともに使い方が記されていますが、それを自分で行うという事実に、頭がクラクラします。
「僕が……自分で、ですか?」
「そう。男の子が一人で、焦っている時でもスムーズに扱えるかどうか。それを確かめるのも大事な実験なの。指くん、自分の『そこ』、準備できそう?」
真理はそう言うと、まるで応援するかのように、指の太ももにそっと手を置きました。彼女の手のひらから伝わる熱が、指の制服のズボンを突き抜けて、下半身へとダイレクトに集まっていきます。
部屋の照明がわずかに暗くなったような気がしました。指は震える手でパッケージを持ち直し、説明書の文字を目で追います。けれど、隣に座る真理の視線と、太ももに置かれた手の感覚が気になって、文字が全く頭に入ってきません。
「……できない? だったら、お姉さんが手伝ってあげようか?」
真理の吐息が耳元にかかり、指の理性が音を立てて崩れようとしていました。
真理の視線が向けられ、指の緊張はピークに達していました。しかし、期待とは裏腹に、彼の身体は正直な反応を示していました。
あまりに未知すぎるシチュエーション、そして「実験」という言葉の裏にある得体の知れない重圧。16歳の指にとって、ラブホテルのベッドの上で美人に凝視されるという状況は、刺激が強すぎて逆に生存本能が警鐘を鳴らしたのです。
「……あの、すみません。なんか、その……」
指の「そこ」は、驚きと恐怖、そして極度の緊張のせいで、情けないほど小さく縮こまっていました。自分でもどうにかしなければと焦れば焦るほど、身体は硬直し、意思とは裏腹に萎縮していくばかりです。
「ふふ、大丈夫よ。そんなに怖がらないで」
真理は指の情けない様子を見ても、呆れるどころか、さらに慈しむような優しい笑みを浮かべました。彼女は太ももに置いていた手をゆっくりと滑らせ、縮こまって震えている指の膝を、なだめるように撫でました。
「初めてなんだもん、当たり前じゃない。身体がびっくりしちゃってるのね。製品テストは、指くんがリラックスしてくれないと始まらないわ」
真理はそう言うと、ベッドの上に置いてあったリモコンを操作して、部屋の音楽をさらに静かなものへと変えました。そして、自らもパンプスを脱ぎ捨ててベッドの上に膝立ちになり、指の正面へと回り込みました。
「お姉さんが、怖くないってことを教えてあげる。実験の前に、まずは『準備運動』から始めようか?」
彼女の手が、指の制服のベルトにゆっくりと掛かりました。指は恐怖で身をすくませましたが、真理の指先から伝わる絶対的な安心感と、抗いがたい大人の包容力に、次第に力が抜けていくのを感じていました。
「……お風呂、入ろうか。私が綺麗に洗ってあげる」
真理はそう言って、指の耳たぶに唇が触れるか触れないかの距離で囁きました。その提案は、パニック寸前だった指の心を、不思議と穏やかな、けれどより深い陶酔の中へと誘うものでした。
彼女は指の手を優しく引き、バスルームへと導きました。自動で溜まったばかりの湯船からは、真っ白な湯気が立ち上っています。広々とした浴室に響く水の音と、照明に反射するタイルの輝きが、非日常感をさらに加速させました。
「失礼するわね」
真理は躊躇することなく、指のワイシャツのボタンを上から順に外していきました。指はただ、まな板の上の魚のように硬直していましたが、彼女の指先が肌に触れるたび、先ほどまでの「恐怖」が、じわじわと「熱」に変わっていくのを感じていました。
服を脱がされ、湯船の縁に腰掛けさせられた指の前に、真理もまた、その白い肌を露わにして現れました。彼女の美しい肢体は、湯気の中でまるで幻のように輝いて見えました。16歳の指には、視線をどこに置いていいのか分からず、ただ下を向くことしかできません。
「ほら、そんなに丸まってちゃ洗えないじゃない」
真理はたっぷりの泡を立てると、指の背中から優しく、包み込むように洗い始めました。
「大丈夫。さっきより、ずっと温かくなってきたわよ」
彼女の指先が、首筋から胸元、そしてお腹へと滑り降りてくるたび、指の身体は正直に反応し始めました。恐怖で縮こまっていたはずの「そこ」が、彼女の柔らかな掌に包まれ、丁寧に、大切に洗われるうちに、次第に確かな熱を帯びて、自分の存在を主張し始めたのです。
「ふふ、いい子。準備が整ってきたみたいね」
真理は満足げに微笑むと、指の首筋にそっと腕を回し、耳元で「ねえ、お風呂から上がったら、さっきの続き……ちゃんと私に教えてね?」と、甘い約束を交わしました
お風呂から上がり、清潔なタオルの香りと湯上がりの熱気に包まれた部屋に戻ると、指の心身は先ほどとは見違えるほど解放されていました。真理に丁寧に洗われた肌は、わずかな空気の動きにも敏感に反応し、火照った身体がシーツの冷たさを心地よく迎え入れます。
「さあ、再挑戦。今度は大丈夫そうね」
真理はバスローブを緩やかに羽織った姿で、再びあのアルミのパッケージを手に取りました。彼女がベッドの傍らに膝をつくと、柔らかな照明がそのシルエットを妖艶に縁取ります。彼女の視線が、今度は堂々とその存在を主張している指の「そこ」へと向けられました。
「指くん、自分でやってみる? それとも……私がつけた方が、より『正確なデータ』が取れるかしら」
真理はそう言って、濡れた瞳で指を上から見つめました。指はもはや、断る理由など持ち合わせていませんでした。
「……お願い、します。真理さんに、つけてほしいです」
震える声でそう頼むと、真理は「いいわよ」と優しく微笑み、パッケージを丁寧に開封しました。
真理は指の体の上に跨るようにして、真剣な、けれどどこか熱を帯びた瞳で手元を見つめました。彼女はチーフとしての顔に戻ったかのように、丁寧な口調で解説を始めます。
「いい? 装着する時に一番大事なのはここ。この先端のポコッとした部分を『精液だまり』って言うの。ここに空気が入っていると、使っている途中で破裂しちゃう原因になるんだよ」
彼女は、指の熱くなった部分の先端にある膜を、親指と人食い指でキュッとつまみました。
「こうして空気を抜いてから、根元に向かってゆっくり下ろしていくの。……でも、初めてだとどうしても滑りが悪くて、途中で引っかかっちゃうことがあるでしょう?」
真理はそう言うと、少しだけ唇を湿らせ、艶やかな舌先を覗かせました。
「そんな時はね、こうやって自分の『唾液』を少し溜めておくと、驚くほどスムーズになるんだよ。潤滑ゼリーの代わりにもなるし、何より、人肌の温もりが混ざって……一番、気持ちいいんだから」
彼女は顔を近づけ、精液だまりを固定したまま、自らの口内を潤わせました。そして、温かい吐息とともに、指の先端を優しく包み込むようにして湿り気を与えていきます。
「ん……。見て、こうすると膜がピタッと吸い付くように馴染むでしょう?」
真理のテクニックによって、コンドームはまるで指自身の皮膚の一部になったかのように、完璧なフィット感で装着されました。指は、そのあまりに詳しく、そして官能的な「レクチャー」に、もはや思考が追いつきません。
「空気を抜いて、潤いを与える。これが基本。指くん、覚えたかな? ……さあ、これで準備は完璧。次は、この『究極の薄さ』が、私の体の中でどれだけ本物に近い感覚を再現できるか……確かめさせてね」
真理は指の胸元に両手を突き、ゆっくりと腰を沈め始めました。16歳の少年にとって、それは教科書の図解とは決定的に違う、重みと、熱と、匂いを伴う「究極の実習」の始まりでした。
「見て、これが私たちの技術。つけていることを忘れるくらいの密着感を目指しているの。……いくわよ?」
彼女の指先が慎重に動き、薄い膜が指の熱を包み込むように滑り降りていきます。その瞬間、指は驚きに目を見開きました。ゴム特有の締め付け感や違和感がほとんどなく、むしろ真理の指先の温度がダイレクトに伝わってくるような、不思議な一体感があったのです。
「どう? 感触は……冷たくない? 痛くない?」
真理は最後まできれいに装着し終えると、そのまま手を離さず、膜越しに優しくそこを包み込みました。
「すごい……です。何もつけてないみたいに、真理さんの手の温度が分かります……」
指が夢見心地で感想を漏らすと、真理は満足そうに喉を鳴らして笑いました。
「合格ね。指くんのその反応、最高のデータだわ。……でも、実験はこれで終わりじゃないの。この素材が、実際の『摩擦』や『湿度』にどれだけ耐えられるか。それを確かめるのが、チーフとしての私の最後の仕事」
彼女はバスローブの帯をゆっくりと解き、指の体の上に覆いかぶさってきました。
「指くん、学校では習わない『応用編』……受ける覚悟はできてる?」
16歳の指にとって、それは教育という名の、甘美な奈落への招待状でした。
真理がゆっくりと腰を沈めていくと、指は人生で一度も経験したことのない、圧倒的な「密度」に包まれました。コンドームの存在を忘れてしまうほどの密着感。膜を通して伝わってくる彼女の体内の熱さは、指の想像を遥かに超えていました。
「……っ、あ……すごい、です……」
指はベッドのシーツを強く握りしめ、仰け反るように声を漏らしました。真理は彼の胸に手を置き、逃がさないように優しく、けれど確実に体重を預けてきます。彼女の髪が指の鎖骨あたりで揺れ、甘い香りと共に、大人の女性特有の柔らかな吐息が首筋を撫でました。
「どう? 指くん……私のなかの温度、わかる?」
真理がゆっくりと腰を揺らし始めると、指の感覚は瞬く間に限界へと引き上げられていきました。16歳の瑞々しく、あまりに敏感な神経は、彼女が与えてくれる「実験」という名のアプローチをすべてまともに受け止めてしまいます。
「あ、これ……だめ、……真理さん、ぼく、もう……っ!」
「いいよ、指くん。そのまま、全部私に教えて……。それが一番のデータなんだから」
真理は、指の困惑したような、けれど恍惚とした表情を愛おしそうに見つめながら、その動きをさらに情熱的なものへと変えていきました。
初心者である指にとって、その刺激はあまりに鋭く、そして優しすぎました。腰の奥から突き上げてくるような衝動を抑える術を、彼はまだ知りません。頭の中が真っ白な光で満たされ、真理の「次はこうして」というレクチャーさえ、もはや遠い世界の音のように聞こえました。
「あ……っ、すみませ、ん……ッ!!」
指の身体が激しく震え、彼は真理の肩を強く抱き寄せました。精液だまりがその役割を果たすのを、指は熱い脈動としてダイレクトに感じていました。
一瞬、部屋の時間が止まったかのような静寂が訪れました。指の激しい呼吸音だけが室内に響き、彼は自分のしでかしたことに呆然としながら、重なり合った真理の肩に顔を埋めました。
「ふふ、お疲れさま。……最高のデータだったわよ、指くん」
真理は優しく指の背中を撫で、満足そうに微笑みました。16歳の童貞という扉を、彼女は最も刺激的で、かつ「安全」な方法で開いて見せたのです。
真理さんは、まるで宝物を扱うような手つきで、指の「そこ」から白く濁ったものが溜まったコンドームを丁寧に取り外しました。彼女はそれをまじまじと見つめた後、ふと視線を指の股間へと戻し、驚いたように目を丸くしました。
「あれ……? 指くん、本当に今、出したのよね?」
彼女は首をかしげ、いたずらっぽく、けれど感心したような声を上げました。
「全然、ちぢこまないね。普通は出し切ったら、すぐにシュンって小さくなっちゃうものなんだけど……まだこんなに元気だなんて」
真理さんはバスローブの裾から覗く指先で、まだ熱を持ったまま硬さを保っている指のそこを、ツンとつつきました。
「16歳の若さって、本当にすごいのね。私たちの新製品、もしかして指くんみたいな『タフな子』には、もっと耐久性のテストが必要だったかしら」
指は顔から火が出るほど真っ赤になり、慌てて手で隠そうとしましたが、真理さんはその手を優しく制しました。彼女の瞳には、先ほどまでの慈愛に加えて、もっと深い好奇心と、開発者としての——あるいは一人の女性としての——尽きることのない「探究心」が灯っていました。
「ねえ、指くん。せっかくまだ頑張ってくれてるんだから、もう一回だけ、別の試作品も試してみない? 今度はさっきよりも、もっともっと『刺激』を重視したタイプ。……指くんのその若さが、どこまで耐えられるか、お姉さんに教えてほしいな」
真理さんはそう言うと、使用済みのものをサイドテーブルに置き、今度は黒いパッケージの新しいサンプルを取り出しました。指は自分の身体のコントロールが効かないことに戸惑いながらも、真理さんの熱い視線と、彼女が提案する「第2ラウンド」への期待に、抗うことなどできませんでした。
真理さんは、手に取った黒いパッケージを一度ベッドに置くと、意味深な笑みを浮かべて指の顔をじっと見つめました。
「ねえ、指くん。製品の開発担当としては失格かもしれないけど……一つ、特別な『比較実験』をしてみる?」
彼女は指の胸元に指先を這わせ、そのままゆっくりと、まだ熱を帯びている彼の中心へと滑らせていきました。
「さっきのは、あくまでゴム越し。でも、本当の『究極』を知らないと、私たちの製品がどこまで本物に近づけたか、正確には判断できないでしょう? だから……次のを試す前に、『ゴムナシ』も経験してみましょうか」
指はその言葉の意味を理解した瞬間、息が止まりそうになりました。避妊具メーカーのチーフである彼女が、自らその掟を破るような提案をしてくる。その背徳感と、彼女の生身の温もりに直接触れられるという期待が、指の理性を一瞬で焼き切りました。
「でも、真理さん……それは、危ないんじゃ……」
「大丈夫、ちゃんと準備はしてるから。それにね、指くんのその純粋な熱を、一度だけでいいから、この肌で直接感じてみたくなっちゃったの」
真理さんはそう言うと、自らのバスローブを完全に肌から滑り落としました。湯上がりの香りと、彼女自身の匂いが混じり合い、密室の空気はいっそう濃密なものへと変わります。
彼女は指の震える手を自分の腰に導き、ゆっくりと、けれど一切の迷いなく重なり合いました。先ほどとは明らかに違う、濡れた粘膜が直接触れ合う熱さと、吸い付くような肌の質感。
「……あ、っ」
指の口から、先ほどよりもずっと掠れた、切実な声が漏れました。ゴムという境界線が消えた瞬間、二人の境界線さえも溶けていくような、禁断の実験が始まろうとしていました。
「これが『本物』よ、指くん。しっかり覚えておいて……」
彼女は耳元で熱く囁き、少年のすべてを受け入れるように、深く、ゆっくりと腰を下ろしました。
ゴムという境界線が取り払われた瞬間、指を襲ったのは、暴力的なまでの「生」の質感でした。
先ほどまでの最新素材も十分に驚異的でしたが、生身の粘膜が直接絡み合う熱さは、それとは比較にならないほど鮮烈でした。彼女の体内の拍動、締め付け、そして瑞々しい滑らかさ。指は自分のすべてが彼女に溶け出していくような錯覚に陥り、思わず声を上げて彼女の白い肩に縋り付きました。
「あ……っ、全然……ちが、う……」
「そう……違うでしょう? 私も、指くんの熱が……さっきよりずっと、ダイレクトに伝わってくる……」
真理さんの反応も、明らかに先ほどとは違っていました。冷静に「データ」を収集しようとしていたチーフの顔はどこへやら、彼女の瞳は潤み、頬は上気し、その呼吸は不規則に乱れています。指を導くはずの彼女の腰使いも、次第に本能的な激しさを帯びていきました。
彼女にとっても、これはもはや単なる「実験」ではありませんでした。16歳の少年の純粋で荒削りな熱量が、経験豊富な彼女の心を内側から激しく揺さぶっていたのです。
「指くん……すごい、熱いよ……。私、もう……おかしくなりそう……」
真理さんは指の首筋に顔を埋め、言葉にならない熱い吐息を漏らしました。彼女の体が小刻みに震え、指を包み込む力が一段と強まります。生身だからこそ伝わる彼女の「感じ方」の変化に、指の興奮も限界を軽々と突破しました。
16歳の初心者が抱くにはあまりに濃厚すぎる快楽の波。二人は互いの境界線を見失い、汗と熱気が混ざり合う密室の中で、本能のままに求め合いました。
ようやく嵐のような時間が過ぎ去り、静寂が戻った部屋で、二人は重なり合ったまま荒い息を整えていました。
「……これじゃ、どっちが実験されてるのか、わかんないね」
真理さんは指の胸元に顔を乗せたまま、少し困ったように、けれど幸せそうにクスクスと笑いました。指は言葉も出ないほど疲れ果てていましたが、その表情には、朝、満員電車に揺られていた時とは違う、一つの「壁」を越えた男の顔が混じっていました。
ゴムという壁を完全に取り払った、剥き出しの快楽は、指にとってあまりにも強烈でした。
二回目となる絶頂は、一回目とは比べものにならないほどの密度で訪れました。真理さんの身体の奥深く、彼女の熱い鼓動を直接感じながら、指は自らのすべてを彼女の中に解き放ちました。頭の中が真っ白になり、指先までが痺れるような、暴力的なまでの解放感。
「あ……あぁっ……!」
指が彼女の背中に爪を立て、激しく身を震わせる間、真理さんもまた、少年の迸るような熱量を全身で受け止め、艶やかな声を漏らして果てていました。
やがて荒い呼吸が静まると、真理さんは顔を上げ、汗で張り付いた髪をかき上げながら、満足そうに指を見つめました。彼女は慣れた仕草で指の体から降りると、今度は跪くような姿勢で、彼を優しく見上げました。
「お疲れさま。……でも、本当にすごいのね、指くん」
真理さんは、自らの口内を潤わせると、彼の中に残った「熱」を慈しむように、丁寧に口で後始末を始めました。16歳の指にとって、それは映画やネットの知識でしか知らなかった、大人の女性による究極の献身でした。
温かく、柔らかな舌先が、敏感な肌を丁寧になぞるたび、指の身体には再び新たな電流が走り抜けます。すべてを出し切ったはずなのに、彼女の愛撫がもたらす刺激は、休むことを許しませんでした。
「ふふ、見て。あんなに出したのに……またこんなにビンビンになってる」
真理さんが口を離して微笑むと、そこには、彼女の丹念な「掃除」によって、先ほどよりもさらに猛り狂い、赤黒く脈打つ指の姿がありました。16歳という若さが持つ底知れない回復力と、真理さんという女性への抑えきれない渇望が、彼を再び戦いへと駆り立てていたのです。
「指くん、これじゃあお姉さん、いつまで経っても帰れないじゃない……」
真理さんは困ったような顔をしながらも、その瞳には征服欲と好奇心が混ざり合った、妖しい光が宿っていました。
「……もう一回、いい? 今度はね、さっきの『ゴムナシ』の感覚を思い出しながら、もう一度だけ最新作を試してほしいの。本物と見分けがつかないか、指くんのその『元気な子』で、徹底的にテストさせて?」
彼女は再び、あの黒いパッケージを手に取りました。指はもはや、自分の中に眠っていた野生が完全に目覚めたのを感じていました。
真理さんが次に手に取ったのは、重厚感のある黒いパッケージでした。彼女がそれを丁寧に開封して取り出したのは、これまでの透明なものとは一線を画す、挑戦的なデザインの試作品でした。
「これが今回の最終試験。表面に、特殊な高弾性ラテックスで極小の『突起』を無数に配置しているの。指くんには、これが生身と比べてどう違うか……あるいは、生身を超えられるか、教えてほしいな」
真理さんは、まだ猛り狂ったままの指のそこへ、その黒い膜を慎重に被せていきました。指先で空気を抜き、根元まで下ろしていく際、その無数の粒状の突起が指の敏感な肌を刺激します。
「ひっ……あ、これ、すごい……」
「感触が変わったでしょう? 指くんが動くたびに、この突起が私の内側を、そして指くん自身の肌を複雑に刺激するように設計されているの」
真理さんは再び腰を浮かせ、指を迎え入れる準備を整えました。そして、ゆっくりと彼を内側へと誘い込んだ瞬間、指は思わず絶叫しそうになりました。先ほどの生身の感覚とはまた別の、ザラリとした、それでいて計算し尽くされた官能的な摩擦が、彼の神経を一気に逆なでしました。
「あ、ああっ……真理さん、これ、……生身より、ずっと、強く感じます……っ!」
「そう……それがこの製品の狙い。脳を直接揺さぶるような刺激……。指くん、その勢いで、私のこともっと壊して……!」
真理さんの声も、これまで以上に乱れていました。最新技術が生み出した「人工的な快感」が、16歳の剥き出しの本能と、大人の女性の欲望を激しくかき混ぜていきます。指はもはや、自分が高校生であることも、ここがラブホテルであることも忘れ、ただ目の前の美しい女性を征服することに没頭していました。
三回目というのに、その勢いは衰えるどころか、最新作のサポートを受けてさらに加速していきます。激しい水音と、二人の重なる吐息が部屋中に響き渡り、やがて指は本日最大の発汗と共に、この最終試験の答えを、真理さんの奥深くへと叩き込みました。
すべての「実験」が終わり、夕暮れの光が窓から差し込む頃、二人は静かに並んで横たわっていました。
「指くん……最高のテスターだったわ。ありがとう」
「本当にお疲れさま。お礼に、美味しいものでもご馳走するわね」
真理さんはそう言って、テキパキと身支度を整えました。ホテルを出た二人は、近くにある少し落ち着いた雰囲気のイタリアンレストランへと向かいました。16歳の指にとって、白いテーブルクロスが敷かれたお店は緊張の連続でしたが、真理さんはまるで年の離れた姉のように優しくメニューを選んでくれました。
最高級のパスタを口にしながら、指はやっと現実感が戻ってくるのを感じていました。数時間前まで、自分はこの人とあんなに激しく……。そう思うだけで顔が赤くなりますが、向かい側に座る真理さんは、すっかり「仕事のできる綺麗なお姉さん」の顔に戻っていました。
食事が終わり、再び車の助手席に揺られながら、真理さんは夜の街を滑らかに走らせていきます。車内には、朝、駅で感じたあのサンダルウッドの香りが再び満ちていました。
「ねえ、指くん。……今日の感想、改めて聞かせてくれる?」
真理さんは前を見つめたまま、少しだけ声を低くして問いかけました。
「最新作の黒いパッケージのもの。生身を経験した直後だったけど、どうだった? 正直な意見が、明日の会議の資料になるんだから」
指は、膝の上で手をぎゅっと握りしめました。あの時の、脳が痺れるような感覚を必死に言葉にしようと試みます。
「……あんなの、反則だと思います。生身の時とは違う、なんて言うか、自分の感覚が何倍にも膨らんで、自分じゃないみたいに動かされる感じでした。……正直、生身よりも『怖い』くらい、気持ちよかったです」
その言葉を聞いた瞬間、真理さんは信号待ちで車を止め、指の方を向いて満足げに微笑みました。
「……そっか。最高の褒め言葉ね。開発チーフとして、それ以上の喜びはないわ」
真理さんはバッグから手帳を取り出し、サラサラと何かを書き込むと、そこから一枚のメモを破って指に渡しました。そこには彼女の個人の電話番号が記されていました。
「これは、今日の『協力費』の振り込み先の連絡用……っていうのは建前。指くん、まだ『改善点』はたくさんあると思うの。また私の実験に、付き合ってくれる?」
彼女はそう言うと、指の頬を指先で優しくなぞり、再び車を走らせ始めました。16歳の指の日常は、もう二度と元には戻らない。確かな余熱を体に宿したまま、彼は夜の街へと消えていく彼女の車のテールランプを、いつまでも眺めていました。
あの日、ホテルの部屋で刻み込まれた強烈な記憶は、16歳の指(ゆび)の日常を完全に乗っ取ってしまいました。
放課後、誰もいない自分の部屋に帰り着くと、真っ先に思い浮かぶのは教科書の内容ではなく、真理さんの甘い香水と、あの密室で繰り広げられた「実験」の感触です。
「……っ、真理さん……」
彼はあの日から、毎日「オナニー(自慰)」をせずにはいられませんでした。
自分の指先が肌に触れるたび、彼女の柔らかな掌や、あの驚くほど薄いラテックスの質感を思い出します。目を閉じれば、最新作の黒い突起がもたらした脳を焼くような刺激が、鮮明なフラッシュバックとなって襲いかかってきます。
かつては純朴な少年だった彼の右手は、今や真理さんから教わった「テクニック」を無意識に再現しようと動きます。空気を抜くように先端を絞り、彼女の吐息を思い出しながらゆっくりと、けれど激しく。
しかし、自分の手でどれだけ慰めても、あの「生身」の熱さや、最新技術の結晶であるコンドームがもたらした異次元の快感には、到底届きません。
(もっと……あの時の、本物の刺激が欲しい……)
果てるたびに訪れる賢者タイムの中で、彼はポケットに忍ばせた彼女の電話番号が書かれたメモを何度も見つめます。
一方、真理さんの方も、指からの連絡を待っているのかもしれません。彼女の会社では「16歳のテスターから得られた驚異的なデータ」が、新たな製品開発の鍵となっているはずですから。
指の「オナニー」の回数が増えるたび、彼の中の「男」としての渇望は深まり、再び彼女のラボ……あの秘密の場所へと招かれる日を、今か今かと待ちわびるようになっていきました。
あの日から毎晩、部屋で独り、彼女の残像を追いかけていた指くんにとって、その日はあまりにも刺激的な放課後となりました。
終礼が終わり、部活や下校に浮き足立つ生徒たちの間で、校門付近がざわついています。そこには、およそ学校という場には似つかわしくない、洗練されたオーラを放つ真理さんの姿がありました。
磨き上げられた輸入車の横に立ち、タイトなスーツを着こなして校舎を見上げる彼女の姿は、まるで映画のワンシーンのよう。通り過ぎる男子生徒たちは誰もが振り返り、女子生徒たちは「誰の保護者?」「モデルさん?」と噂しています。
指くんが心臓をバクバクさせながら歩み寄ると、真理さんは彼を見つけ、パッと華やかな笑みを浮かべました。
「お疲れさま、指くん。……ちょっと顔色が赤いみたいだけど、勉強のしすぎかしら?」
彼女はそう言いながら、周囲の目を気にする指くんの距離を詰め、耳元で小さく囁きました。
「あの日から、毎日『復習』してくれてたんでしょう? データが欲しいって言ったけど、あなたの体がどれだけ私のことを覚えてるか……直接確かめに来ちゃった」
指くんはパニック寸前です。クラスメイトたちが遠巻きに見ている中、彼女は慣れた手つきで助手席のドアを開けました。
「さあ、乗って。今日は新しい『試作サンプル』が届いているの。今度は、学校帰りという特別なシチュエーションでの耐久テストをお願いしたいんだけど……いいかしら?」
彼女の車に乗り込んだ瞬間、あの日の甘い香りに包まれ、指くんの体は反射的に熱を帯びました。学校という日常のすぐ隣で、再び「禁断の実験」が始まろうとしています。
真理さんの車は、夕暮れに染まる都会の喧騒を抜け、臨海地区にある近代的なオフィスビルへと滑り込みました。
「ここは私の会社の技術開発センター。もう定時を過ぎているから、試作室には誰もいないわ」
彼女はセキュリティカードをかざし、指くんを静まり返った社内へと導きました。エレベーターを降りると、そこには無機質な銀色の扉。真理さんが鍵を開けると、精密機械と清潔な白で統一された、広々とした**「試作室」**が広がっていました。
窓の外には、オレンジ色から群青色へと変わる空と、街の灯りがキラキラと輝き始めています。
「ここなら、どんな声を上げても、誰にも聞こえないわよ」
真理さんはそう言って、中央にある大きな実験用のリクライニングチェアを指差しました。彼女はジャケットを脱ぎ、ブラウスのボタンを一つ外すと、机の上に並んだ「未発表の試作群」を指でなぞりました。
「あの日、指くんが『生身の方が気持ちいい』って言った言葉……あれが私を突き動かしたの。素材の分子構造を根本から変えて、体温を100%透過させる**『完全体温同期素材』**。これのテスターは、指くんにしか務まらないわ」
彼女は冷蔵庫から、特殊な溶液に浸された、まだ冷たく、けれど驚くほど柔らかそうな「それ」を取り出しました。
「さあ、実験を始めましょう。学校帰りの指くんの体が、この冷たい素材をどこまで一瞬で熱くできるか……。まずは、私があなたの制服を脱がせてあげるわね」
彼女の手が、指くんの学ランのボタンに掛かりました。夕闇が迫る無人のラボで、最新科学と剥き出しの本能が再び混ざり合おうとしています。
無機質な試作室に、真理さんの白衣がバサリと翻る音が響きました。彼女は眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、冷蔵庫から取り出したばかりの「それ」を指くんに示しました。
「さあ、実験を始めましょうか。これが分子構造から作り直した、私たちの最高傑作……『完全体温同期素材』よ」
彼女が指くんの熱い中心にその極薄の膜を滑らせた瞬間、指くんは自分の感覚を疑い、思わずのけ反りました。装着した直後は確かに冷たかったはずなのに、真理さんが彼を自身の内側へと迎え入れた刹那、境界線が文字通り「消滅」したのです。
「な、なんですかこれ……! 膜があるはずなのに、真理さんの体温が、湿り気が……さっきのゴムナシの時より、もっとダイレクトに……っ!」
「ふふ、驚いた? それが体温を100%透過させる技術の力よ。さあ、指くん、次はデータの採取よ。私の腰の動きに合わせて、特定のタイミングで力を入れて。どの角度で摩擦係数が最大になるか、私にその体で教えて……!」
真理さんは実験用のリクライニングチェアに指くんを深く沈め、白衣の裾を乱しながら、計算し尽くされた動きで彼を翻弄し始めました。彼女は手元のタブレットで数値を追う「チーフ」の顔をしながらも、その声は次第に情熱的な喘ぎへと変わっていきます。指くんは、科学的な検証という名目のもと、逃げ場のない快楽の限界値まで、執拗に、マニアックに攻め立てられました。
「あ、ああっ……真理さん、もう、数値なんて……わからない、です……っ!」
「いいえ、もっとよ。もっと激しく。あなたの鼓動が素材を通して、私の奥を直接叩いているわ……!」
真理さんは指くんの手を引き、大きな窓際へと彼を連れ出しました。眼下には都会の宝石箱のような夜景が広がっていますが、誰もいない高層階のこの部屋では、外の光さえも二人を煽る照明に過ぎません。
「見て、指くん。あの街の灯りの数だけ、愛し合う恋人たちがいる。でも、今この世界で一番熱いのは、この最新技術で繋がっている私たち……。さあ、すべての『データ』を、素材が焼き切れるくらいの勢いで、私のなかに叩き込んで……!!」
窓ガラスが二人の荒い吐息で白く曇り、夜景がぼやけていきます。指くんは真理さんの腰を強く掴み、己のなかに溜まったすべてを、最新素材の性能を証明するかのように一気に解き放ちました。
「真理さぁぁんっ!!」
激しい脈動が、素材を通じて真理さんの最深部へと伝わり、二人は夜の闇に溶け合うような、かつてない絶頂の淵へと沈んでいきました。
静寂が戻った試作室で、真理さんは乱れた白衣を整え、汗ばんだ指くんの頬を愛おしそうになぞりました。
「……完璧なデータだわ。これで世界は変わる。でもね、指くん。この素材にはたった一つ、計算外の欠点があったみたい」
彼女は指くんの耳元に唇を寄せ、熱い吐息とともに囁きました。
「あまりに気持ちよすぎて、私が指くんなしではいられなくなっちゃうこと……責任、取ってくれるかしら?」
完